「スキルス胃がんになりやすい人」の特徴はご存知ですか?代表的な症状も解説!

「スキルス胃がんになりやすい人」の特徴はご存知ですか?代表的な症状も解説!

スキルス胃がんになりやすい人の特徴とは?Medical DOC監修医がスキルス胃がんになりやすい人の特徴・症状や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

※この記事はMedical DOCにて『「スキルス胃がんになりやすい人」の特徴はご存知ですか?代表的な症状も解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

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監修医師:
丸山 潤(医師)

群馬大学医学部卒業。群馬県内の高度救命救急センター救急科及び集中治療科に2022年まで所属。2022年より千葉県の総合病院にて救急総合診療科および小児科を兼務。乳児から高齢者まで幅広い患者層の診療に努める。
【保有資格】
医師/医学博士/日本救急医学会救急科専門医/日本集中治療医学会集中治療専門医/DMAT隊員/日本航空医療学会認定指導者(ドクターヘリの指導者資格)/JATECインストラクター/ICLSインストラクター

「スキルス胃がん」とは?

スキルス胃がんのスキルスは「かたい腫瘍」という意味で、胃壁を厚く固くする病変を起こすがんです。胃がん全体の1割を占め、若い女性に比較的多いのが特徴です。
スキルス胃がんの厄介なところは、がん細胞が固まって成長せず、組織全体に散らばりながら広がる性質(びまん性)です。しかも胃の粘膜の表面ではなく、目に見えない粘膜の内部で増殖します。
スキルス胃がんは「内視鏡で検査しても確認できず」「がんの進行が早い」「転移しやすい」という性質があり、腹膜など他の場所に転移することが多いがんです。そのため治すことが難しく、予後が悪いのが特徴になります。
見つかった時には末期がん、というケースは珍しくありません。多くの胃がんはピロリ菌除菌と定期健診で改善しつつありますが、スキルス胃がんは健診で見つけることが難しいがんです。
スキルス胃がんになりやすい人はいるのでしょうか。どうすれば早期発見できるのでしょうか。これらの疑問にお答えしていきたいと思います。

スキルス胃がんになりやすい人の特徴

スキルス胃がんは不明なところが多く、まだ全容が解明されていません。しかし、発症しやすい人の傾向はあります。どんな人がなりやすいのかを知れば、いち早く発見できる可能性があります。

若い女性に多い

多くのがんは高齢になるほど発症しやすくなります。
しかし、スキルス胃がんは若い女性が発症しやすい特徴があります。20代、30代のこれから人生が充実する世代に発症することが珍しくありません。したがって、スキルス胃がんは子宮頸がんと並び、若い女性が特に注意したいがんです。ワクチンで発症が予防できる子宮頸がんとは異なり、残念ながらスキルス胃がんは予防手段がほぼありません。また、なぜ若い女性でも発症するのか、原因もはっきりと分かっていません。

ピロリ菌感染

国立がん研究センターの研究では、ピロリ菌感染者の胃がん発生率は、感染していない人の5.1倍あることが分かりました。調査時に感染していないもののピロリ菌が原因と見られる胃壁収縮が起こっている人も含めると、胃がん発生率は10倍にまで上昇します。
ピロリ菌感染を長期間放置すると、胃壁が委縮し、胃がんに進行するリスクが上がります。ピロリ菌感染はスキルス胃がんに限らず、胃がん全般の大きなリスクです。
ピロリ菌は5歳ごろまでの幼少期に感染する菌で、胃酸を中和する能力があり長期間胃壁に寄生します。ピロリ菌に感染した胃は「萎縮性胃炎」や、胃の粘膜に鳥肌のようなブツブツした突起が広がる「鳥肌胃炎」、胃のひだが肥大する「ひだ腫大型胃炎」などを起こします。特に鳥肌胃炎は若者に起こりやすい病変で、スキルス胃がんのリスク因子になると考えられています。
ピロリ菌の検査は定期健診で行うことができます。定期健診の検査は実費ですが、胃がんリスクを減らすためにもぜひ一度は受けましょう。
もし陽性の場合は、早急に消化器内科でピロリ菌の除菌を行いましょう。ピロリ菌を除菌できれば胃がんリスクを大きく下げることができます。ただし除菌が成功しても胃がんリスクはゼロにはならないため、除菌後も胃の定期健診を受けるようにしましょう。

遺伝子変異

スキルス胃がんを含む、びまん浸潤型の胃がんは遺伝子が影響していると言われています。第16番染色体にあるCDH1遺伝子という場所に変異があると、高い確率でびまん浸潤型胃がんを発症することが分かっています。
CDH1遺伝子は、E-カドヘリンというタンパク質の設計図です。E-カドヘリンは胃壁の細胞をつなぎ、細胞のがん化を防ぐはたらきがあります。しかし、CDH1遺伝子に変異があると正常なE-カドヘリンが作られず、がん化しやすくなります。他にも、スキルス胃がんの患者にはαカテニンという遺伝子の欠損が多いことが知られています。
あなたのご家族や血のつながった親族がスキルス胃がんを発症した場合は、あなたにも発症リスクがある可能性があります。

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