人気作品「アンパンマン」のぬいぐるみやおもちゃを使った「オリジナル人形劇」とも呼べる動画が、YouTube上に無数にアップされている。
アンパンマンやバイキンマンたちがお菓子を食べたり、お医者さんごっこをしたり、いわゆる「ごっこ遊び」をするような微笑ましい内容のものもある。
しかし、非公式であり、法的にはセーフかアウトか不明瞭であるため、「子どもに見せたくない」と眉をひそめる親も少なくない。
ところが、そんな親の心を知らずか、子どもたちは「本家」よりも食い入るように視聴することもあるという。
このような非公式動画をアンパンマンの権利者はどう考えているのか。法的にはどのように判断されるのか、取材した。(弁護士ドットコムニュース・塚田賢慎)
●「無許可でアンパンマンの人形を使った小芝居」呼ばわりの存在
アンパンマンのぬいぐるみを使った「ごっこ遊び」の動画は、YouTubeで「アンパンマン」を検索してみると、非常にたくさん存在することがわかる。小さな子どもにアンパンマンを見せ始めた家庭なら「ああ、アレか」と思ってもらえるだろう。
子を持つ親からは「YouTubeの脱法アンパンマン動画」「YouTubeの低クオリティアテレコ無許可アンパンマン紙芝居」「アンパンマンの人形を使った小芝居」などとSNS上で呼ばれている。
その多くは、ぬいぐるみを動かしながら、人や機械が声をあてる。公式のストーリーでは話すことのできないキャラクターがペラペラ話したり、現実に存在するお菓子を食べ(るフリをし)てみたり、ときには「クレヨンしんちゃん」や「ドラえもん」といった”別世界”のキャラクターまで登場する。もはや本来の物語とはかけ離れたものもある。
しかし、公式の世界観を踏襲しないだけならまだよいかもしれない。グロテスクな造形の幽霊や怪物が現れるなど、子どもに悪影響ではないかと思われる映像もたくさん存在するのだ。
●見せたくない…しかし、子どもはめちゃくちゃ見る。本家より見たがる。
そうした非公式動画の誘引力は凄まじいものがあり、これらの存在を一度でも知ってしまった子どもが、公式のアニメではなく「こっちのほうを見たい!」と主張することもあるという。
YouTubeでアンパンマンの公式チャンネルを見せていたのに、いつの間にかこれらの動画に自動で切り替わっていた。あるいは子どもが成長して勝手にリモコンを操作していることもある。
今の時代、家事や在宅勤務で親が手を離せない状況などにおいて、子どもが静かにしてくれているため、ありがたい存在でもある。
しかし、SNS上では、親たちからの「著作権侵害でBANされないのが本当に不思議」「普通のアンパンマンのアニメよりも単純で理解しやすいのか2歳長女は未だにハマり中」といった不安の声が相次いでいる。
親たちは、公式が認めたわけでもなく、著作権の観点からも「グレー」な動画を見せることに抵抗感を感じているようだ。また、収益をあげていることへの疑問もみられる。動画には、視聴数が100万PVを超えるものも少なくない。
どうしても子どもに非公式動画を見せたくない家庭では、地上波アニメを録画したり、有料の動画配信サービスで正規のアンパンマンを見せているようだ。
配信: 弁護士ドットコム