ヒロインを演じる伊藤沙莉(C)GettyImages
歴史エッセイスト・堀江宏樹氏が今期のNHK朝のテレビ小説『虎に翼』を史実的に解説します。
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「サスペンス美佐江」が法律を学ぶ理由は?
先週(第19週)の予告映像で、今週(第20週)から、ついに「原爆裁判」が取り上げられるらしいと知り、今更ながらに驚いたのは筆者だけではないでしょう。ドラマの猪爪寅子のキャリアと史実の三淵嘉子さんの経歴にはかなりの相違点があり、「原爆裁判」はもともとドラマ化するのが難しそうなトピックですから、触れずに終わるのではないか……とも考えていたのですが、やはり脚本家の吉田恵里香先生は最後まで攻めの姿勢を貫くのですね。
ただ、『虎に翼』の「ラスボス」は原爆ではなく、新潟の大地主のお嬢様で、表向きは品行方正な優等生でありながら、裏では同級生たちを束ね、女子高生による売春騒動の元締めだった疑惑が抜ぬけないままの森口美佐江かもしれません。
美佐江は東大に現役合格しており、新潟から東京に戻った寅子との接点が生まれるので、おそらく間違いない気はします。ミステリアスな言動を繰り返す美佐江のネットでのあだ名は「サスペンス美佐江」だそうですが、本当は「サイコパス美佐江」と呼ぶべきキャラのような気も……。
なぜ自分の身体を好きに使って(売春をしては)はいけないのか、なぜ人を殺してはいけないのかという疑問を平然と口にして、寅子を愕然とさせていました。あのシーンを見て、筆者も美佐江が法律を学ぶ本当の理由は、「どこまでなら捕まらないで済むのか」というラインを模索しているのかもしれない……と思って、ゾッとしたものです。
さて、ドラマの最終回予想はこれくらいにして、今回は史実における「原爆裁判」とはどのように進んだのかをお話したいと思います。
配信: サイゾーウーマン