シンボルマークの浮き輪をかたどったクッキーに、チョコとバニラのアイスをサンド
※画像はイメージです。掲載商品は発泡スチロール箱でのお届けとなります
“クッキー缶”そのものも、言葉の響きが好きなのも、子どもの頃の原体験から。私が物心ついたときに、いつも贈り物に泉屋東京店の缶入りクッキー「スペシャルクッキーズ」を届けてくだる方がいました。ポクッと歯切れのいいクッキーも、浮き輪が描かれた白と藍の四角いクッキー缶も、緑色が印象的な包み紙や紙袋も、全てが愛おしい存在。家族みんなで分け合ってクッキーを食べ終えたあと、缶は家族それぞれの道具入れに活用されました。母は裁縫箱。父は手紙。姉は筆記用具。私はシールや香り玉や消しゴムなどの宝物。みな自分のスペースに、同じ形の泉屋東京店のクッキー缶がありました。
私たちがいただくクッキー缶には、さまざまな味のクッキーが14種類入っていたのですが、「リングターツ」と名前がついた浮輪の形のクッキーは、年少の私のもとへやってきました。私があまりに喜ぶので、家族も「どうぞ」と優先して譲ってくれていたのです。カレンズ・レモンピール・アンゼリカで彩られた、まるい形のクッキーの愛らしさといったら。食べるとなくなってしまうのがもったいなくて、ブローチにしてずっと身につけていたいと思っていました。
泉屋東京店は、日本で初めてクッキーを販売した伝統あるお店。誕生のきっかけは大正時代までさかのぼります。もともと貿易省だった創業者の泉伊助・園子夫婦は敬虔なクリスチャン。アメリカ人宣教師夫人から、子どもたちのために、栄養価が高く愛情たっぷりのクッキー作りを学びました。当時は高価だったオーブンを買い、クッキーを焼き続けるうちに評判を呼び、昭和2年、自宅の軒先に「泉屋」の看板を掲げたのが始まりです。
現在、スペシャル・クッキーズに入っている焼き菓子は14種類。中でも私がもっとも好きなリングターツは、泉屋のシンボルマークである浮輪と同じ形として親しまれています。浮輪には、母が子どもを思う気持ち、社会貢献への思い、どんな荒波も乗り越えようという強い決意が込められています。
少し前に、そんなリングターツがアイスにアレンジされていることを知って、ファンとして大喜び。バニラとチョコレートそれぞれのアイスクリームが、リングターツでサンドされているのですが、これがまたとびきりのおいしさ!通常のリングターツは歯切れのよさが心地いいのですが、アイスに形を変えるとしっとり感が出て、特別な味わいに。家族と過ごした懐かしくて温かな時間を思い出しながら、夏の日のおやつにほおばります。
取材・文/甲斐みのり
配信: OZmall