「声が出ない…」ネットで追い詰められて不安症になった私と、夫の支え/犬山紙子

「声が出ない…」ネットで追い詰められて不安症になった私と、夫の支え/犬山紙子

「生きててくれてありがとう」

犬山:でも、夫はとても優しくて気も遣ってくれるし、顔を見るだけで癒されるんですよ。育児や家事を頑張ってくれて、私が休むことに集中できる環境を作ってくれる。だから感謝しかないわけですが、感謝の気持ちを伝えても……。

劔:僕は全然そういうのが響かないんですよ。


犬山:お互いが不安定なときも愛情は変わらずありました。綺麗事じゃなく心底大好きで、尊敬していて。それはこれまでの彼の優しさや思いやりの積み重ねのおかげですね。だから離婚したいともほぼ思いませんでした。

唯一、離婚したほうがいいのではと思ったのは、私のせいで夫がうつになっているんじゃないかと自分を責めたとき。「自分が夫に対して悪であるならば、大好きだけど別れるしかない」と。まぁそれもカウンセラーさんに話して否定してもらい、すぐ正気に戻りました。

劔:仲はめちゃくちゃ良いんですよ。

犬山:お互い状態が悪くても、ただそこにいてくれたら嬉しい感じです。「生きててくれてありがとう」みたいな気持ちがあって。それは揺るがないものだなと。

お互い、心の病になって得たものがある

――つまり、ふたりの間に大きな愛情や信頼関係があったからこそ、乗り越えられた、と。

犬山:ただ、これは程度だったり症状による部分もあるので、あくまで「私たち夫婦の場合は」という話かと思います。でもやっぱり、いざというときにお互いを信頼したままでいられるのはそれまでの日常が本当に大切なんだよなと。これが夫に毎日「なんで家事全然しねーんだよ!」みたいにキレてたら違っていたかもしれません。

劔:僕の場合は、「僕が人と違う」っていうのを学ぼうとしてくれる人(=妻)によって非常に助けられている部分はあるのかなと思ってます。人とはちょっと違うって感覚をもって生きている人って、なかなか理解されないじゃないですか。

何か不都合があったときに詰め続ける人だったら、僕は潰れてしまっていたと思うんですよ。

犬山:私は、うつもひと括りにできないということを痛感しました。共通しているのはきっちりとプロに頼って、第三者の力を借りる、ということですね。今となっては、なぜもっと早く夫を心療内科に連れていけなかったのか、なぜもっと早く私の怒りっぽさを問題視してカウンセリングを受けなかったのかと思います。

お互いの精神疾患と向き合った先にも「幸せ」ってのはちゃんとあります。そうした時期を過ごすことで、この先何かあっても支え合っていけるなあって土壌が整ったわけです。

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