“うなぎ”で147人が体調不良、うち1人が死亡 「食中毒」になると現れる症状・対処法を医師が解説

“うなぎ”で147人が体調不良、うち1人が死亡 「食中毒」になると現れる症状・対処法を医師が解説

横浜市のデパートで購入した「うなぎ弁当」などを食べた客147人が嘔吐や下痢などの体調不良を訴えており、うち1名(90歳代女性)がその後、死亡したことが明らかになりました。

食中毒とは、有害な微生物などを含む飲食物を食べてしまったときに生じる病気です。誰しもかかる可能性があり、症状も幅広く発症します。予防するためにも、食中毒になるとどうなるのかなどを把握することが大切です。

そこで本記事では、食中毒になるとどうなるのかをご紹介します。症状の種類・応急処置・周囲の人が注意するポイントを医師の中路先生が解説するので、ぜひ参考にしてください。

※この記事はMedical DOCにて【「食中毒」になると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

食中毒の特徴

食中毒とはどんな病気ですか?

食中毒の定義は、有害な微生物や化学物質を含む飲食物を食べた結果で生じる健康障害のことです。
細菌・ウイルス・ふぐ・キノコ・ジャガイモの芽・寄生虫などによって発症することがあります。食べ過ぎや飲み過ぎでお腹が痛くなることや下痢になることはありますが、これらは食中毒とは異なります。

食中毒が起こる原因を教えてください。

食中毒が起こる原因としては、大きく分けると次のようなものが代表的です。

細菌

ウイルス

自然毒

化学性食中毒

細菌としては、カンピロバクター菌・腸管出血性大腸菌・黄色ブドウ球菌などが挙げられます。ウイルスとしては、近年ではノロウイルスなどが代表的です。
自然毒としては、ふぐやキノコの毒などが挙げられます。それぞれ加熱されていない食材などから感染する可能性が高いです。化学性食中毒の場合は、水銀・ヒ素・殺鼠剤などの金属や化学物質が原因となるケースです。また、それぞれ菌やウイルスにより、潜伏期間・症状・治療期間などが異なります。

何日くらいで治りますか?

治る日数は、先述した原因によって異なります。近年では、ノロウイルスやカンピロバクターなどによっての食中毒が多い傾向です。ノロウイルスを原因とした場合の治療にかかる日数は、通常3日程度で回復が見込めます。
カンピロバクターの場合は、1週間ほどで治る傾向です。しかし、どのような食中毒の場合も、症状の度合いや健康状態によって長引く可能性があります。治療期間はあくまでも目安と思っておきましょう。

食中毒の症状はどんなものですか?

食中毒の症状には次のようなものが挙げられます。

吐き気

嘔吐

腹痛

下痢

頭痛

発熱

筋肉痛

これらの症状は、食中毒となる原因によっても異なります。例えばノロウイルスの場合であれば、吐き気・嘔吐・腹痛・下痢・頭痛・発熱など広く発症する可能性があるでしょう。カンピロバクターの場合は、発熱・下痢・腹痛・頭痛・筋肉痛などが発症する可能性があります。
しかし、ノロウイルスやカンピロバクターが原因で食中毒になったからといって、必ずしもその症状が全て発症するとは限りません。また、食べてから症状が出るまでの潜伏期間があります。この期間は、食中毒の原因次第では無症状であるケースもあるため注意が必要です。
さらに、抵抗力が弱い子供や高齢者の場合は、症状が重症化しやすい傾向があります。乳幼児は、腸内細菌・免疫機能・身体の機能が不十分であることが理由です。高齢者は、体力・抵抗力が弱っている傾向があるためです。

食中毒には分類があると聞きましたが。

この病気には、次のような分類があります。

感染型細菌性食中毒

毒素型細菌性食中毒

ウイルス性食中毒

寄生虫食中毒

化学性食中毒

動物性自然毒食中毒

植物性自然毒食中毒

細菌性食中毒は、感染型と毒素型に分けられます。感染型の場合、一定数以上に原因菌が増殖した食品を摂取してしまい、腸管内で感染するケースです。毒素型は、食品内の原因菌が毒素を生み出しており、毒素ごとを含んだままの食品を摂取することで食中毒を発症するケースです。
ウイルス性食中毒は、現在ではほとんどがノロウイルスによって引き起こされます。ノロウイルスの場合、汚染された食品だけでなく、感染した方の手指を介して二次感染する可能性があります。寄生虫食中毒は、食品内に寄生する寄生虫ごと食べることで食中毒を引き起こすケースです。
近年では、アニサキスによる食中毒が増加傾向です。化学性食中毒は、水銀・ヒ素・殺鼠剤などの化学物質が体内に入ってしまうことで発症します。自然毒食中毒は、動物性と植物性に分けられます。動物性はふぐ・貝などの毒、植物性は毒キノコ・ジャガイモの芽などの毒によって生じる食中毒です。

食中毒の診断と治療方法

食中毒と判断するポイントはどんなところですか?

基本的には医師による判断の方が、確実に食中毒であるかを判断できます。しかし、自分でも次のようなポイントで判断が可能です。

食中毒の原因となりそうなものを口にしているか

同じものを食べた方にも同様の症状があらわれているか

まず、食中毒の原因となりそうなものを口にしているかどうかが挙げられます。症状が現れた時期をもとに、直近で食べたものを思い返してみると良いでしょう。牡蠣やアニサキスがいる魚(サバなど)などを口にしているようであれば、食中毒が考えられます。
また、同じものを食べた方にも同様の症状が現れているかも判断のポイントです。一緒に食事した方にも症状が現れているのであれば、食中毒の可能性が高いです。

検査をするときはどんなことを行いますか?

主な検査内容は、次のようなものが挙げられます。

血液検査

尿検査

画像検査

便培養検査

体内の炎症の強さ・肝機能機能・腎機能を確認するため、血液検査や尿検査を行うのが一般的です。金属などの化学物質による食中毒が疑われる場合には、体内のイオン濃度を調べる場合もあるでしょう。画像検査は、レントゲン・CT検査・内視鏡検査を行います。
食中毒で発症する下痢や嘔吐は、他の病気によっても発症します。そのため、他の病気の存在を確認するために画像検査を行うのです。アニサキスでは虫体を取ることで治癒しますし、カンピロバクター腸炎では回盲弁のびらんなど特徴的な所見が見られます。
また、腸の炎症症状の度合いを調べることもできるので、他の炎症性腸疾患との鑑別にも有用で食中毒の重症度も確認できます。便培養検査は、便を採取してウイルスや細菌の正体を特定する検査方法です。食中毒の確定には必要で、治療方針を決めるためにも非常に重要です。

治療の方法を教えてください。

食中毒の治療方法は、基本的には水分補給や点滴などの対症療法が行われます。重症化が懸念される場合には、原因に対する抗菌薬を使う治療と点滴などを併せて行います。
しかし、水分補給や点滴などの対症療法であっても、身体の機能により下痢や嘔吐によって体内の菌を排出しようと働いているのです。そのため、対症療法が基本的な治療となります。

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