夏ドラマでの“怪演”が話題の櫻井翔。難役が最高のハマリ役になった「3つの理由」

夏ドラマでの“怪演”が話題の櫻井翔。難役が最高のハマリ役になった「3つの理由」

 7月から放送中の夏ドラマの中でも、一際異質さを放っているのが『笑うマトリョーシカ』(TBS系、金曜よる10時~)だ。早見和真氏の同名小説が原作の本作。未来の総理候補と噂されている高い人気を誇る若手政治家・清家一郎(櫻井翔)と、そんな一郎を支える敏腕秘書・鈴木俊哉(玉山鉄二)の闇を暴くために奔走する新聞記者・道上香苗(水川あさみ)の姿を描いたヒューマン政治サスペンスである。

AIのように完璧すぎる政治家を櫻井翔が怪演

 本作が注目されている大きな要因として、櫻井翔の演技が挙げられる。一郎はかつて官房長官も務めた有力代議士・和田島芳孝(加藤雅也)を父に持つが、一郎の著書『悲願』で明かされるまでその親子関係は長年隠されていた。自身の出自を隠し、著書内でそのことを明かす時点で一癖も二癖もある人物であることが伺える。また、秘書・俊哉がブレーンとして一郎を支える、もといコントロールしている描写も少なくない。現在放送されている最新話・4話まで、一郎の本心や意思は全く見せられていない。

 実際、登場人物も一郎の掴めなさには困惑している様子。1話で香苗は一郎との取材を終えた後、同僚に「まるでAIと話してるみたいだった」「名刺の渡し方、話し方まで完璧すぎるところが逆に不自然っていうか」「『清家一郎には主体性がない』って言われてもしっくりきちゃうっていうか」と一郎の無機質さと主体性のなさを触れていた。3話では、大学時代の一郎の交際相手・三好美和子(田辺桃子)が「血の裏付けと人を惹きつける力のある人間が、中身が空っぽのまま存在してるなんて奇跡ですよね」と一郎について口にしていた。

ドラマ以外でも色々な顔を持つ櫻井だからこそ

 各登場人物の一郎評をまとめると“主体性はないが人を惹きつけるカリスマ性がある人物”と言って良い。人を惹きつける人の特徴として、善悪はともかくとしてハッキリと自分の考えや願望を主張する傾向が見られる。しかし、一郎がそれらを口にするシーンは見られない。つまりは主体性のなさとカリスマ性という本来共存しない要素を併せ持っている人物であり、かなり演じることが難しいキャラと言える。それでも、櫻井は見事に演じ切っているからこそ、ドラマの評判が上々なのだろう。

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 それではなぜ櫻井はここまでハマり役なのかを考えてみたい。まず櫻井が最近出演したドラマは2024年1月から放送されていた『新空港占拠』(日本テレビ系)だ。主体性のない一郎とは異なり、櫻井は熱い正義感を持つ刑事・武蔵三郎を演じていた。前作とのギャップが激しいからこそ、一郎という人間の掴めなさがより助長されているのかもしれない。加えて、櫻井は役者業だけではなく、バラエティ番組に出演するテレビタレントとしても活躍中。さらには、『news zero』(日本テレビ系)のニュースキャスターも長年務めており、真面目なイメージも定着している。いろいろな顔を持つ櫻井が演じるからこそ、一郎というキャラに自然と奥行きが生まれたように思う。

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