今の人に歌舞伎を知ってほしい
――それこそ好きだからこそ続けていられるということもありそうです。
愛之助:そうですね。もしも僕が歌舞伎を嫌々やっていたら大変ですよ(笑)。嫌なことを毎日させられていたら地獄のようだと思うけれど、歌舞伎やエンターテインメントが好きな人間でよかったなと思っています。好きな仕事が出来ていて、幸せだなと思う。だから嫌だなと思うことはないんです。次は何をしてやろうかと考えていることも好きですね。
――こうして歌舞伎以外のフィールドにも積極的に参加をされていることには、何かほかに理由があるのでしょうか?
愛之助:今の人に歌舞伎を知ってほしいという想いもあります。「あのマキシムをやっている人、歌舞伎俳優なのか、ちょっと観てみようか」となるといいと思いますね。歌舞伎って昔の現代劇なので、もともと最新の歌舞いているものを題材にしているんです。今でいうワイドショーのようなイメージです。
その舞台の歌舞伎ものが、歌舞伎役者です。だから、いつも新しいもので僕らは歌舞かないといけないと思うんですね。こうしていろいろなことにチャレンジをして、新たな学びを採り入れていくことは、歌舞伎役者の自分にとって非常に大事なことでもあるんです。
――テレビドラマで言うと『半沢直樹』で主人公を追い詰める黒崎駿一役は、大きな話題になりましたが、よいチャレンジでしたか?
愛之助:劇場に非常に多くの方に来ていただきました。ドラマをやらせていただいて、新しいことに挑戦する自分のやっていることは間違いではなかったと思いました。人によっては芸が荒れるからテレビに出なくていいと言い、テレビで歌舞伎のお客様が増えるなんてことはないと言う人もいました。
でも実際は違い、それまでドラマの視聴率を気にしたことはなかったのですが、19、20パーセントもいくと、街ゆく人たち誰もが自分の顔を知っているんです。テレビの影響は強いと、それは痛感しました。歌舞伎だけやっていたのでは歌舞伎に興味がある人しか観に来ないので、ここまで知られることはなかったと思うんです。エンターテインメントを発信する上では、非常に大事なことかなと思いましたね。
55歳までに海外公演をしたい
――また、これからの50代、どのように過ごしたいと思いますか?
愛之助:まずは健康面に気を使って、目標を持って生きていったほうがいいかなと思いますね。たとえば何歳までに何をするなど、ざっくり決めておいたほうが、たぶん実現できる可能性が高いと思うんです。漠然といつかやりたいでは、やろうという気にならないですよね。そこまでにやらないといけないと旗を立てると、あともう3年しかない、2年しかない、やらなきゃという気持ちになって、どんどん進むじゃないですか。
死ぬまでにやるだと、ウロウロしてしまって忘れてしまうことが多いと思うんです。だから、それこそ大谷翔平くんがノートを付けていたこと、あれはすごく正しいと思って、人生の年表を作ったほうが、成功する率が高いでしょうし、そういう人が成功すると思っています。
――その年表、ちょっと聞いてもよいですか?
愛之助:自分の中にはいろいろありますね。僕は今52歳なので、55歳までに海外公演をしたいと思っています。あと3年です。
<取材・文・撮影/トキタタカシ>
【トキタタカシ】
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。
配信: 女子SPA!
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