消えた麦臼渕 かっぱ伝説の痕跡を追って、JR予土線沿線で現地調査! 【愛媛/宇和島市】

宇和島市三間町元宗地区に伝わる「麦臼渕のかっぱ」伝説

古来から人は、原因不明の現象や正体不明な生き物への「おそれ」や「不思議」を、「妖怪」や「妖精」ときには「未確認生物(UMA)」として描き、怖がったり親しんだりしてきました。

なにげない日常の暮らしの中には、たくさんの謎や不思議があります。

その存在に気付いた人々の豊かな感性が「妖怪たち」を生み出し、言い伝えられてきたのです。

それらが実在するのか、ただの空想の産物なのか……。

いまや動物園の人気者でもある「ゴリラ」や「パンダ」も、その生態が「謎」に包まれていた時代には「未確認生物(UMA)」だったそうですから、かっぱがいても不思議ではない気もしてきましたね。

かっぱって、どんな姿をしているのでしょう?

江戸期の文書の中にも、その姿が描かれています。

作者たちが実際にその姿を見たのか、もしくは伝え聞いたものなのかは不明ですが、「何かに遭遇した」のは確かなようです。

十返舎一九 作・画「河童尻子玉」 寛政10年(1798年)

鳥山石燕 画「百鬼夜行」 文化2年(1805年)

かっぱは、水辺の妖怪。

美しい水資源に恵まれた四国でも、猿猴(エンコウ・エンコ)・河太郎・ガーラなど、様々な名で呼ばれる「妖怪かっぱ」にまつわる伝説が各地に残されていますが、JR予土線二名駅すぐ側にも、「かっぱ伝説」が伝わる地域があります。

「日本最後の清流」として知られる四万十川の上流「三間川」流域にある、宇和島市三間町元宗地区。

昭和57年に刊行された「三間のむかしばなし」には、当時の小学5年生から聞き取ったと思われる「麦臼渕(むぎうすぶち)のかっぱ」が集録されています。

「三間のむかしばなし 民話・伝説」三間町教育委員会・三間町教頭会編(昭和57年)

「麦臼渕のかっぱ」を要約すると………

三間川には所々深い渕があるが、元宗の三間川が突き当たって曲がる所には、特に深い縁になって、こいを始め、川魚の多く生息している有名な麦臼渕がある。

昔ここにかっぱが住んでいて、子どもに相撲を挑んだり、きゅうりを盗んで食べたりと度々悪さをしていた。

三間のむかしばなし「麦臼渕のかっぱ」より引用

また、悪事をして人をからかったり、おさない子を川へ引き摺り込んでシリコダマをぬいたり、時には馬まで引き込んだといわれている。

しかし中には、失敗した話も伝えられている。

ある日、満徳寺(まんとくじ)の住職が、団子などが入った重箱を提げて寺に帰るところ、かっぱが重箱を奪おうとするので、捕まえて寺まで引きずって行き、寺男に命じて麦臼に縛り付けた。

三間のむかしばなし「麦臼渕のかっぱ」より引用

かっぱは寺男がいなくなったのを見計らって、なんとか逃げようともがき、重い石臼に縛られたまま、住処にしていた川の渕まで逃げた。

この話のあと、かっぱの逃げ込んだ渕を「麦臼渕」と呼ぶようになった。

かっぱもこれにこりたのか、これまでのような悪さはしなくなったという。

今では三間川のつけかえ工事によって、麦臼渕は「廃川」となったが、なお昔の面影を残している。

(要約・引用ここまで。わかるように、web上での表記変える)

「三間のむかしばなし」には、よく似たお話がもう一話集録されているほか、「三間町誌」にも、麦臼渕とかっぱの伝説が記されていますが、今回はこの「麦臼渕のかっぱ」をもとに、調査を進めることにします。

このかっぱ伝説、町誌にも載るくらいですから、当時は地元でもなじみの深いお話だったようですが、かっぱが住んでいたという「麦臼渕」は廃川になっていて、かっぱ伝説自体も知る人が少なくなってきているとか。

かっぱのすみか「麦臼渕」は、もうなくなってしまったのでしょうか。

ということは…かっぱはもう、いない?!

「麦臼渕のかっぱ」の謎を追って、宇和島市三間町「元宗地区」に向かいました。

「麦臼渕とかっぱ」の謎を追って、いざ現地へ!

「麦臼渕のかっぱ」伝説が残る宇和島市三間町「元宗地区」最寄りの駅は、JR予土線宇和島駅から4駅目の「二名駅」です。

予土線にコトコト揺られて、やってきました。

JR予土線二名駅に降り立ちました。

青々とした稲の若葉が目に鮮やか!なんて美しい風景でしょう!

「三間川」が流れる宇和島市三間町は、古くから米どころとしても有名で、近くにある「道の駅みま」では、美味しい「三間米」が大人気。

「三間米」を使ったメニューやお弁当も販売されています。

あ!鉄道ホビートレイン!ホントに走ってるんですね。

筆者は愛媛県東予生まれですが、鉄道ホビートレインを生で見るのは初めて!

「なんちゃって新幹線」みたいなかわいい車両が四国を走ってるなんて、この日まで「南予の都市伝説」だと思っていました。

さて今回、ご一緒に「麦臼渕のかっぱ」の謎を追ってくださることになった地元の方と合流し、まずは伝説に登場する「満徳寺」を目指します。

まっすぐな気持ちで、満徳寺を目指します。

関連記事: