年金だけでは生活費が足りない 貯金を切り崩しながら暮らしているシニア層は多数
筆者は、スーパーでチラシとにらめっこしながら歩いている高齢者を見かけたことがあります。私自身も最近の価格高騰に頭を抱えていますが、チラシを片手に歩く高齢者の姿は見るに忍びないものを感じてしまいました。
令和4年における国民年金の老齢年金受給者の平均年金月額は約5万6000円、厚生年金は約14万4000円です。年金を受給できるのかさえも不透明な昨今、若年層や現役世代は“高齢者は多く年金をもらっている”というイメージを抱いているかもしれません。しかし、年金額をみると、大半の高齢者はゆとりがある暮らしを営めるほど年金を受給できているわけではないと考えられます。
総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」を基に、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支を見てみました。
65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収入は24万4580円(可処分所得:約21万円)であるのに対し、支出合計は28万2497円となっています。
消費の内訳を見てみると、「食費」が約3割、「光熱・水道」が1割近くを占めており、「教育 教養娯楽」も1割程度です。このグラフを見ても、シニア層の生活についてゆとりがあるようには見えないと思います。多くの高齢夫婦が年金で生活の基盤を築き、家電の買い替え費用や自宅の修理費用など必要があれば貯蓄を崩しながら生活していると思います。
高齢になると思うように体が動かないことも多く、安いからと遠方のスーパーに行ったり、複数のスーパーをはしごしてお得な商品を買い集めたりすることも難しくなってきます。また、病院に行く頻度が増える人は少なくありません。そうなると、節約は得意だと自負する人も思った以上に生活費がかかることもあります。
ネットでは「世代間バトル」が激しいが…若者が“損”ばかりしているわけではない
日本がバブルを再びむかえるとは考えにくいでしょう。若い世代の中には羽振りのよさを知らない人も多く、20代、30代でも老後の資金について考え、将来を見据え、貯蓄をしたり、投資をしたりと工夫している人もいると思います。
しかし、説明したようにシニア層のすべてが好景気の恩恵を受けているわけではありません。
また、すでにリタイアした人の中には「企業戦士」と称されるほど仕事に注力し、パワハラや長時間労働に耐えてきた人が多くいます。さらに、当時は、リモートワークやフレックスタイム制はほとんどなく、ハラスメント被害者もないがしろにされていました。
どの世代が“得”をしているのかと考えをめぐらせても、答えはなかなか導き出せないのではないでしょうか。
配信: オトナンサー
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