「小児在宅医療」に立ち塞がる壁 増加傾向にある医療的ケア児の現状課題と展望

「小児在宅医療」に立ち塞がる壁 増加傾向にある医療的ケア児の現状課題と展望

医療的ケア児をどうサポートすべきか?

編集部

医療的ケア児支援法が成立したことで、何か変化はありましたか?

三島先生

一部では確かに成果も見られているようですが、現実的にはまだ多くの課題が残されています。

編集部

どんな課題が残されていると感じますか?

三島先生

医療における地域格差の問題が挙げられます。小児在宅診療など、医療的ケア児向けのサービスを提供する医療機関の数は、都市と地方では格差がありますし、また、多くの場合、医療的ケア児は普通の認可保育所には通えないため、親が仕事を辞めてつきっきりで介護をしなければならないといった問題も残されています。

編集部

今後の展望はどのようにお考えですか?

三島先生

今後、社会の高齢化が進むにつれて、高齢者向けの在宅医療に対するニーズはますます高まると予測されます。そうなると医療資源が高齢者の医療へ集中することになり、医療的ケア児のための在宅医療は、ますます手薄になってしまうことが考えられます。たとえば、小児在宅医療を行っている医療機関に対して診療報酬の点数を上げるなど、社会的な仕組みを見直さなければ、増加傾向にある医療的ケア児に対応することは難しくなっていくと思います。

編集部

社会的に、限られた医療資源の上手な活用法を考えなければならないということですね。

三島先生

はい、現在は法律に現場の体制が追いついていないという問題があります。たとえば、普段成人を診察している訪問診療の医療機関も、必要に応じて重症度の小児を診察できるようにするなど、医療資源の不足を補う方法を考えることが必要です。また、国や自治体が小児の在宅医療を行う医療機関へ、手厚い支援をすることも大切。そうすることが、結局は保護者のサポートにつながっていくのだと考えています。

編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

三島先生

医療的ケア児を家族で介護していくのは大変なことだと思いますが、医療機関ではなくとも、訪問看護師やソーシャルワーカー、「保護者を支えたい」とがんばっている行政機関は必ずあります。また、家族会をはじめ家族同士のネットワークもありますし、当院のように小児在宅医療を積極的に行っている医療機関もあります。医療的ケア児の介護で疲弊している方はぜひ、家族のなかで閉じこもらず、いろいろな社会資源や家族同士のネットワークなどに助けを求めてほしいと思います。もし冷たい対応をされたとしても助けを求め続ければ支えてくれる人に必ず会えると思います。困ったことがあったらぜひ、周囲に目を向けてみてください。

編集部まとめ

増加傾向にある医療的ケア児に対する対処法は、家族だけでなく社会全体で考えなければならない問題です。国も法整備を続けていますが、医療的ケア児やその家族だけでなく、社会全体で見守る体制を作れるといいですね。

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