子育ても終わりにさしかかり、仕事に集中できるように
――いろいろな意味で節目を感じる現在を経て、この先、どのように過ごしたいと考えていますか。
黒沢:梅沢はこの作品を特殊メイクの仕事の合間に作っていたので、できあがるまでに2年かかっています。今、新しい台本を書いていると言っていますが、あの人はどういうタイミングでわたしのところへ持って来てくれるのかなという気持ちでいます。ただ、それにわたしが入っているのかどうか、実は特に意識していません。梅沢の作品作りに関しては、彼がこの先も作り続けるのであれば、どのような形でも応援したいと思っています。
――母としてはいかがでしょうか。
黒沢:息子が3人いまして、一番下の三男は高校2年生ですが、手のかからない子なんですね。ですから自分の仕事に集中できていますし、若い頃のようなセリフ覚えもよみがえってきています。ただ、お声がかからなければ現場には行けないわけですから、若い頃のように「仕事来い来い!」ではなく(笑)、自分の人生をしっかり生きることによって、お仕事の話を手繰り寄せられるのではないと、今は思います。
――なるほど、俳優と母親と分けて考えるのではなく、毎日をきちんと生きるということ。
黒沢:そうですね。日々をちゃんと生きていくといことが大事かと思います。ただ、ひとつ欲を言わせていただくとすれば、「大河ドラマに出たい」という子どもの頃からの夢があるので、何年かかっててもいいから呼ばれたいですね。
あとは老婆を演じてみたいです。お母さん役や中年の女性役には挑戦したので、後は何ができるかというと老婆役があるんです。もしくは、この世の生きものでもないものに取り組めたら面白いなと思っています。
柄本明からの助言に「50を過ぎて難しいと感じるように」
――ちなみにその頃は、炎の色は何色になっているでしょうか。
黒沢:今度は白に近いような気がします(笑)。
――達観にも似た境地かも知れないですね。そこにいたるように、日々大切にしている考え方はありますか?
黒沢:柄本明さんに、ただそこにいることだと、教わったことがあります。あることがきっかけで、18歳の頃に教わったんです。俳優はただそこにいる、ただセリフを言う、ということ。これって、すごく難しいんです。若い頃は意識をしていなかったけれど、50歳を過ぎたら、難しいと感じるようになりました。今、一生懸命にやっていますが、難しいということに行きつくんですね。時間がかかってもいいから、その老婆という役柄を通して、ただそこにいられたら、自分が白くなれたらと思っています。
簡単に言うと、「あしたのジョー」のジョーが白くなっているじゃないですか(笑)。あんなふうに、ただそこに自然にいる俳優に到達できればいいなと思っています。
<取材・文/トキタタカシ>
【トキタタカシ】
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。
配信: 女子SPA!
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