7月17日に放送された『よるのブランチ』(TBS)に出演した木村慧人が、尊敬する先輩のひとりとして岩田剛典の名前を挙げていたのが納得だった。
木村は、FANTASTICS from EXILEのパフォーマーでありながら、『飴色パラドックス』(MBS、2022年)で主演、『さっちゃん、僕は。』(TBS、毎週火曜日よる11時56分放送)で単独主演など、俳優としての活躍もめざましい。
毎週土曜日よる11時30分から放送されている『顔に泥を塗る』(テレビ朝日)では、ジェンダーフリー男子役。持ち前の可愛さが役柄からあふれ、自由な才能を飛躍させようとしている。
木村慧人は、“パフォーマー兼俳優”としての進路をどのように見定めているのか。イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が解説する。
明確に具体化される可愛さ
『顔に泥を塗る』に出演する木村慧人にどうしてこんなに心をもっていかれるのかと考えている。ほんとうに可愛い。ではそれが具体的にどんな可愛さなのか。
『顔に泥を塗る』は、木村の天性の素質を具現化するとも言える。まずは主人公・柚原美紅(高橋ひかる)の反応を確認しておこう。第1話、デパートの受付で派遣社員として働く美紅が、おじさん客にトイレの場所をたずねられ、「連れてってよ」と腕を掴まれる場面。
「セクハラ!」と助け舟を出したのが、高倉イヴ(木村慧人)。「かなり悪質なセクハラですけど」と力強くもしなやかに、おじさん客に詰め寄る。華麗な撃退に目を輝かせる美紅は、陶然として「すごい綺麗」と心の中で呟く。
美紅は、イヴのことを女性だと思っているが、「僕、男です」とイヴはあっさり告白する。この冒頭場面で女性の格好をしているイブ役についてドラマ公式サイトでは、「ジェンダーフリー男子」と書かれている。性別に固定されないイヴ役を通じて、木村の可愛さが明確に具体化されていく。
『女子的生活』以来の風通しの良さ
美紅とイヴは、すぐに意気投合する。帰り際にばったり再会し、イヴのバイト先のギャラリーカフェへ行く。メイク術に悩む美紅は、イヴに真っ赤なリップを塗ってもらう。イヴの恋愛対象は、あくまで女性だが、美紅からすると同性の友達感覚で気を許せる。
自分の好きなものにとことん素直なイヴの生き方に感化され、るんるんで帰宅する美紅だったが、同居する交際相手・結城悠久(西垣匠)からは不評を買う。実はとんでもないモラハラ彼氏。美紅にはとことん自分の理想の姿であってほしいと望む彼は、知らない男性から塗ってもらった派手なリップの色をとことん毛嫌いする。
『恋い焦れ歌え』(2022年)の熊坂出監督によるホラー・テイストの演出が、悠久の歪んだ精神をかなり誇張しながら執拗に描く。意思決定のすべてを彼氏に委ねてきた美紅が、自分らしさに目覚め、女性として解放されていく物語自体はやや今さら感もある。
でも導き手になるイヴの自由な魅力は、(あくまでビジュアル面で)トランスジェンダー女性の日常を活写した『女子的生活』(NHK総合、2018年)の志尊淳以来の可憐な風通しの良さを感じる。
配信: 女子SPA!