単なる2世俳優がいれば、そうではない独自の魅力を持った2世俳優もいる。
松崎しげるの息子である俳優の松谷優輝は、間違いなく後者のタイプだと思う。まだまだ出演作品は多くないが、でも着実に歩を進めようとする泥臭さを感じるのだ。
イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、単なる2世俳優ではない松谷優輝の魅力を考える。
スター松崎しげるの登場
2024年8月1日に放送された『ダウンタウンDX』(日本テレビ)の「新旧2世芸能人大論争SP」最初のテーマ「2世でちょっと損しました」が面白かった。
松崎しげるを父に持つ俳優の松谷優輝は、卒業式の入場曲が「愛のメモリー」だったというのだ。「愛のメモリー」は1977年にリリースされたいわずもがなの松崎ヒットナンバー。
息子である松谷のこのエピソードを聞いて、筆者もちょっと既視感がある。というのも、筆者にとっては日本大学芸術学部の先輩にあたる松崎が、(松谷とは反対に)日芸入学式直後の式典で代表曲を熱唱しながら入場する姿を好奇の眼差しで眺めたことがあるからである。
確か音源はカラオケ。なのに生バンド演奏を従えたかのように豊かな声量が会場内を満たす。ステージを目指して歩きながら歌唱する、スター松崎しげるの登場を見送る体験は、すごく贅沢なものだったと改めて思う。誰でも知る自分の父親の曲が卒業式でかかるなんて、そりゃむず痒いだろう。
誰でも楽しめる演劇を届けるエンタメ集団
父・松崎しげるの出身校である日芸つながりだと、松崎と同じオフィスウォーカーに在籍しながら、松谷が所属する劇団ショーGEKIは、日芸出身者を中心に1999年に旗揚げされた。演劇世界の老舗のひとつである。
同劇団が主に公演を行うのが、本多劇場グループの「劇」小劇場。いわゆる小劇場演劇シーンは、ゼロ年代に昔ながらの新劇の翻訳劇から現代口語演劇がトレンドになった。2010年代はそれがデフォルト化しながら、2020年代まであらたな表現性が模索されている。
ショーGEKIは、そうした小劇場シーンの変遷の中で25年近く活動を続けてきたが、彼らが志向する演劇世界はかならずしもシーンのトレンド感に左右されるものではない。迫力ある殺陣からお笑いまで幅広く誰でも楽しめる演劇を届けるエンタメ集団なのだ。
配信: 女子SPA!