費用も時間もかかるインプラントを10年、20年と長持ちさせるためには、治療後の「インプラント周囲炎」への警戒が必要です。インプラント周囲炎の原因や症状、かかった場合の治療法などを「オカダ歯科クリニック」の岡田先生にお聞きしました。
≫インプラントを入れた後も要注意!「インプラント周囲炎」とは?
監修歯科医師:
岡田 素平太(オカダ歯科クリニック)
日本大学松戸歯学部卒業。1998年、東京都葛飾区に「オカダ歯科クリニック」を開院。一般歯科をはじめ、矯正歯科、小児歯科、口腔外科など幅広い歯科診療を提供している。歯学博士。日本口腔インプラント学会専門医、日本歯科放射線学会認定医。日本大学松戸歯学部歯科放射線学講座非常勤講師。
せっかく入れたインプラントがグラグラに? 治療後に起こる「インプラント周囲炎」とは?
編集部
まず、インプラント周囲炎について教えてください。
岡田先生
口内の細菌の感染によって、インプラントの周囲を取り囲む骨(歯槽骨)が溶けてしまう疾患です。インプラント周囲炎はその前段階として、インプラント周囲の粘膜に炎症が起こる「インプラント周囲粘膜炎」を生じます。インプラント周囲粘膜炎がさらに進行するとインプラント周囲の骨が破壊され、インプラントの動揺や脱落を引き起こしていきます。
編集部
インプラント周囲粘膜炎やインプラント周囲炎を発症すると、どのような症状が表れますか?
岡田先生
インプラント周囲の歯ぐきに腫れた感じがある、あるいは歯を磨く時に出血があるなどがよくみられる症状です。さらに進行すると、インプラント周囲に痛みが出ることもあります。
編集部
インプラント周囲炎の原因は何ですか?
岡田先生
多くは口腔衛生状態によるものです。治療後、セルフケアやメンテナンスの不足でインプラント周囲が不潔な状態が続くと、インプラント周囲粘膜炎を発症します。とくに、口内に歯周病がある人や歯周病が原因で歯を失った人は要注意です。歯周病の治療が終わらないままインプラントを埋入してしまうと、インプラント周囲炎のリスクが非常に高くなります。
インプラント周囲炎は治療で治せる? インプラントの「再治療」が必要になるケースとは?
編集部
インプラント周囲炎は治療で治せるのでしょうか?
岡田先生
治せるケースと治せないケースがあります。目安の1つとして、CT検査をしてインプラント周囲の骨が1/3以上残っている場合は、外科的な処置によってインプラントを温存できる可能性があります。一方で、垂直的にも水平的にも半分以上、骨が破壊されているケースはインプラントの撤去が必要です。
編集部
インプラント周囲炎では、具体的にどのような治療をおこなうのでしょうか?
岡田先生
骨の破壊が少ないケースでは、レーザーを使ってインプラント表面を綺麗にして、そこに骨補填剤をいれて骨の再生を促していきます。このような外科処置が難しい、あるいは患者さんが希望されない場合は、インプラントの形態を修正して歯ブラシをしやすくする処置をおこなうこともあります。
編集部
インプラント周囲炎で骨の破壊が進んで抜去するケースでは、抜去した後にもう一度インプラントを入れる治療をおこなうのでしょうか?
岡田先生
患者さんがもう一度インプラントを希望される場合は、インプラントを抜去した後に人工骨や骨補填剤をいれて、骨の再生を図ります。ただし、前回の治療よりも骨が少なくなっているため、再治療ではある程度の骨造成や軟組織の移植が必要になります。
編集部
インプラントの再治療を希望しない場合は、ほかの治療法を検討するのでしょうか?
岡田先生
そうですね。患者さんがインプラントを希望されない場合は、ブリッジや入れ歯のいずれかを検討していきます。
配信: Medical DOC