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ガス機器には様々な安全装置がついており、ガスの事故はひと昔前に比べると減ってきています。しかし、ガス機器の老朽化や故障、自然災害などによるガス管の破損によって起きる事故は無くなっておらず、年間300~400件ほど発生しています。
一般家庭で最も多く発生しているのが、ガス漏れによる事故です。今回は、ガス漏れが疑われるときの対策と、ガスを安全に使うための注意点などをご紹介します。
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ガス漏れを疑ったらすべきこと
一般家庭でコンロや給湯器などに使用しているガスには、大きく都市ガスとLPガス(プロパンガス)の2種類があります。
都市ガスは地中を通るガス管を通じて各家庭に供給されるガスで、主な成分は天然ガス由来のメタンです。
LPガスはボンベを各家庭に配送する形で供給されるガスで、主な成分は石油由来のプロパンです。都市ガスもLPガスも、ガスそのものには毒性はありませんが、ガス漏れなどで大量に吸い込むと酸素欠乏症になる恐れがあります。また、ガスに引火すると火災や爆発の危険があります。
経済産業省が公表している都市ガスならびにLPガスの事故情報によると、ガス漏れによる事故は次のような原因で発生していることが分かります。
・ガス機器の部品の老朽化
・ガス機器に接続するガスコードの破損やゆるみ
・車やバイクの住宅への飛び込み事故による、ガス管の破損
・雪の重み(雪害)によるガス管の破損
このほかにも原因不明のガス漏れや、道路工事中にガス管を破損したことによるガス漏れなどが報告されています。
ガスの臭いが室内に充満しているときや、ガス警報器が鳴っているときは、ガス漏れの疑いがあります。落ち着いて、次のような対策をとりましょう。
火を使わない
ガスに引火する恐れがあるため、ガス漏れの疑いがあるときには火気は厳禁です。
・ガスコンロやガス給湯器を使用中であれば、すべて消す
・ライターやマッチなどは使わない
・小さな火花が発生してガスに引火する恐れがあるため、電気スイッチのオンオフや、コンセントの抜き差しは控える
ガスの臭いが充満しているときに、換気扇のスイッチを入れることはやめましょう。火花が発生しガスに引火し、火災や爆発につながる危険があります。ただし、すでに換気扇がついている場合には、消さずにそのままにしてください。
ガス警報器が鳴っている場合に、音を止めようとコンセントを抜くこともやめましょう。
窓を開ける
ガスの臭いがするときは、窓を大きく開けて換気してください。部屋の対角線上にある窓やドアを開けることで、空気の通り道ができて、より効果的に空気を入れ替えることができます。
LPガスの主成分であるプロパンは空気より重く、下のほうに溜まります。足元の空気が出ていくように、掃き出し窓を開けましょう。
一方で、天然ガスのメタンを主成分としている都市ガスは空気より軽く、天井付近に集まります。天窓や高窓がついている場合には開放するとよいでしょう。
なお、屋外からガスの臭いがするときには、近隣でガス漏れが発生している恐れがあり、安全のために窓を閉めたほうが良い場合もあります。消防などから避難指示が入るかもしれませんので、すぐに避難できるように準備をしておきましょう。
ガス栓・メーター栓を止める
ガス機器の周辺には、ガスを供給するガス栓(元栓)があります。ガス漏れが疑われるときにはガス栓を閉めて、ガスの供給を止めましょう。
キッチンのガスコンロが置き型タイプの場合には、ガスコンロの奥や左右にゴム製のガス管でコンロとつながっているガス栓が見えるはずです。ビルトインタイプのガスコンロの場合には、コンロ下の収納スペースにガス栓があることが多いので、確認してみてください。
ガス給湯器にもガス栓がついています。ガスコンロや給湯器本体の経年劣化、故障などが原因のガス漏れであれば、ガス栓を閉めることでガスが外に漏れ続けるのを止めることができます。
メーター栓とは、住宅の外側に設置されているガスのマイコンメーターの近くにあるガス栓のことです。ガス漏れの疑いがあるときにはこのメーター栓も閉めましょう。
ガスはメーター栓を通って、住宅内のガス栓まで供給されるので、その間のガス管の破損などがガス漏れの原因であれば、メーター栓を閉めることでその先にガスが供給されるのを止めることができます。
ガスメーターは、普段は住人自ら操作することのない場所ですが、大地震の発生時などにはメーターの安全装置が働いて自動的にガスの供給がストップすることがあります。もしもに備えて、あらかじめ場所を確認しておきましょう。
LPガスの場合には、ガスボンベについている容器バルブも閉めるようにしてください。閉め方は、時計と同じ右回りです。
マイコンメーターの復帰方法については、こちらでも詳しくご紹介しています。
「ガスの復帰は自分でできる!マイコンメーター復帰方法を詳しく紹介」
ガス臭い場所から避難する
都市ガスやLPガスは本来無臭ですが、ガス漏れに気づきやすくするために、あえて卵や玉ねぎが腐ったような臭いに例えられる独特の臭いをつけています。
このような独特なガス臭さがするときは、どこかでガス漏れが発生している恐れがあります。火を消す、窓を開ける、ガス栓を閉めるなどの対策をとったのち、ガス臭い場所から離れて、ガス事業者に連絡してください。
ガス業者に連絡する
ガス事業者には、消費者がガスを安全に使えるよう定期的に点検・調査する保安業務が義務付けられています。ガス漏れなどの事故が発生したときの緊急保安もガス事業者の仕事です。ガスの緊急車両はサイレンを鳴らして現場へ急行することが認められています。
都市ガスの事業者もLPガスの事業者も、一般の連絡先とは別に、24時間365日対応する緊急連絡先を設けていますので、ガスの臭いがするとき、ガス警報器が鳴っているときは、速やかに連絡してください。
緊急時の連絡先は、住宅の外側にあるガスメーターに注意書きとして書かれていることが多いです。または、「ガス事業者名 緊急連絡先」などで検索してみてください。電話がつながったら、落ち着いて名前と住所、現場の目印となる建物や、現在の状況などを伝えましょう。
なお、都市ガス事業は1995年から段階的に自由化が進められ、2017年からは家庭用の小売りも自由化されて、様々な事業者が参入しています。しかし、ガス管は既存の都市ガスなどの大手ガス会社のものを利用しているため、ガスの供給会社とガス管の管理会社が異なることがあります。
地域ごとのガス管を管理している事業者を「一般ガス導管事業者」と呼び、ガス漏れなど緊急時の問い合わせは、この一般ガス導管事業者が対応します。
ガス漏れは火災・爆発の危険性がある
都市ガスやLPガスに使われているガスは可燃性があり、着火源があるときに、酸素と結びついて燃焼します。ガスコンロは点火スイッチを押したときに小さな火花が出て着火源となり、ガスに引火する仕組みです。
ガス漏れ時に、たばこやライターなどの火気や、電化製品のスイッチを操作するときの小さな火花などがガスに引火すると、大きな火災や爆発事故につながる危険があります。
また、ガス機器の故障や、ガスを長時間使用した際などに起こる、ガスの不完全燃焼による一酸化炭素(CO)中毒にも注意が必要です。ガスの不完全燃焼が起こると、毒性の強い一酸化炭素が発生します。一酸化炭素(CO)中毒の症状には頭痛、めまい、吐き気などがあり、重症化すると意識を失い、命を落とす危険があります。
配信: 防災ニッポン