大河ドラマも中盤を過ぎてくると、主人公を取り巻く人々が次々と去っていく。今回は、まひろにとって大切な人が逝った。
これも、まひろの新たな人生のスタートにつながるのか。
さよなら、宣孝
宣孝(佐々木蔵之介)がこの世を去った。まひろ(吉高由里子)と娘・賢子(永井花奈)のもとに来るときは笑顔でふたりを愛していた。賢子が生まれてから宣孝とまひろは穏やかに、仲睦まじかった。秘密を共有する者同士、というのもあったのかもしれない。
初回からまひろのそばにずっといた宣孝。まひろが宣孝から教わったこと、もらったものは数えきれないほどあるだろう。まひろの父・為時(岸谷五朗)が越前守の職を解かれても、「案ずることはない」という宣孝の存在はなんとも心強い。「自分がいるから大丈夫」と言ってくれる人がいるだけで幸せだ。宣孝の妻であった短い時間は、まひろにとっても少し心に余裕が生まれた時期だったのではないか。
賢子も、宣孝がいなければ生まれなかった。宣孝が再び通ってくれるように、と願うために石山寺に行き、そこで道長(柄本佑)と再会を果たしたのだから。
そんな宣孝の死をまひろが知ったのは弔いの儀も全て終わってからのこと。豪放で快活だった宣孝の姿だけを覚えておいてほしい、という北の方の意向だった。
宣孝の死を知らせに来た死者も、最期の様子を知らないと言う。
妾だから、夫の最期の姿を知ることもできない。そう思うと切ないが、いろんな女性のもとへと通っていた宣孝の、北の方だけしか知らない姿があってもいいのでは、とも思う。
道長の大切な人もまた……
「母として」が今回のサブタイトル。
それぞれが母としてどのような生き方をするのか、というのが描かれた。
印象的なのは詮子(吉田羊)だ。息子である一条天皇(塩野瑛久)との衝突。互いに愛する気持ちはあるものの、長い時間をかけて歪な関係となってしまった。
しかし、詮子が息子を大切に思っていることには変わりはない。「四十の賀」で倒れた詮子。一条天皇が駆け寄ろうとするが、触れてはならない、と一喝。穢れに触れてはならない。あなたは帝なのだから、と。穢れるから亡くなった者に触れてはならない、というのは、一条天皇をより孤独にさせているようにも思うけれど、母としても辛いことに違いない。
そんな詮子のそばにずっと寄り添っていたのは道長だった。互いにとって、かけがえのない存在で、ふと気を緩ませることができる間柄。詮子が亡くなったことによって、道長もまた、拠り所を亡くした。
配信: 女子SPA!