「外傷性くも膜下出血」の症状・原因・後遺症はご存知ですか?医師が徹底解説!

「外傷性くも膜下出血」の症状・原因・後遺症はご存知ですか?医師が徹底解説!

外傷性くも膜下出血の主な原因

高齢者の転倒

日本国内の統計では、外傷性くも膜下出血に限らず、頭部外傷全体における傾向について、かつては交通事故などによる20歳代や60歳代の発症が多かったのですが、近年では交通事故の頻度が減り、高齢者の転倒や転落による頭部外傷が増加しています。そして高齢者の頭部外傷は、「けがをした直後は普段通りだったのに、数時間経過して急激に悪くなった」という特徴があります。従って特に60歳以上の方は、打撲直後に症状がなかった場合も、念のため脳神経外科や救急科の受診を検討しましょう。

若年者のスポーツ外傷

若年者の場合、スポーツによる頭部外傷の傾向が見られます。具体的にはボクシングや空手、柔道などの格闘技、アメフトやラグビーなどのコンタクトスポーツ、スノーボードなどのウィンタースポーツも挙げられます。また外傷性くも膜下出血などよりも脳震盪を起こす割合が高いとされています。従って、頭部外傷後にめまいや嘔吐、記憶障害といった症状を認める場合は、早めに脳神経外科や救急科を受診した方が良いでしょう。

外傷性くも膜下出血の後遺症

一般的に外傷性くも膜下出血のみでは、後遺症を残すことは少ないです。しかし他の頭部外傷が併発した場合、何らかの遅発性の症状や後遺症が出現する可能性があります。

麻痺や意識障害

硬膜下血腫や脳挫傷などの損傷部位に応じた手足の麻痺や感覚障害、視野障害、呂律困難、嚥下障害といった症状が後遺症となる可能性があります。そして重症度に応じて入院期間やリハビリ期間も長期化します。また損傷が広範囲におよぶと意識障害が遷延し、寝たきりになってしまう危険性もあります。

高次脳機能障害、性格変化、認知症など

頭部CTで出血が消失した後も、頭痛やめまい、光や音への過敏症、倦怠感、記憶力や集中力の低下、うつ、認知機能の低下といった症状が残る場合があります。また粗暴になるなどの性格変化や高次脳機能と呼ばれる認知や空間認識に関わる脳の複雑な処理ができなくなる場合もあります。これらは前頭葉や側頭葉などの理性や記憶を司る場所や頭頂葉などの脳機能を統合している場所が損傷することで生じます。

外傷性てんかん

脳の損傷部が火種となり、けいれんが出現する場合もあります。特に外傷後しばらくしてからのけいれんは、繰り返して外傷性てんかんという疾患につながる可能性があります。てんかん発作を抑えるために、抗てんかん薬の内服が必要になります。

その他の合併症

特に高齢者では、外傷後に数か月かけて脳を覆う硬膜という膜の下に徐々に血液がたまっていき、「慢性硬膜下血腫」という病気になることがあります。これは歩行障害や認知症、尿失禁などの症状を呈します。従って、頭を打って数か月してこれらの症状が出現する場合は、脳神経外科などを受診しましょう。なお、頭蓋骨に穴をあけて血腫を抜き出す穿頭術という手術を行うことで症状は消失します。

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