母が包丁を持ち出して…貧困の女子高生が“夜の仕事”を踏みとどまれたわけ|漫画『東京のど真ん中で、生活保護JKだった話』

母が包丁を持ち出して…貧困の女子高生が“夜の仕事”を踏みとどまれたわけ|漫画『東京のど真ん中で、生活保護JKだった話』

高校生で夜のバイトも考えた。区役所員の言葉が自立の後押しに

現在、兄は社会復帰を果たして結婚もしています。出版が決まった際にはとても応援してくれて、漫画制作にも協力してくれました。ただ、兄に対する批判も少なからずあったのは悲しかったです。私が楽観的でいられたのも、兄が守ってくれていたり、ふたり兄妹だから乗り越えられた面もあるので……。

――そうした家庭の悩みを抱えながらも、学校生活や公務員試験の勉強に前向きに取り組めた理由とは?

五十嵐:友人たちや当時の彼氏、そして区役職員の柳さんの存在に支えられましたね。中学時代からの友人は、我が家の窮状を知っても変わらず接してくれて、今でも仲良しです。柳さんとは、地域ボランティアを介して知り合ったのですが、私が高校を卒業する際に、生活保護の「世帯分離(※)」について教えてくれて、家を出て自立するための後押しをしてくれた恩人でもあります。


本当に生活がギリギリになったとき、高校生では働けない夜の街で高時給のアルバイトをしようか迷いましたが、友だちや彼氏、柳さんの顔が浮かんで踏みとどまれました。

(※)家族との住民票を分けること。生活保護世帯の場合、独立した家族分の保護費が減額される。

ちなみに、高校時代の彼氏とは16年の交際を経て結婚し、今は夫になっています。彼には、付き合いはじめてすぐのタイミングで「うちは生活保護を受給している」と伝えましたね。

高校時代、彼氏に生活保護をカミングアウト

――なかなか勇気がいるカミングアウトですね……。

五十嵐:当時は、高校3年生で「公務員試験を受ける」という進路の話をした流れで打ち明けたような気がします。それで相手に引かれてしまえば、それまでの関係ですし(笑)。一方の彼はうちが生活保護家庭だと知っても、引くでもなく同情するでもなく「そうなんだ」とフラットに受け止めてくれました。


彼の家は父子家庭で、幼い頃から家事全般を彼氏が担っていたからか、とても大人で自立した考えを持っていたんです。

私の就職が決まり、これから家族を養わなければならないかも……と悩んでいるときも「それはあなたが責任を負わなければならないことではない」「自分で道を選択していい」と言ってくれて、とても救われましたね。

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