空気清浄機より衣食住
しかし店から帰宅した瞬間、我に返った。
「……いやいやいや、高すぎる! 今月の食費と家賃どうするの!」
“10万円の空気清浄機”が高いかどうかは機種にもよるが、家庭用としては高価な部類だろうし、そもそもナオさんの懐には厳しかった。少なくとも、8畳のワンルームだというナオさんの住まいであれば、もう少しリーズナブルなものでもよさそうだ。
余談であるが、小さなメーカーが製造しているスペシャル機能を謳う空気清浄機のなかには、「根拠なし」として消費者庁から景品表示法違反(優良誤認)で措置命令が出るケースもある。金銭的にも機能の効果的にも、時間をかけて、吟味したいところである。
「注文した店からメーカーに注文するという話でしたから、商品の発送もまだ行われていないはず。すぐに店へ、キャンセルの電話をかけました。すると『無理です』の、一点張り。病院の紹介なのに……いや、紹介だから強気なのか? 30分近く言い争った挙句、クーリングオフ制度にふれると、しぶしぶ返金に応じてくれました。サプリといい、空気清浄機といい、いまだにあれは何だったんだろう……とたびたび思い出しますね」
医療に背を向け、体質改善
巷ではそうした健康家電を売る医師はめずらしくなく、それ自体が違法というわけではないが、「威圧的に買わせようとする」というやり口に問題があるのは明白だ。
そのような出来事を経てナオさんは、医療全般を否定するまでには至らなかったものの、化学物質過敏症に関しては、「自分でできる範囲で体質改善法」を目指すことにした。
一般に、代替療法や民間療法を選ぶ人に「病院で嫌な目にあった経験がある」とはよくある話だが、ナオさんも同じ道筋をたどったのだった。
今回の体験談は治療内容や診察態度の是非を問うものではなく、民間療法に流れていく典型的なケースとして、ご紹介した。その後ナオさんがどのような民間療法にハマったかは、また次の機会に。
<取材・文/山田ノジル>
【山田ノジル】
自然派、○○ヒーリング、マルチ商法、フェムケア、妊活、〇〇育児。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のない謎物件をウォッチング中。長年女性向けの美容健康情報を取材し、そこへ潜む「トンデモ」の存在を実感。愛とツッコミ精神を交え、斬り込んでいる。2018年、当連載をベースにした著書『呪われ女子に、なっていませんか?』(KKベストセラーズ)を発売。twitter:@YamadaNojiru
配信: 女子SPA!
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