腸活という言葉を耳にすることも多く、「腸の健康」に気を配っている方も多いと思います。
実際に、腸の健康を考えたときに重要なことってどんなことがあるのでしょうか?
腸内デトックス効果で話題の「梅流し」は本当に効果があるのでしょうか??
今回は、薬剤師で健康アドバイザーでもある箕浦雅子さんにお話を伺いました。
腸(おなか)の冷えは万病のもと!!
冷たいものを摂ると急激な温度変化にびっくりして、腸がギュッと縮こまります。
腸は絨毛といってたくさんのひだひだがある器官。
ぎゅっと縮まると目詰まった状態となり、動きも鈍くなり消化不良や便秘、ガス溜まりなどの消化器系の問題が発生しやすくなります。
また、内臓が冷えると深部体温が冷えないように血管が収縮しますので、血行不良がおこります。
血行不良になると栄養も酸素も細胞に届きづらくなるので細胞の活性が低くなり、熱産生率も下がり低体温を招くという悪循環がおこります。
体温が低下すると、交感神経が優位になります。
交感神経は「戦うか逃げるか」などの反応を制御しており、緊張やストレスが高まると活性化します。
交感神経が優位になると、血液は主に筋肉や心臓などの重要な器官に供給され、消化器官への血流が減少します。
この冷えは腸だけに留まりません。
体温を1℃上げたら免疫が30%上昇するという説があります。
腸内には免疫細胞の約70%が存在しているので、冷えることで腸内環境が悪化すると、免疫力の主体となる白血球(顆粒球・リンパ球)がバランスを崩してしまい免疫細胞の働きも鈍くなり、免疫力が全体的に低下するという考えです。
これにより、感染症にかかりやすくなったり、アレルギー反応が強くなったりする可能性があります。
腸が第二の脳ってどういうこと?
「脳腸相関」といって、脳と腸は相互に影響を与え合っているといわれています。
腸は「第二の脳」とも呼ばれ、多くの神経細胞が存在しています。
腸の状態は脳の状態に直接影響を与え、逆もまた然りです。
腸が冷えると、その不快感や消化器系の問題が脳に伝わり、ストレスや不安を引き起こす可能性があります。
また、脳がストレスを感じると、腸の動きや腸内環境に悪影響を及ぼし、腸の健康を損なうことになります。
このように、腸内環境と精神状態は密接に関連しており、腸内フローラの健康は精神的な健康に大きく影響を与えます。
1963年頃に提唱された「千島学説(日本の生物学者である千島喜久男らが提唱した学説)」では、血液は骨髄ではなく腸で作られると考えられています。
この考えによれば、腸の健康が血液の質に直接影響を与えるとされます。
現代医学では造血器官は成人では骨髄と考えられていますが、腸という臓器の重要性を否定する人はいないでしょう。
腸が冷えることは、腸内環境が悪化し、消化機能の低下、免疫力の低下、ストレスの増加といった、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があります。
肌や髪も含め、全身に影響があるということです。
これらの問題を避けるためには、腸を冷やさないようにすることが重要です。
適切な食事、適度な運動、ストレスの管理、そして腸を温める生活習慣を心がけることが、全身の健康を維持するために必要です。
腸を健康に保つことは、全身の健康を支える基盤となるため、その重要性を理解し、日常生活において腸を大切にする意識を持つことが大切です。
善玉菌や悪玉菌って何?
腸活といえば善玉菌を増やすことだけに注目されています。
しかし、実は善玉菌と悪玉菌どちらも重要なのです。
腸内細菌の生態系は、善玉菌、悪玉菌、日和見菌から構成されています。
これらの細菌は互いに競争し合いながら共存し、腸内のバランスを保っています。
善玉菌とは、腸内環境を健康的に保つ有益菌のことです。
よく耳にするビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌などがこれにあたります。
主に消化吸収、免疫機能の強化、有害物質の除去、腸内環境の維持を担っています。
悪玉菌とは食物を腐敗させ、アンモニア、硫化水素、フェノールなどの有害物質を産生するものなので悪と名をつけられています。
ですが、栄養素によっては、悪玉菌がいないと消化吸収できないプロセスも存在しているので、悪玉菌がいなくなると特定の栄養素の消化吸収ができなくなる可能性があります。
腸内の良い細菌はこれ!というのではなく多様性が、健康にとって重要です。
悪玉菌も含めて多様な細菌が存在することで、腸内の環境が多様な条件に対応できるようになります。
腸内フローラが急激な変化やストレスに対して耐性を持つことができるのも悪玉菌がいてこそなのです。
また、適度な悪玉菌の存在が免疫系の訓練や適応に役立つため、全くいないと免疫力が低下することがあります。
話題の『梅流し』は本当に整腸作用がある? やり方は??
