おなか回りに脂肪がたまりやすいのはなぜ?
【画像】無理なく実行できる! これが「おなか回りの脂肪」を落とす“運動&食事”です
おなか回りについた脂肪が気になることはありませんか。運動をしたり、食事制限をしたりしてもうまく落ちないことがあります。
そもそも、なぜおなか回りに脂肪がたまりやすいのでしょうか。おなか回りにたまった脂肪を無理なく落とすには、どのような取り組みが有効なのでしょうか。ダイエットの際にやりがちなNG行為も含めて、筑波胃腸病院(茨城県つくば市)理事長で消化器外科専門医の鈴木隆二さんに聞きました。
ストレスは脂肪を蓄積させる原因に
Q.そもそも、おなか回りに脂肪がたまりやすいのはなぜなのでしょうか。運動をしたり、食事制限をしたりするなどしても、おなかの脂肪がうまく落ちないことがありますが、その場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。
鈴木さん「体に脂肪がたまる主な原因は、エネルギーの過剰摂取とエネルギーの消費不足です。体は食事から得たエネルギーを使用して生命活動を維持しますが、余ったエネルギーは脂肪として体内に蓄えられます。
その際、体は内臓のほか、内臓近くのおなか回りに、迅速なエネルギー変換が可能な『内臓脂肪』を優先的にため込む傾向にありますが、これは内臓やおなかが体の中心部に位置しており、必要なときにすぐにエネルギーを取り出せるようにするためだといわれています。
また、体質や遺伝によって、おなかに脂肪がつきやすい人とそうではない人がいます。自分だけでなく、家族や親族にもおなかに脂肪がつきやすい人がいる場合、遺伝的要因が関係している可能性があります。
おなかについた脂肪がうまく落ちないのは、主に次の6つの原因が考えられます」
(1)おなかに脂肪細胞が多く存在
おなか回りには脂肪細胞が多く存在するため、内臓脂肪が多く蓄積される傾向にあります。内臓脂肪は皮下脂肪に比べて代謝が活発であり、ホルモンや脂肪酸を放出しやすい性質がありますが、同時に蓄積もしやすいです。
(2)ホルモンの影響
「コルチゾール」というストレスホルモンは、おなか回りに脂肪を蓄積しやすくします。特に食事制限などの慢性的なストレスがあると、コルチゾールの分泌量が増加し、脂肪がつきやすくなります。 コルチゾールは脂肪細胞に作用するため、脂肪を分解する働きよりも蓄積する働きを促進します。
(3)おなかは他の部位よりも血流が少ない
おなか回りの脂肪組織は、他の部位に比べて血流が少ないため、脂肪が燃焼されにくいという特徴があります。 血流が少ないと、酸素や栄養素が脂肪細胞に届きにくくなり、脂肪の分解とエネルギー化が遅れます。
(4)エストロゲンの影響
特に女性の場合、「エストロゲン」というホルモンが脂肪の分布に影響を与えます。エストロゲンの減少は、おなか回りの脂肪増加に関与します。 更年期に入るとエストロゲンの分泌量が減少し、体脂肪が腹部に集中しやすくなります。
(5)高脂肪・高糖質の食べ物を摂取
高脂肪の食べ物や高糖質の食べ物を摂取すると体脂肪として蓄積され、特に腹部に影響を及ぼします。
(6)筋肉量
おなか回りの筋肉量が少ないと基礎代謝が低下し、脂肪が燃焼されにくくなります。そのため、筋肉量が少ないと、安静時のエネルギー消費が少なくなり、脂肪が蓄積しやすくなります。
おなかの脂肪を効果的に落とすには?
Q.おなか回りについた脂肪を無理なく落とすには、どのような取り組みが有効なのでしょうか。具体的な対策について、教えてください。
鈴木さん「食事の栄養バランスや適度な運動が必須ですが、他にも睡眠やストレス管理などが重要となります」
(1)タンパク質を多く摂取し、炭水化物の摂取を抑える
食事の際は、「高タンパク質」「低炭水化物」「適度な脂質の摂取」を心掛けましょう。タンパク質は筋肉量を維持し、満腹感を高めるために重要です。鶏肉や魚、大豆製品などを食事に取り入れましょう。
炭水化物の摂取量を減らすことで、脂肪の蓄積を促進するホルモンである「インスリン」の分泌を抑えることができ、脂肪が蓄積されにくくなります。全粒穀物や野菜を中心に食べることで、精製された炭水化物の摂取を控えましょう。
また、魚油や亜麻仁油などの「オメガ3系脂肪酸」のほか、オリーブオイルなど適度に摂取するのもお勧めです。
(2)有酸素運動、筋力トレーニングをバランス良く取り入れる
ジョギングやサイクリング、水泳などの有酸素運動を定期的に行います。週に2時間半以上の中等度の有酸素運動を目指しましょう。有酸素運動は全身の脂肪を燃焼しますが、特に内臓脂肪を落とすのに効果的です。同時に全身の筋肉をバランスよく鍛えることが重要です。スクワット、プランク、腹筋運動などの筋力トレーニングを週に2〜3回行い、筋肉量を増やすことで基礎代謝を上げます。
(3)良質な睡眠を取る
睡眠不足に陥るとホルモンバランスを崩し、食欲を増進させるホルモンである「グレリン」の分泌量を増加させる一方、満腹感を伝えるホルモンである「レプチン」の分泌量を減少させます。また、睡眠不足はストレスホルモンであるコルチゾールの分泌量を増加させ、脂肪の蓄積を促進します。脂肪の蓄積を防ぐためにも十分な睡眠が必要です。1日7〜8時間を目安に睡眠を取りましょう。
(4)ストレスを管理する
先述の通り、ストレスはコルチゾールというホルモンを増加させ、脂肪の蓄積を促進します。瞑想(めいそう)やヨガ、趣味の時間を持つなどして、ストレスを管理することは非常に重要です。
(5)適度な水分摂取
適度な水分摂取は代謝を促進し、体内の老廃物を排出する助けになります。1日2リットルを目安に水分を摂取しましょう。
さらにこれらの取り組みを継続させることが非常に重要です。その際、「目標設定」「サポート」「記録」がポイントとなります。
明確な目標を設定し、達成可能な小さなステップに分けるとよいでしょう。家族や友人、専門家のサポートを受けることで継続しやすくなるほか、食事や運動の記録をつけることで、進捗(しんちょく)を把握しやすくなります。
配信: オトナンサー