住宅街にひっそりと佇む一軒の骨董品店があった。そこには人に捨てられた“物”たちが集まってくる。ある日、遠路はるばる祖母にもらった“土鈴(どれい)”を売りに若い母親がやってきた。聞けば、深夜になると勝手に“カランカラン”と音が鳴るのだという。気味が悪く、息子も怖がって寝てくれず困り果て、人づてに「“こういうの”を買い取ってくれる店がある」と聞き、訪ねてきたらしい。
いわく付きの土鈴を買い取った主人公はその夜さっそく、土鈴が「からん」と鳴るのを聞いた。そして深夜になるにつれ、音は激しさを増していき…!!土鈴は“なぜ”鳴るのか…?土鈴の音色は本来、厄除けや魔除けのお守り・縁起物とされてきたはずだ。その土鈴が勝手に鳴る理由とは…?ラストで明かされるその理由に、ゾッとしてしまう。
本作を描いたのは、赤風よしお(@gurast)さん。社会人として働きながら、趣味として一次創作の長編ファンタジー漫画をSNSにて連載中だ。普段はファンタジー作品を描くことが多い赤風さんだが、本作のようなホラー・怪異系の作品を描くことはよくあるのだろうか?尋ねると、「初めて描いたホラー作品です」とのこと。「もともとホラー作品は好きで人の作品を拝見することはありましたが自身で作ったことはなく、本作が初めてのホラー作品となります」と教えてくれた。初のホラー作品と思えない完成度に驚きつつ、さらに詳しく話を聞いてみた。
――ネタバレにならない形で、作品の見どころについて教えてください。
この漫画は、自分が思い描く恐怖を表現できるかを試みた作品です。自分には「恐怖とは理解できないこと」という自論があり、「勝手に定義付けをして納得する人間」と「ただあるようにあるだけの物」との齟齬や理不尽から生まれるものもひとつの恐怖なのでは?と考え、骨董屋の主人「氷室」の視点からストーリーを作りました。もうひとりの登場人物である「高原」は私のキャラクターではないのですが、“物は儚く尊いもの”という定義付けをしている主人公とは別に、物の本質を語る存在が重要だと思い、了承を得て知人からお借りした経緯があります。
――初のホラー漫画の手応えはいかがですか?
ホラー作品ですが、“わかりやすい怖いもの”はなるべく出さず、かつよい話でも悪い話でもなく、描きたいものが描けた作品だと現状は考えています。
――本作のシリーズ化の予定はありますか?
登場人物や舞台の設定上、続編は作りやすい形式にしており、シリーズ化は可能です。また「氷室」以外にも何人かキャラクターがいるので、別の人物を主人公にもできると思います。この先描きたいと思えるネタや、やりたいことができたら、またこっそりと何か描いているかと思います。
――今後の新作のご予定などありましたら教えてください。
新作については未定です。気まぐれに長編を描き始めたり、今回の「一方通行」のように、普段とは全く異なるジャンルの短編作品を描いているかもしれません。もしどこかで目に留まり、琴線に触れる部分があったら読んでみてください。
ひっそりと佇む「白滝堂」には、人に捨てられたさまざまな“物”が集まってくる。次はどんないわくつきの“物”が持ち込まれてくるのか、どんなストーリーがそこにあるのか、続編やシリーズ化に期待しつつ、新作を待ち望むとしよう。
取材協力:赤風よしお(@gurast)
配信: Walkerplus
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