【発酵の日】「発酵食品=腐らない」は正しくない!? 専門家に聞いて分かった、納豆にもキムチにも「賞味期限」がある明確な理由

8月5日は「発酵の日」。納豆やキムチといった発酵食品は「腐らない」と思われがちですが、市販品には長くはない賞味期限が存在します。その理由を専門家に聞いてみると……。

「発酵食品=腐らない」わけじゃない?

【画像】「えっ…納豆って冷凍保存できるの…!?」→できます! 消費者庁“直伝”の冷凍&解凍術がすごかった

 8月5日は「発酵の日」。食品メーカーのマルコメが、発酵食品の魅力を広めるために制定した記念日です。発酵食品といえば、納豆やヨーグルト、キムチ、みそといった身近な食品が思い浮かびます。これらは発酵することによって保存性に優れたイメージがあり、中には「腐らない」と考える人もいるのではないでしょうか。しかし一方で、市販の納豆やヨーグルトには8〜10日前後といった、決して長くはない「賞味期限」が記されています。これについて、「発酵食品なのに日持ちしないのはどうして?」と疑問に思う人もいるかもしれません。

「発酵食品=腐らない」わけではないのでしょうか。多くの発酵食品に「賞味期限」がある理由について、一般社団法人日本発酵文化協会の藤本倫子さん(上級認定講師・発酵マイスター)が解説します。

市販品は発酵を“止めている”?

 そもそも、「発酵」と「腐敗」は、いずれも微生物が糖質やタンパク質、脂質などの有機物を分解してエネルギー代謝を行うことで、物質が分解・変化することをいいます。発酵を担うのは、「3大発酵菌」と呼ばれる細菌やカビ、酵母の仲間です。

 一方で、食材を腐敗させるのも、この発酵菌の仲間たちです。これらは「腐敗菌」と呼ばれています。発酵と腐敗は、人にとって「有益」か「有害」かによって分けられますが、両者の境界線は文化や環境によって異なるものです。

 理論上では、発酵食品が腐敗する可能性は低いといえます。発酵食品が出来上がる過程で発酵菌が増殖し、ここに腐敗菌が入り込むのは難しいからです。しかし、市販の発酵食品の多くは、食品流通における衛生上の問題から殺菌処理がなされ、発酵を“止めている”状態です。そのため、食品が傷みやすくなるのです。

 一般的に、発酵を止める方法としては加熱殺菌(高温短時間殺菌、蒸気殺菌など)が挙げられます。加熱殺菌できないものなどでは、ビタミンB1を追加して、雑菌が増えないようにすることもあります。ただし、市販の発酵食品は、どのように発酵を止めているか不明なものが数多く存在します。賞味期限が必要なのはこうした理由によるものです。

【食材別】腐敗を見極める基準

 発酵食品は基本的に、おいしく食べられる目安である「賞味期限」を目安に食べ切るべきですが、腐敗などを見極める基準は食材別に存在します。

【納豆】

納豆は、大豆を蒸し煮した後、熱々の大豆に納豆菌を加えてパック詰めします。熱々の状態に納豆菌を加えることで、他の菌を殺菌し、納豆菌だけが繁殖できる状態ができます。納豆菌は「温かい温度」と「高湿度」の条件で繁殖し、おいしい納豆が出来上がるのです。

納豆は、食べ頃になったタイミングで温度を下げて発酵を止め、出荷されます。そのため、決して長くはない賞味期限があるのです。しかし、出荷後も納豆菌が残した酵素によって、大豆のタンパク質の分解が継続し、納豆の表面に白い結晶が見えるようになります。これはうま味成分のアミノ酸の一種で、腐敗ではありませんが、納豆の糸引きが悪くなる原因でもあり、発酵の進み過ぎで従来の風味が弱まっている状態です。

なお、アンモニア臭などがしたら傷んでいるサインなので、食べるのを控えた方がよいでしょう。

【ヨーグルト】

変色や異臭があれば、腐っている可能性が高いです。開封後は傷みやすくなるため、早めに食べ切りましょう。長期間保存するとたまる上澄み液(ホエー)は問題ありません。

【キムチ】

乳酸発酵しているキムチは、時間とともに味や食感、酸味の度合いが変化し続けます。自分好みの酸味になったタイミングで食べる人が多く、賞味期限を気にする必要はあまりありません。

一方、「キムチの素」などを使って即席で作られているキムチは、乳酸発酵していないため、賞味期限が短めになっています。

乳酸発酵のキムチは冷蔵保存が基本です。長期保存も可能ですが、あまりにも酸っぱくなりすぎた場合は、炒め物や鍋に入れると、酸味がうまみに変化しておいしく食べられます。

【みそ】

みそは長期間保存しても腐敗しません。しかし、空気に触れると風味が落ちやすくなるため、開封後は表面をラップで覆い、冷蔵庫で保存するのがベストです。

開封後に長期間放置すると、まれに白カビのようなものが表面に発生しますが、これは「産膜酵母」の一種です。食べても問題ありませんが、風味が損なわれるので取り除くのがよいでしょう。なお、熟成が進むことで色が濃くなる場合もありますが、これはうま味成分が増えている証拠です。

 全体として、発酵食品は微生物の力でできています。とりわけ、緑、青、黒、赤などのカビが発生しているものは腐敗の可能性が高いので、食べる前に注意して確認しましょう。

関連記事:

オトナンサー
「オトナンサー」は「ライフ」「漫画」「エンタメ」の3カテゴリーで、暮らしに話題と気づきをお届けするウェブメディアです。Yahoo!ニュース配信中!
「オトナンサー」は「ライフ」「漫画」「エンタメ」の3カテゴリーで、暮らしに話題と気づきをお届けするウェブメディアです。Yahoo!ニュース配信中!