「とても苦しかったからもう大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けたくない」と思ったことがある人も少なくないと思います。しかし実は、クリニックによって大腸内視鏡検査の辛さが違うのをご存知でしょうか? 大阪内視鏡クリニックの小森先生に、大腸内視鏡検査で後悔しないクリニックの選び方について聞きました。
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監修医師:
小森 真人(大阪内視鏡クリニック)
平成7年大阪大学医学部卒業。平成16年大阪大学大学院(博士課程)卒業後、大阪大学医学部附属病院、関西労災病院、大阪労災病院(内視鏡室長)、兵庫県立西宮病院(内視鏡センター長)などを経て令和6年大阪内視鏡クリニック院長就任。昭和大学横浜市北部病院消化器センター兼任講師。日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本消化管学会専門医・指導医など。平成18年日本消化器病学会奨励賞授賞。米国ベストドクターズ社から医師同士の評価によって選ばれる「The Best Doctors in Japan 2024-2025」に選出。
そもそも大腸内視鏡検査はなぜ、苦しいのか?
編集部
大腸の内視鏡検査は苦しいとよく聞きます。なぜですか?
小森先生
要因の一つは、内視鏡の挿入そのものによる痛みです。腸の壁が押されたり、引き伸ばされたりして、神経が刺激されることで痛みを感じます。なかでもS状結腸と横行結腸はお腹の中で固定されておらず、ブラブラと自由に移動する状態になっており、内視鏡を奥へ挿入する際に過度の圧力が腸にかかり、痛みが生じることがあるのです。
編集部
特に痛みを感じやすい人はいますか?
小森先生
たとえば憩室炎や、虫垂炎などでお腹の手術を経験した人は、腸が癒着している可能性があり、そういう場合には強い痛みを伴うことがあります。
編集部
そのほか、内視鏡検査が苦しい理由はありますか?
小森先生
送気によってお腹が張る感覚が苦しい、ということもあります。検査中、腸内の病変を見逃さないために内視鏡から送気し、腸管を膨らませる必要があります。そのため、お腹の張りを感じることがあるのです。
編集部
内視鏡検査が苦しいのは、検査中だけですか?
小森先生
人によっては、検査前の処置として下剤をたくさん飲む必要があり、それが苦しいという人もいます。
苦しくない大腸内視鏡検査を受けるには?
編集部
できるだけ楽に大腸内視鏡検査を受けるにはどうしたら良いのでしょうか?
小森先生
一つは、鎮静剤が使用できる医療機関を選ぶことです。鎮静剤を用いた場合、ウトウトと眠っているような深いリラックス状態で検査が受けられます。鎮静剤を用いることで苦痛のない検査が可能であり、さらに筋肉に不要な力が入らないため、安全な検査をより短時間で行うことにつながります。
編集部
どの病院でも鎮静剤を使うことはできるのですか?
小森先生
いいえ。鎮静剤を使用するには、その人の年齢や体格、飲酒歴、服薬歴などを考慮しながら、その人に適した鎮静剤の種類や分量を決定する必要があります。そのため鎮静剤を熟知した医師のいる医療機関でなければ、鎮静剤を使うことはできません。
編集部
鎮静剤を使用した検査を受ける上で、注意点はありますか?
小森先生
鎮静剤使用後は1~2時間、リカバリールームで安静にして頂く必要があります。そのため、十分なリカバリースペースを備えた医療機関でなければ、鎮静剤を使うことができません。
編集部
そのほかにも、楽に大腸内視鏡検査を受けるためのコツはありますか?
小森先生
内視鏡の専門医・指導医がいるクリニックを選ぶことも重要です。内視鏡の専門医・指導医がいれば、それだけ内視鏡検査・治療の実績も豊富であり、信頼できる目安になります。
編集部
医師の技量や経験も重要なのですね。
小森先生
はい。大腸内視鏡にはいくつかの挿入手技があり、代表的な手技として、工藤進英医師が1997年に世界で初めて提唱した軸保持短縮法という手技があります。これは腸を伸展させることなく、アコーディオンを縮めるように腸を折り畳みながら常に短縮させ、最短距離で内視鏡を大腸の奥まで挿入する方法です。
編集部
どのようなメリットがあるのですか?
小森先生
検査時間が短縮され、挿入による痛みの軽減につながりますが、経験豊富な内視鏡医でないとこの軸保持短縮法の実践は難しいと言われています。手技によって痛みや苦しさは異なるので、そのクリニックがどのような検査を行っているのか調べてみると良いでしょう。
配信: Medical DOC