高額の「治療」に悲鳴
当時は派遣で働き、実家とは絶縁。特定のパートナーもいなく、誰にも頼れない状況だった。仕事をやめれば、すぐに生活が立ち行かなくなるが、化学物質過敏症の原因物質を取り扱う職場で働きつづけることはむずかしい。
そこで、休職(ひいては失業保険受給)のために診断書をもらいにきたのだ。とりあえず1カ月分のサプリを買ったとしても、継続して飲むことは金銭的に無理だった。
ちなみにコエンザイムQ10 とは、2001年に食品規制の緩和によって、健康食品への配合が可能になった補酵素のこと。うっ血性心不全の症状改善に使われていた医薬品のコエンザイムQ10(ユビデカレノン)もあるのだが、「化学物質過敏症には処方できないと聞いた」とナオさんは説明する。
取り付く島もない医師を前に
「試したいのはやまやまだけど、いまの自分に高額なサプリは買えない……そう説明しました。すると突然、大声で怒りはじめるんです。何か失礼な言い方をしてしまったかと思ったのですが、身に覚えがまったくないので、あっけにとられましたね」
医師は大声で、こう主張する。
「僕はねえ! そんな不真面目な患者には! 診断書は書かない!! サプリをちゃんと飲んで通ってくる人にしか、治療法は教えない!!!」
いや、だから、怒らんでも……(単にハイテンションな病院なのかという可能性も頭をよぎったが)。故・大島渚監督を思い出してしまう病院である。
いくら必要でも、ない袖は振れない。努力で改善できることを放棄しているならともかく、そこを怒られるのは理不尽だ。
「ほぼ診察室から追い出される形で、その日の診断は終わってしまいました。目的の診断書はもらえずで、受付で看護師にどうすれば……と涙ながらに相談しました、回答は『どうなんでしょうね……?』と、そっけないものでしたけど」
休職に必要な診断書は、結局2回目の診察で無事もらうことができたという。
「そのときは、指定された店で空気清浄機を買おうと思う、と話したからなんですかね? それとも初回はたまたま、虫の居所が悪かったからなのか。私には、理由がわかりようもありません。
診断書をもらい目的は果たせたので、その病院は二度と行きませんでした。いまはもう、その医師は在籍していないようです」
この空気清浄機でも、トラブルが発生した。指定の店で販売されている指定の空気清浄機は、お値段10万円。初診時は「高い」と感じたが、2回目の診察を待つ数週間、体調不良にのたうち回り、不安と体のつらさから「これで治るのなら安いものだ!!」と購入に踏み切ったのだ。
配信: 女子SPA!