歌舞伎俳優の片岡愛之助さん(52歳)が、人気シリーズの最新作『怪盗グルーのミニオン超変身』で日本語吹替え声優を務めました。笑福亭鶴瓶さん演じる怪盗グルーの高校の同級生で“超宿敵”のマキシム役でシリーズに初参加。テンション高い愛之助さんの怪演にも注目です。
愛之助さんは歌舞伎俳優として日々舞台に立つ傍ら、ドラマ・映画・今回のような洋画吹替えなどの声優と、幅広く活躍の場所を広げています。その背景には、いち表現者としての真摯な想いがありました。本人に話を聞きました。
はじめは笑福亭鶴瓶さんの同級生!?とびっくり
――今回演じられたマキシムは、怪盗グルーの因縁のライバルで、高校の同級生というキャラクターでした。
愛之助:当初、グルーを演じる笑福亭鶴瓶さんの「同級生!?」と思ったのですが、考えてみたら鶴瓶さんというよりも、グルーの同級生、役の上での同級生でした(笑)。ミニオンの映画は観る側だったので、自分が出ることになるお話をいただいたときは驚きました。
――また、マキシムは昆虫の研究にのめり込み、その能力を手に入れるという発明をしていますが、キャラクター性をどう受け止めていますか?
愛之助:彼は昆虫を愛するあまり、あのような感じになっていますよね。物事何でも好きこそものの上手なれと言いますが、やはり好きという気持ちが、どんどん昆虫の追求に追求を重ねてくのだと思うんです。だから、彼の気持ちは、どこか分からないでもないんですよね。ただ、グルーへの復讐心については「そんなに!?」と思ったので共感しませんでしたが。
やると決まった以上は、もう楽しむしかない
――共感とは、やはり芸の道について、ということでしょうか?
愛之助:そうですね。僕も歌舞伎が好きなものですから、そういう意味ではいろいろなことを追求して、試してやってみたいなという気持ちはあります。なので彼の気持ちは分かるほうだと思いますね。
――洋画の日本語吹替えは初めてではないと思いますが、また挑戦しようと思われた理由は何でしょうか?
愛之助:それはもうミニオンですから、断る理由がありません(笑)。台本を見て初めて「大変なものを引き受けた!」と思うのですが、楽しみでもあります。生みの苦しみと言いますか、難産であればあるほど、でき上がったものは面白くなると思うんです。それは、この作品に限ったことではないでしょうけれど。そしてやると決まった以上は、もう楽しむしかないですからね。
――マキシムのライバルはグルーですが、ご自身のライバルはいますか?
愛之助:ライバルは常に自分自身。自分との葛藤ですよね。毎日「もういっか」と思えば、それまでじゃないですか。僕は歌舞伎に日々出ていますが、「もういっか」と思った瞬間に、どんどん質が下がっていく一方なわけです。それを今日よりも明日、明日よりも明後日と、せめて一段ずつでもどうすればもっと良くなるのか、面白くなるのか、お客様が喜んでくださるのか考える。お客様の気持ちに立つこと、それを俯瞰で見ている自分がいることが重要で、自分との戦いを続けることが大事なんです。
僕らは正解がない仕事。だから誰がジャッジするのかというと、それはもうお客様なんです。そのお客様も十人十色で、9人が面白いと言っても、1人がそうじゃないと言うことがある。満場一致で素晴らしいものを作ることとは、かなり難しいと思うんです。
つまり、正解をずっと探し続けるということなんです。「これでいいのか?」「違うだろう?」と、自問自答ですよね。それが一生続いていくわけですから、よく言えばやりがいのある仕事。ゴールがない、正解がないですが、常に探究して一生の仕事と言われるものでもあります。だからライバルは自分自身、ですかね。
配信: 女子SPA!