「肺がんを疑う咳の特徴」はご存知ですか?初期症状・末期症状も医師が解説!

「肺がんを疑う咳の特徴」はご存知ですか?初期症状・末期症状も医師が解説!

肺がんの前兆となる初期症状

初期の肺がんではほとんど症状が表れないことで有名です。初期の場合、偶然胸部レントゲンで指摘され、呼吸器内科や呼吸器外科のある総合病院に紹介されるケースが多いかと思います。そこで影の形や大きさ、その後の経過などによって、どこまで肺がんが疑わしいか、手術切除により診断をつけるべきか、などが検討されます。

肺がんが進行すると現れる症状(末期症状)

以下の症状は必ずしもすべての方に起こるわけではありませんが、症状が起きたときのために事前に知っておくことは重要です。

息苦しさ、首や顔のむくみと息切れ

上記の咳、息切れ、血痰など肺がんが発生した場所(原発巣)やその周辺からの症状に加え、転移した部位に特有の症状が認められるようになります。肺と胸壁(肋骨や肋間筋など息をするときに動く部分)の隙間である胸腔に水がたまって肺が圧迫された場合、息苦しさが起きやすくなります(胸水)。首や顔のむくみとともに息切れが起きている場合、上半身から心臓に向かう血液が流れている上大静脈が、腫瘍自体や転移して腫れたリンパ節で圧迫されている可能性があります(上大静脈症候群)。
抗がん剤でがんが縮小すれば症状が和らぐこともありますが、しばしば不十分であり、咳止め(デキストロメトルファン、ジモメルファンリン、リン酸コデインなど)や医療用麻薬(モルヒネやそれに類するもの。オピオイドと呼ばれる。)が併用されます。また血痰に対しては止血剤の内服や点滴が考慮されます。大量の胸水に対しては胸水をたまりにくくするために胸膜癒着術と呼ばれる処置が勧められることもありますが、行えるかどうかは体調と病状によります。安静にしたり体の向きを工夫したりすると症状が軽減することもありますが、同時に薬をうまくつかって症状を和らげ、通常に近い生活を続けることも大事です。そうすることで日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)を維持することにつながります。具体的な対応は肺がんについて通院中の病院に相談いただくのがよいでしょう。

がん転移部位での痛み

肋骨や背骨、腰骨、大腿骨などへの骨転移、胸壁への浸潤(肺がんが胸壁に食い込むこと)によりそれぞれの部位に痛みを生じることがあります。骨転移の痛みには、痛みを和らげる薬として、NSAIDs(ロキソプロフェン、セレコキシブ、ナプロキセンなど)と上記の医療用麻薬を併用することが多いです。また、骨転移の痛みをやわらげる、進行を遅らせる、転移部の骨折を予防する、などの目的で、部分的に放射線を照射することもあります(緩和的放射線照射、姑息的放射線照射)。特に、背骨のすぐそばを走る太い神経である脊髄が転移により圧迫されているときは、比較的急いで放射線照射の相談を始めます。他に月1回の皮下注射や点滴で骨転移の進行を抑えることもあります。また自分なりに、痛みの小さい体の動かし方を工夫しながら日常生活を送ることで、体力の維持につながります。

嘔気、めまい、麻痺、言語障害、けいれん

肺がんが脳に転移すると、嘔気やめまい、手足が動かしにくい、他人の言葉がうまく理解できない、言いたい言葉が言えない、けいれんする(症候性てんかんと呼ばれる)などが起こりえます。状態に応じて部分的な放射線照射(ガンマナイフなど)や脳全体への照射(全脳照射)が検討されます。また転移巣周囲の正常の脳がむくんでいるときは(脳浮腫)、ステロイドの点滴でそれを和らげる治療も選択肢です。脳への放射線照射では一時的に嘔気や船酔いのような感覚(宿酔)、皮膚炎、症候性てんかんなどが現れることがあります。また全脳照射では、脱毛と数か月後の認知機能低下がありえます。なお症状が軽いときや抗がん剤治療で脳転移が小さくなるときには、放射線治療は後回しにすることもあります。脳転移があると急にけいれんをおこすリスクがゼロでないことから、車の運転は中止するよう勧められます。

口の渇きや飲水量の増加、尿量の増加、食欲低下、意識障害

進行期の肺がんでは、血中のカルシウム値が大きく上昇することがあり、その場合口の渇きや飲水量の増加、尿量の増加、食欲低下、意識障害などが表れます。血中カルシウム値を下げるための点滴が行われることがありますが、がん自体の勢いを抑える治療が最も重要です。血中カルシウムを下げる点滴の副作用としては、発熱による衰弱、骨の痛みに加え、まれながら顎の骨の腐食が起こりえます。肺がん治療が行き詰まっていて次の抗がん剤治療がなく、意識障害によって肺がんによる苦痛が和らいでいる方では、敢えてカルシウム値を低下させない判断が勧められることもあります。

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