徳島刑務所の昼夜間単独室にエアコンも扇風機も設置されておらず、うちわの貸与などしか認められないのは人権侵害にあたるとして、日本弁護士連合会は、受刑者の熱中症予防としてすべての居室にエアコンを整備するなどの対策をとるべきだと勧告した。
日弁連が8月7日の定例記者会見で発表した。徳島刑務所長への勧告は7月30日付で、全国の刑事収容施設と法務省にも勧告書を送付している。日弁連の調査によると、全国の刑事収容施設で2022年までの2年間、のべ34施設で熱中症が発生していた。
●昼夜間単独室には扇風機やサーキュレーターがない
徳島刑務所の昼夜間単独室に収容されていた男性受刑者が、人権救済を申し立てた。
工場で作業する受刑者を収容する居室などには、廊下にエアコンが備えられ、壁掛けの扇風機が室内にあり、扇風機がない居室であってもサーキュレーターが貸与される。
しかし、昼夜間単独室ではそのような整備が一切なく、熱中症対策として、昼間にうちわが貸与されるなどに限られる。また、コップ1杯のスポーツドリンク(平日)か、500ccペットボトルのスポーツドリンクが支給されているだけだった。
男性は熱中症や脱水症状にならなかったが、こうした状況では熱中症になりうる受刑者も出てくると考えて、2021年夏から改善や苦情を申し入れたものの、状況に変化はなかったという。
●自殺自傷防止のため電源コードのついたサーキュレーターは貸し出せず
徳島刑務所は、日弁連人権擁護委員会の照会に対して、自傷行為防止の観点から電源コードのあるサーキュレーターの貸し出しは慎重に判断しなければならず、またコンセントのない昼夜間単独室もあるため、収容者の公平さを担保するため一律のサーキュレーター貸し出しはしていないと回答した。
2024年に入って、徳島刑務所の昼夜間単独室の廊下には、エアコンが取り付けられたという。日弁連の人権擁護委員会は、定例記者会見で「エアコンの取り付けなどが進むが、対応はまだ不十分。徳島刑務所で熱中症対策をきちんとやってください」と呼びかけた。
日弁連が2022年10月、全国の刑事施設に対して直近2年間の熱中症発生を調査したところ、のべ34施設で発生していたことがわかった。
配信: 弁護士ドットコム