【パリ五輪】SNSで外国人選手&審判を日本語で誹謗中傷 海外の法律で裁かれる? 日本との刑罰の違いを弁護士に聞く

日本人がSNS上で外国人選手や外国人審判を誹謗(ひぼう)中傷した場合、相手の国の法律で裁かれる可能性はあるのでしょうか。弁護士に聞きました。

柔道男子60キロ級で銅メダルを獲得した、スペインのフランシスコ・ガルリゴス選手(右端、時事通信フォト)

【画像】日本より罪が重くなる場合も…これが名誉毀損&侮辱に関する諸外国の“刑罰の違い”です

 パリ五輪に出場している選手や審判をSNS上で誹謗(ひぼう)中傷する行為が問題となっており、中には日本語で外国人選手や外国人審判を侮辱する投稿もあります。

 柔道男子60キロ級の準々決勝で永山竜樹選手を破った、スペインのフランシスコ・ガルリゴス選手のインスタグラムに対しては、日本語で「偽りのメダリスト」「世界史上最も汚いメダル」「殺人未遂をした感想は?」といった投稿が相次ぎました。同選手には、審判が「待て」を宣告してからも絞め技を続けた疑いがあるとして、SNS上で批判が殺到していました。

 また、バスケットボール男子1次リーグ・日本対フランス戦のブランカ・セシリア・バーンズ主審には、日本の河村勇輝選手が相手選手に触れていないにもかかわらず、ファウルを宣告した疑いがあるとSNS上で指摘されました。メディアによると、バーンズ主審のインスタグラムに対し、日本語で「ゴミ審判」「日本の選手たちに土下座しろ」「いい眼科教えてあげようか?」などのコメントが寄せられたということです。

 日本人がSNS上で海外の選手や審判を誹謗中傷した場合、相手の国の法律で裁かれる可能性はあるのでしょうか。誹謗中傷に関する日本と海外の刑罰の違いも含め、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

相手の国の法律が適用される可能性も

Q.まず、日本で他人を誹謗中傷した場合の法的責任について、教えてください。

牧野さん「名誉毀損(きそん)行為、侮辱行為として、民法709条の不法行為による損害賠償責任のほか、刑法230条の名誉毀損罪、刑法231条の侮辱罪といった刑事責任を負う可能性があります。

名誉毀損罪とは、事実を摘示して、公然と他人の社会的評価を低下させた場合に成立する犯罪で、刑罰は『3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金』です。

一方、侮辱罪とは、事実を摘示することなく、公然と他人を侮辱した場合に成立する犯罪です。刑罰は『1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料』です。

日本の刑法の『懲役刑』『禁錮刑』は、2025年6月1日から『拘禁刑』に一本化されます」

Q.では、海外で他人を誹謗中傷した場合、どのような刑罰を科される可能性があるのでしょうか。

牧野さん「例えば、フランスでは他人を侮辱したり、他人の名誉を毀損したりした場合、38ユーロ(約6100円)以下の罰金を科されます。公共の場所における演説や公共の場所で販売された印刷物などによる侮辱、名誉毀損の場合、1万2000ユーロ(約200万円)の罰金刑を科されるため、若干重くなりますが、基本的に罰金刑のみであり、日本に比べると法的責任は軽いと思います。

韓国の場合、原則は侮辱が1年以下の懲役もしくは禁錮または200万ウォン(約22万円)以下の罰金、名誉毀損が2年以下の懲役もしくは禁錮または500万ウォン(約54万円)以下の罰金と、日本とおおむね同じですが、状況によっては刑罰が日本より重くなります。

虚偽の事実の摘示による場合には、5年以下の懲役、10年以下の資格停止(公務員になる資格のほか、選挙権や被選挙権の資格を停止)または1000万ウォン(約110万円)以下の罰金と重くなり、出版物で虚偽の事実を摘示した場合はさらに重く、7年以下の懲役、10年以下の資格停止または1500万ウォン(約163万円)以下の罰金となります。

そして、情報通信網を通して公然と虚偽の事実を摘示した場合には、7年以下の懲役、10年以下の資格停止または5000万ウォン(約542万円)以下の罰金となります」

Q.SNS上で、日本人が海外のスポーツ選手や審判などを誹謗中傷した場合、相手の国の法律で裁かれる可能性はあるのでしょうか。

牧野さん「その可能性はあるでしょう。例えば、日本人がパリ五輪に出場しているフランス人選手やフランス人審判をSNS上で誹謗中傷し、その後、相手から訴えられたとします。フランス国内でも、SNS上に投稿された誹謗中傷の内容が閲覧できる状態であれば、フランス国内における誹謗中傷となり、フランス法で処罰される可能性があります」

 くれぐれもSNS上で他人を侮辱したり、他人の名誉を傷つけたりするのは控えましょう。

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