『地面師たち』が地上波ではできない3つの理由。業界人が驚く「本当に」攻めている部分

『地面師たち』が地上波ではできない3つの理由。業界人が驚く「本当に」攻めている部分

どの映画会社、テレビ局にも断られている

 2022年に出版された小説『地面師たち』の文庫版あとがきには、大根仁監督が映像化の企画書を映画会社やテレビ局等に持ち込むも、「会社的に絶対に通りません」と不動産会社との関係性によってなかなか受けてもらえなかったという、当時の苦悩が綴られています。


 現に、筆者と親交のあるテレビドラマ関係者からも、小説『地面師たち』のみならず、地面師ものを作ろうとしても、どうしても例の事件が連想されてしまうため企画が通らないという話を聞きました。地面師ものが成立したとしても、『相棒』(テレビ朝日系)などのシリーズ物の中で地面師について軽く触れる程度しかできなかったのだそうです。

 それもそのはず、被害を被ったスポンサー企業を刺激して、広告撤退となったり関係性が悪化してはいけませんからね。『地面師たち』が成立に至るには相当な困難があったことが予想されます。

 そんな大根監督の苦労の末に、Netflixによって配信開始されたこのドラマ。広告収入に寄りかからないNetflixで成立したからこその強みが存分に生かされています。

実在企業の名前が続々。抗議を恐れない表現


 石洋ハウスなど、ターゲットとなった企業は、さすがに小説の通り名前が変えられてはいますが、競合他社として挙げられている東急、三井、森などはそのまま。疑惑が絡んだ不審死について言及する場面でも、かつて存在していた企業・ライブドアの名前がそのまま登場します。

 石洋ハウス内部のごたごたなど、地面師被害に通じる企業側の落ち度もいやらしく描かれ、下手をしたら当該企業から信用失墜するとして抗議が来かねない内容となっています、

 その可能性も作り手は織り込み済みでしょう。前述のとおり、大手テレビ局や映画会社が、実写化を避けたのはそこにあるのですから。つまり、この事件に絡んだ関係各社からの抗議を恐れぬ表現こそ、『攻めてる』と評される所以なのです。


 リアルな名前を出し、事実に即した展開にする――たったこれだけのことですが、実際の名前、あるいはイメージさせる名前を出すことによって、リアリティがより深まっています。そして、今私たちが生きる現実と地続きであることを浮かび上がらせ、よりいっそうドラマの中への没入を手助けしているのです。

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