「放射線治療ができない人の特徴」はご存知ですか?副作用となる症状も医師が解説!

「放射線治療ができない人の特徴」はご存知ですか?副作用となる症状も医師が解説!

放射線治療ができない人の特徴

放射線治療は、副作用が少ない治療法ではありますが、以下のような人の場合には難しい場合もあります。

妊娠中である

妊娠中の方に対しては、赤ちゃんへの放射線被ばくの影響を考える必要があります。
例えば乳がん治療ガイドラインでは、妊娠中の方に対しての放射線治療は絶対的禁忌となるとされています。理由としては、例えばお腹を鉛などでカバーして放射線が当たらないようにしても、微量な放射線が当たってしまう可能性があるためです。

痛みなどがあり、適切な姿勢になれない

放射線治療を受ける際には、専用のベッドに横たわり、かつ適切な姿勢をとることが重要です。なぜなら、放射線治療の計画を立てた時と同じ条件になってなければ、当てたい部位にきちんと放射線が当たらず、効果が弱くなってしまう可能性があるからです。
例えば、乳がんの手術後にがんがあった方の乳房に放射線を当てる際には、そちら側の腕を挙げる姿勢をとらなければなりません。痛みがあったり、手術の後の突っ張り感などがあったりしてその姿勢が保てない場合には、放射線治療ができないと判断されることがあります。

同じ場所に放射線治療を受けたことがある

基本的には、過去に放射線治療を受けた場合、同じ場所に対して放射線治療を行うことができません。
がん周囲の正常な組織には、耐用線量(たいようせんりょう)といって、この程度までの放射線であれば当てても許容されるといった線量があります。再照射の場合、こういった耐用線量を超えてしまう危険性があります。すると、組織の壊死や神経の損傷による麻痺などが引き起こされるリスクがあるのです。
一方で、高精度放射線治療といい、当てたい場所以外への放射線照射を極力減らした治療が最近では行われており、再照射が可能な場合もあります。

重い間質性肺炎がある

間質性肺炎というタイプの肺炎がもともとある方は、胸部、特に肺がんに対する放射線治療には注意が必要です。
間質性肺炎は、肺の一番小さな組織である肺胞の壁である肺胞壁(はいほうへき)が炎症などによって固く厚くなってしまう病気のことです。
放射線治療を行うと、この間質性肺炎が急激に悪化してしまう恐れがあります。
肺がんに対して、かなり高い放射線を当てる「定位放射線治療(ていいほうしゃせんちりょう)」という治療がありますが、この治療は重篤な間質性肺炎・肺線維症の方に対しては相対的禁忌とされています。

膠原病

膠原病(こうげんびょう)とは、皮膚や靭帯、筋肉、骨などを形成するコラーゲンに炎症や障害が起こり、皮膚や体のさまざまな部位に何らかの症状が現れる病気の総称です。
例えば、関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症(きょうひしょう)
などがあります。そして、こうした膠原病の方では、放射線治療を行ってから数か月以上たって起こる晩期障害(ばんきしょうがい)が通常の場合よりも多いといわれています。
そのため、例えば肺の定位放射線治療や、乳房温存術後の放射線治療においては、膠原病の方に対する放射線治療は相対的禁忌とされており、膠原病が重篤な場合には放射線治療が行えないことがあります。

放射線治療の流れ

実際に、以下のように放射線治療を行なっていきます。

診察・検査

がんの治療として、患者さんが初めから放射線治療科を受診するということはあまりありません。
そのがん治療を行なっている主治医から、がんの治療の選択肢として放射線治療をすすめられることがあります。その場合、放射線治療医の診察を受けることになります。
放射線治療医は、がんの広がり具合や患者さんの体の状態、さらに今まで受けた検査や治療などから、放射線治療が受けられるかどうかについて検討します。
その上、放射線治療の方針を決めるために必要な検査(MRIなど)を追加することもあります。
放射線治療医は、患者さんに対して、放射線治療によって得られる治療効果や副作用、放射線治療に要する時間や放射線治療の方法などについて説明します。その上、患者さんから治療の同意が得られた場合、放射線治療計画を立てていく準備を始めます。

治療計画

治療計画を立てる上で、まず初めにシミュレーションを行います。
具体的には、実際の治療を想定したベッドに患者さんが寝てもらい、CT(時にMRI)などの撮影を行なって、放射線治療を受ける際の姿勢などを決めていきます。放射線治療は、毎回同じ体勢をとることが大切です。そのため、位置を決めるために皮膚にマーキングを行います。治療する部位によっては、シェルという固定具を作ることもあります。
診察と検査の結果をもとに、コンピューター(治療計画装置)を用いて、放射線治療医が治療計画を作成します。この計画では、放射線の種類、照射量、治療の回数などを決めていきます。
さらに、計算ソフトウェアを用いて、正常組織への影響を最小限に抑えつつ、腫瘍に最適な放射線量を届ける計画を立てます。

治療

治療計画に基づいて、放射線治療が実施されます。治療は、外部から放射線を照射する外部放射線治療が一般的ですが、場合によっては体内に放射性物質を挿入する内部放射線治療(ブラキセラピー)が選択されることもあります。治療は数週間にわたり、週に数回行われることが多く、毎回の治療は数分から数十分ほどです。

治療後

放射線治療の後、多くの場合、患者は自宅での回復が可能ですが、治療の強度や患者の健康状態によっては短期間の入院が必要な場合もあります。
治療の効果と副作用などを調べるために、治療から数ヶ月以上でも定期的に通院することもあります。

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