排便時に“血”が…「痔」「血便」どっち? 見分けるコツを消化器病専門医に聞いてみた

痔による肛門の出血と血便は何が違うのでしょうか。排便時に痔と血便を見分けるコツや受診の目安について、消化器病専門医に聞きました。

「痔」「血便」は何が違う?

【閲覧注意】生々しい… これが「大腸ポリープ」「早期大腸がん」の症例画像です

 切れ痔やいぼ痔にかかっている人の中には、排便時に肛門付近から出血し、便に血が付くことがあります。一方、消化器系の疾患を抱えている場合は便に血が混じる、いわゆる「血便」が出ることがあるといわれており、排便時に血が付いた便が出たときに痔による出血が原因なのか、病気による血便が原因なのか、分からないことがあります。

 そもそも、痔が原因で血が付いた便と血便は何が違うのでしょうか。排便時に痔と血便を見分けるコツや受診の目安はあるのでしょうか。「ふれあいの丘内科内視鏡健診クリニック」(横浜市都筑区)院長で、認定内科医・消化器病専門医・消化器内視鏡専門医の粟田裕治さんに聞きました。

「暗赤色」の便が出た場合は血便の可能性

Q.排便時に痔による出血と血便を見分けることは可能なのでしょうか。見分けるポイントについて、教えてください。

粟田さん「排便時に痔が原因で出血した場合、便自体は茶色で、後から真っ赤な血液(鮮血)がポタポタと垂れたり、トイレットペーパーで肛門を拭いたときに真っ赤な血液が付着したりすることが多いです。

一方、血便のように痔以外の病気が原因で出血した場合、便自体に血が混じっているケースが多いほか、便の色味も真っ赤ではなく、暗赤色や赤黒いことが多いです。

つまり、痔と血便を見分けるポイントとしては、『便自体が茶色なのか、便に血が混じっているのか』『血の色が鮮やかな赤なのか、暗い赤なのか』の2点が挙げられます」

Q.排便時に肛門から血が出たり、血便が出たりするのはなぜなのでしょうか。

粟田さん「切れ痔やいぼ痔による肛門周囲の粘膜からの出血が原因であるケースが多いと思われます。大腸がんが大きくなってくると、便が腫瘍に接触することで出血することがあります。

大腸の壁が薄くなり、外側に小さく出っ張った部分の『憩室』から出血することもあります。大腸憩室から出血すると出血量が多くなり、入院治療を要することがあるため、注意が必要です。

出血時に腹痛や下痢などの症状を伴う場合、感染性腸炎のほか、抗生物質などによる薬剤性腸炎、虚血性腸炎といった炎症により、大腸の粘膜が腫れることで出血するケースが考えられます。

腹痛や下痢、血便の症状を数カ月おきに繰り返したり、症状が長期間持続したりする場合は潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患の可能性が考えられるため、注意が必要です。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍、食道静脈瘤破裂など、食道や胃、十二指腸といった上部消化管からの出血が原因で起きる病気の場合、通常は胃酸によって血液が真っ黒になって黒色便(タール便)として肛門から出てきますが、大量の出血を起こした際は血便が見られる場合もあります。

小腸の潰瘍のほか、がんなどの腫瘍が原因で出血するケースはまれですが、黒色便や暗赤色便が出る原因となります」

Q.切れ痔、いぼ痔の主な原因について、教えてください。

粟田さん「主に便秘が原因で排便の際に強くいきんだり、長時間座りっ放しにしたりすることなどによって、肛門に負担がかかり、痔が発生するといわれています。

例えば、便秘がちの人が、硬い便を出したときに肛門を傷つけてしまい、切れ痔を引き起こしたり、排便時に強く長くいきむことで肛門周囲の毛細血管がうっ血を起こしていぼ痔ができたりすることがあるため、注意が必要です。

また、ゴルフのときにいきんでしまった場合のほか、刺激物やアルコールの過剰摂取などによる下痢、冷えなどで肛門に負担をかけた場合も、いぼ痔や切れ痔の原因となるといわれています」

Q.排便時に肛門から出血したり、血便のようなものが出たりした場合、すぐに受診した方がよいのでしょうか。受診の目安について、教えてください。

粟田さん「先述のように、便自体が茶色で、真っ赤な血がトイレットペーパーに付着するような出血の場合、切れ痔やいぼ痔による出血の可能性が高いため、少し様子を見てもよいと思います。

症状が1~2日で治まらず、長期間続く場合のほか、1日に何度も出血するケースのように、出血の頻度が高くなった場合は、医療機関で大腸内視鏡(大腸カメラ)検査を受けた方が良いです。また、便自体に血が混ざっている場合や暗赤色の出血の場合は大腸がんの可能性があるため、すぐに受診しましょう。

例外的に、肛門から近い直腸にがんができたときは、いぼ痔(痔核)のように鮮血の出血を起こすことがあるため、真っ赤な血が出た場合でも注意が必要です。『痔からの出血だろうから平気だろう』と様子を見ていたら、実は直腸がんだったというケースは少なくありません。このほか、出血量が多い場合のほか、腹痛や下痢を伴う出血の場合もすぐに医療機関を受診した方がよいでしょう。

40歳を超えると、大腸ポリープや大腸がんを発症するケースが増えます。40歳以上の人で肛門付近からの出血や血便の症状が一度でも出た場合は、『痔が原因の出血だろう』と軽視せず、大腸内視鏡検査を受けましょう。

また、40歳未満の人でも大腸がんになるケースがまれにあります。40歳未満の人で肛門からの出血や血便の症状を繰り返す場合も、大腸内視鏡検査を受けるのをお勧めします」

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