「梅流し」という言葉を聞いたことはありますか?
梅流しとは、特定の方法で大根と梅干しを摂取することで腸内を掃除し、整腸作用を得ることを目的とした民間療法の一種です。
これは、大根の消化酵素と梅干しのクエン酸の相乗効果によるものとされています
●大根の消化酵素
大根にはアミラーゼ(デンプンを糖に分解する消化酵素)とプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)が含まれています。
これにより、食物の消化を助け、消化不良を改善する効果や腸内の食物残渣の分解が促進されるため、腸内環境が整いやすくなります。
●梅干しのクエン酸効果
梅干しに含まれるクエン酸は、疲労回復や抗菌作用、胃酸の分泌を促進する効果があります。
これにより、消化を助けるとともに、腸内の有害菌の増殖を抑える働きがあります。
また、クエン酸は腸を軽く刺激することで、腸の蠕動運動を促進し、便通を改善する効果があります。
これにより、腸内の老廃物が排出されやすくなります。
この様な効果のある大根と梅干しを組み合わせることによる相乗効果(これらの成分が協力して消化を助け、腸内環境を整える効果)が期待できます。
どうやってやるの?梅流しの方法について
梅流しは、腸内の老廃物を排出し、整腸作用を期待するための民間療法の一つです。
以下に、一般的な梅流しの手順を紹介します。
●梅流しの準備
材料:
大根:1本
梅干し:2~3個(無添加のものが望ましい)
水:適量
●手順
1) 大根を準備
大根をよく洗い、皮をむいて1cm程度の厚さに輪切りにします。
大根をさらに半月切りにして、一口サイズに切ります。
2)梅干しを準備する
梅干しの種を取り、果肉をほぐします。
3)大根を煮る
鍋に水を入れ、沸騰させます。 沸騰したら、切った大根を鍋に入れ、中火で煮ます。大根が柔らかくなるまで煮続けます(約15~20分)。
4)梅干しを加える
大根が柔らかくなったら、ほぐした梅干しを鍋に加えます。 弱火にしてさらに5分ほど煮ます。
●梅流しを実行する
大根と梅干しの煮汁を食べます。(大根の煮汁を飲むことが特に重要)
注意点!
〇適切なタイミング
梅流しは、空腹時に行うのが最も効果的だと考えられます。
通常、朝食前や夕食前などに実施されることが多いようです。
水分補給:梅干しの塩分が入りますので、塩分過多にならないように水分をしっかり摂ることが大切です。特に、温かいお茶や白湯が推奨されます。
〇頻度
1週間に1回程度が適切とされています。(梅流しは過剰に行わないように注意してください)
〇個々の体調に注意
梅流しを実行する際には、自身の体調に注意し、無理をしないことが重要です。
現代の科学的研究において、大根や梅干しの消化促進効果や整腸作用は部分的に証明されており、腸への作用が期待できるものではありますが、「梅流し」という特定の方法についての科学的な研究は限られています。
SNSなどでは、まるで魔法のようにもてはやされていることもありますが、劇的な効果が保証されているというものではなく、冷えの状態や、腸内環境などにより、効果の感じ方には個人差が大きいと思われます。
梅流しをしても便通の改善などの効果が感じられないときや、梅流しをして体調が優れない場合などは、専門家や医師に相談してください。
執筆者
箕浦 雅子
日本古来の「食養」を基に、現代人の不調を立て直す!にこにこマークのママ薬剤師!
株式会社Reblood 健康アドバイザー
株式会社健将 代表取締役社長
株式会社健将ライフ 代表取締役社長
株式会社日輪光瑠璃薬局 代表取締役専務
薬剤師、食養アドバイザー、学校薬剤師
チョコレート嚢胞(子宮内膜症)破裂により両卵管を一部切除。
子どもは望めないと言われるも、自然妊娠にて3人の子供を授かる。
両親の影響で子どもの頃より食養に触れていたが、この入院をきっかけに真剣に学ぶ。
様々なセミナーや書籍を通して人生哲学を学ぶなか、
易経に出会い、今までの学びと食養の関係が腑に落ちる。
学校薬剤師として小学校でお酒とたばこの話や薬物乱用教室を行う。
食の大事さ、子育ての楽しみ方、夫婦円満の秘訣などリクエストに応じた演題でセミナーも随時開催。
株式会社Reblood
配信: キレイ研究室
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