「外傷性くも膜下出血」の症状・原因・後遺症はご存知ですか?医師が徹底解説!

「外傷性くも膜下出血」の症状・原因・後遺症はご存知ですか?医師が徹底解説!

外傷性くも膜下出血の治療法

基本的には安静と血圧管理、時に出血の拡大を予防するような薬剤の点滴を行います。脳神経外科や救急科のある病院で治療します。また他の脳損傷や複数の外傷を伴う場合は頭部のMRIや造影CT、カテーテル検査といった精査を行う場合もあります。そして硬膜下血腫や脳挫傷などによって、脳ヘルニアという脳が圧迫される状態が生じていると非常に危険です。救命目的に血腫を除去したり、減圧と呼ばれる脳の圧力を逃がしたりするような手術を行います。

外傷性くも膜下出血の後遺症を軽減するリハビリ

リハビリを担当するのは「リハビリテーション科」という診療科で、医師や看護師のほかに理学療法士、作業療法士、言語療法士と呼ばれるリハビリに特化した役職の人も所属しています。そして救急科や脳神経外科と協力して入院治療を進めます。急性期の治療後、患者さんの状態が落ち着けば、本格的なリハビリが始まります。つまり入院初期は医療行為・治療のウェイトが高いのですが、徐々にリハビリのウェイトが大きくなっていくイメージです。またリハビリ治療に特化した「回復期リハビリ病院(病棟)」というものがあり、後遺症が中等度から重度の場合はそのような機能のある病院(病棟)に移動(転院・転棟)して、さらに集中的なリハビリを行います。期間については数か月から半年程度までおよぶ可能性もあり、その後も長期の福祉・介護施設やサービスの利用が必要となる場合もあります。

運動麻痺などに対するリハビリ

運動麻痺を残した場合、平行棒・階段などの歩行訓練や手先を使った作業訓練を行います。また歩行を補助する装具や杖などを使用することもあります。嚥下障害がある場合は、食べ物が肺や気管に入って窒息したり誤嚥性肺炎と呼ばれる感染を引き起こしたりする恐れがあるので、食事を柔らかくするなど工夫をして、飲み込み訓練を行います。家族は自宅や職場の階段や段差など歩行に障害となる環境がないか、またトイレやお風呂の環境なども確認しておきましょう。そして本人がどの程度、家族や周囲の人の助けを借りて日常生活を送れるのか、リハビリの先生と確認しておきましょう。その他、障害者認定や介護認定の申請も重要です。認定が下りれば、利用できるサービスが広がります。尚、手続きには数か月かかる可能性もあるので、医師と相談しておきましょう。

高次脳機能障害に対するリハビリ

高次脳機能障害は見た目ではわかりづらく、障害を本人や周囲の人が理解することが重要です。例えば記憶障害がある場合、メモや手帳などを利用したり、家族や職場の人が繰り返し教えてあげたり、といったことです。また空間認識や注意力が低下している場合は、認識しやすい位置に物を置いたり、作業を1つにして簡略化したり、といったことも大切です。いずれにせよ作業療法や言語療法というリハビリを通じて、代わりの手段や方法を考える必要があります。そして性格変化やうつといった後遺症は、カウンセリングや精神科の受診が必要となることもありますので、お悩みの場合は医師に相談しましょう。

「外傷性くも膜下出血」についてよくある質問

ここまで外傷性くも膜下出血を紹介しました。ここでは「外傷性くも膜下出血」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

外傷性くも膜下出血の死亡率はどれくらいでしょうか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

頭部外傷全体の統計では死亡率は低下しています。一方で、他の脳損傷を合併したことで後遺症を残し、社会復帰が困難になっている割合は増加しています。

外傷性くも膜下出血を発症すると、どのような合併症がありますか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

硬膜下血腫や脳挫傷などの脳損傷を起こすと運動麻痺や呂律困難・嚥下障害、高次脳機能障害といった障害を残す可能性があります。また外傷性てんかんや、高齢者においては慢性硬膜下血腫と呼ばれる外傷から数か月経過して発症する疾患もあるため、注意が必要です。

高齢者が転倒すると外傷性くも膜下出血を発症することはありますか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

あります。統計では65歳以上の高齢者の転倒や転落による頭部外傷は6割以上と半数を超えているとあり、近年、高齢者の頭部外傷は増加傾向です。また高齢者は直後に何もなくても、数時間経過して悪化することがあります。そして重症な頭部外傷のうち高齢者の頭部外傷の割合は25-30%あるという事実からも、重症化しやすいことがわかります。従って、高齢者が転倒して強く頭を打った場合は、明らかな症状がなくても、脳神経外科や救急科を受診されることをお勧めします。

編集部まとめ

ここまで外傷性くも膜下出血について解説してきました。外傷性くも膜下出血は頭部外傷で生じ、合併する脳損傷によっては多彩な症状を来たし、後遺症を残す危険性もあります。また社会復帰にはリハビリや周囲の環境が重要となります。そして原因としては、高齢者の転倒に「要注意」ですので、頭を強く打った場合は速やかに医療機関を受診するようにしましょう。

「外傷性くも膜下出血」と関連する病気

「外傷性くも膜下出血」と関連する病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

脳神経科の病気

びまん性軸索損傷

脳挫傷

急性硬膜下血腫

急性硬膜外血腫

脳ヘルニア

脳震盪

頭蓋骨骨折

外傷性てんかん

慢性硬膜下血腫

頭部外傷(頭のけが)では、上記のような疾患が考えられます。外傷性くも膜下出血のみではなく、いくつかの頭部外傷の疾患が併発した場合に、何らかの神経症状や後遺症が出現することがあります。

「外傷性くも膜下出血」と関連する症状

「外傷性くも膜下出血」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

頭痛

嘔気、嘔吐

めまい

痙攣、てんかん

意識障害

運動麻痺

感覚障害

呂律困難、嚥下障害

高次脳機能障害

頭を強く打撲した場合には、その後少なくとも1日以内は普段と異なる症状が出現しないか確認してください。おかしいなと思う場合には、病院を受診し検査を受けましょう。

参考文献

頭部外傷治療・管理のガイドライン第4版

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