難病「ドラベ症候群」の長女が深夜に発作で救急搬送 3児の母の“過酷な日常”とは?

幼い3人の娘を持つ母。ある日の深夜、持病を持つ長女が発作を起こし、救急車を呼びました。夫は不在のため、1人で何もかも入院準備をしなくてはならない母の思いとは…。Instagramで公開された漫画が、「緊急時の様子や母の心情がリアル」と話題になりました。作者の剥がれ鱗さんにお話を聞きました。

漫画「我が家と救急搬送」のカット(剥がれ鱗さん提供)

【漫画本編】難病「ドラベ症候群」の長女が深夜に発作 3児の母が1人で救急要請する様子が過酷すぎた

 難病の子どもを持つ母の思いを描いた創作漫画「我が家と救急搬送」が、Instagramで前後編合わせて約700のいいねを集めて話題となっています。

 幼い3人の娘を持つ母。ある夜、「ドラベ症候群」(※)という持病を持つ長女が発作を起こし、救急車を呼びました。夫が不在のため、1人で入院の準備をする母の大変さと、その思いとは…。同じように難病の子どもを育てる親たちから、共感の声が上がっています。

 この漫画を描いたのは、自身も「ドラベ症候群」の一人娘を育てている、剥がれ鱗さんです。Instagramでエッセイ漫画を発表するほか、Webサイト『kodomoe web』(白泉社)にて、「少し大変で、すっごく幸せ~ドラべ症候群の娘と心臓に毛の生えた母~」を連載中です。

※ドラベ症候群:多くの場合、1歳までに最初のけいれん性発作が起こり、その後も繰り返す小児の難治性てんかん。日本全国に3000人程度の患者がいると見積もられている。

Q.漫画を描き始めたのはいつ頃からですか。

剥がれ鱗さん「娘が2歳の頃です。病児育児はしんどいことが多いですが、それよりも娘との時間で楽しかった、うれしかった気持ちを多く残したいな、と思いながら描いています。

娘がドラベ症候群の診断を受けたばかりの頃、私自身が希望を持ちたくて情報を探したのですが、予後の悪さの情報ばかりが入ってきて、育児に不安が募りました。

しかしフタを開けてみれば、苦しいこともあるけれど、娘と過ごせる時間は本当に幸せ。私と同じように、お子さんがドラベ症候群の診断を受けた人に、『少しでも光が差せば』『育児を楽しんでもらえれば』と思って漫画を描いています」

Q.このエピソードを漫画にした理由を教えてください。

剥がれ鱗さん「このエピソードは、家族会の人の体験をベースにはしていますが、フィクションです。毎年医療従事者を対象とした『てんかん学会』があるのですが、ドラベ症候群患者家族会は、学会で専用ブースを設けさせていただいています。『漫画という分かりやすい媒体を使って、緊急薬に対する家族の気持ちを医療従事者の人たちに知ってもらいたい』と会から依頼を受け、この漫画を作成しました」

Q.ご自身も、作中のエピソードと同じような経験をしたことがありますか。

剥がれ鱗さん「病気が発症したのは、娘が生後4カ月の頃でした。そこから3歳くらいまで、多いときは1カ月間、毎週救急車を呼ぶこともありました。現在はシングルマザーですが、結婚していた頃も夫は家にいないことが多かったので、1人で搬送時対応をすることが多かったです。搬送後はそのまま入院になることも多かったので、玄関には入院セットを詰めた大きなリュックを置いていました。

30分以内に発作を止めないと、脳に大きな障害が残ったり、最悪の場合、命を落としてしまったりすることもあるので、いつも搬送時は焦っていました。この病気を知らない救急隊の人も多いので、緊急性を伝えることに必死でした」

Q.この作品に、どのような声が寄せられましたか。

剥がれ鱗さん「『普段は見えない、搬送時の時系列の様子や家族の心情を感じることができた』という声を頂きました。また、娘の主治医からの『リアルですね…』という言葉が、心に残っています」

Q.今回、ドラベ症候群について初めて知った人に対して、伝えたいことはありますか。

剥がれ鱗さん「以前、ショッピングモールで娘の発作が起きたことがありました。ご迷惑をおかけしてしまったとパニックになって、謝りながら娘を介抱していたとき、周囲の人たちが『大丈夫ですよ』『救急車を呼びましょうか』と声を掛けてくださいました。本当に涙が出るほどありがたかったです。こんな発作があると理解していただけるだけでも、患者と患者家族は生きやすくなります。

この病気の子はてんかんだけではなく、知的に障害があったり、手足に不自由があったりします。そのため、足に補装具を付けていたり、バギーに乗っていたり、転倒時や発作時のために安全帽をかぶっていたり、人によってさまざまです。『こんな病気もあるんだ』『こんな子もいるんだな』と、知ってもらえるとうれしいです。

『周りの人たちに生かしていただいている』と、娘を産んでから日々感じています。私自身、いつも支えてくださる医療従事者の方々、そして娘と関わってくださっている学校や施設の先生方、近隣の方々に、それが当たり前と思わず、きちんと感謝を伝えて生活していきたいな、と思っています」

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