強要罪になる言葉は?脅迫罪・恐喝罪になる言葉との違いも解説

強要罪になる言葉は?脅迫罪・恐喝罪になる言葉との違いも解説

3、強要罪になる言葉・ならない言葉の例

つい感情的になって無意識のうちに強要罪になる言葉を使ってしまうことがあるかもしれません。

ご自身では強要罪にならないと考えている言葉でも、実は強要罪になる言葉に該当し強要罪が成立する可能性があります。

ここでは、強要罪になる言葉とならない言葉を確認していきましょう。

(1)強要罪になる言葉

強要罪が成立するには、単に相手を脅迫するだけでなく、「脅迫」を用いて「人に義務のないことを行わせ」または「権利の行使を妨害した」ことが必要です。

強要罪になる言葉としては以下のようなものが挙げられます。

秘密をバラす

「この家に住み続けないとお前の裸の写真をばらまくぞ」

→「お前の裸の写真をばらまくぞ」という脅迫を用いて「この家に住み続ける」という義務のないことを行わせており、強要罪になり得ます。

「取引先との間の裏金をバラされたくなかったら今ここで土下座しろ」

→「裏金をバラす」という内容の脅迫をし、「土下座する」という義務のないことを行わせており、強要罪になり得ます。

「〇〇課長との不倫の事実をバラされたくなければ今日の会議に出席するな」

→「不倫の事実をバラす」という内容の脅迫をし、「会議を出席する」という権利の行使を妨害しており、強要罪になり得ます。

大切な人に危害を加える

「妻子に危害を加えられたくなければこの書類にサインしろ」

→「妻子に危害を加える」という脅迫をし「この書類にサインをする」という義務のないことを行わせており、強要罪になり得ます。

「もしこの仕事をしないのであれば、お前の家族がどうなるかわからないぞ」

→家族に危害を加えることを暗示する脅迫をし、「この仕事をする」という義務のないことを行わせており、強要罪になり得ます。

大切なものを傷つける

「お前が飼っている犬が無事でいてほしいなら、俺の言うことに従え」

→「犬を傷つける」旨の脅迫をし、「言うことに従う」という義務のないことを行わせており、強要罪になり得ます。

「この条件をのめないなら車を傷だらけにするぞ」

→「車を傷だらけにする」旨の脅迫をし「この条件をのむ」という義務のないことを行わせており、強要罪になり得ます。

暴力をふるう

「痛い目に遭いたくなければさっさと〇〇まで行ってこい」

→「痛い目に遭わせる」旨の脅迫をし「〇〇まで行く」という義務のないことを行わせており、強要罪になり得ます。

「この借用書を作成しないなら、お前を歩けなくさせてやるぞ」

→「歩けなくさせてやるぞ」という脅迫をし、「借用書を作成する」という義務のないことを行わせており、強要罪になり得ます。

金銭を奪う

「有り金を取られたくなければ、今ここで土下座しろ」

→「有り金を取る」旨の脅迫をし「土下座をする」という義務のないことを行わせており、強要罪になり得ます。

「この金を返してほしければ、自分が悪かったと謝れ」

→「金を返さない」旨の脅迫をし「自分が悪かったと謝る」という義務のないことを行わせており、強要罪になり得ます。

移動をさせない(身体の自由を奪う)

「この部屋から出してほしければ、〇〇のパスワードを教えろ」

→「この部屋から出さない」という内容の脅迫をし「〇〇のパスワードを教える」という義務のないことを行わせており、強要罪になり得ます。

「家に帰りたかったら〇〇会社から何と言われたのかをここに書け」

「家に帰さない」という内容の脅迫をし「〇〇会社から何と言われたのかをここに書く」という義務のないことを行わせており、強要罪になり得ます。

(2)罪とならない言葉

強要罪になるかどうかは、その場の状況や相手との関係性によっても異なります。

たとえば、「〇〇しないと殺すぞ」というような言葉を言われたとしても、バラエティー番組内で和やかな雰囲気の中、信頼関係のあるお笑い芸人同士の掛け合いの中で発せられたような場合には、(道義上の問題や教育上の問題はともかくとして、)通常言われた人が恐怖を感じることもなければ、相手の言うことに従わないといけないと考えることもないといえます。これに対し、同じ言葉であっても、特段信頼関係がない中で、双方何らか揉めているような状況で言われた場合は、通常言われた人が恐怖を感じて相手の言うことに従わざるを得ないと考えてもおかしくはありません。このように、その場の状況や相手との関係性によって、畏怖するかどうかや義務のないことを行わざるを得ないのか等が異なります。

また「警察を呼ぶぞ」など、発言内容が正当な権利行使に当たる場合がありますが、たとえ発言内容自体が正当な権利行使に当たる場合でも、実際には権利行使(警察を呼ぶ)意思がなく、「警察を呼ぶぞ」という言葉を契機として人に義務のないことを行わせたり、権利の行使を妨害したりする目的がある場合は、強要罪が成立し得ます。

4、強要罪が認められた事例

さて、ここからは実際に強要罪が認められた事例を見ていきましょう。全く同じ事案が発生することはありませんが、強要罪が成立する具体的なケースとしてイメージしてみてください。

(1)内部通報があった際に、内部通報者であろうと考えた者に対して「絶対潰す」「辞めさせるまで追い込むぞ」などと言って脅迫したケース

被告人が、自身の二男に関する内部通報を行ったのが被害者なのではないかと考えて、被害者に対し、「局長の名前が載っちょったら、そいつらは、俺が辞めた後も絶対潰す」「辞めさせるまで追い込むぞ」等と言い、被害者が内部通報を行ったことを直ちに認める等しなければ、または後に被害者が内部通報を行ったことが明らかになった際には、郵便局長を辞めさせるなどする旨を伝え、内部通報を行ったことを認めさせようとしたけれども局長は認めなかったという事案において、強要未遂罪の成立が認められました。

(2)出所したら被害者のところに行って被害者を殴り、殺してしまう可能性が高いといった旨の手紙を警察宛てに郵送して脅迫したケース

ストーカー規制法に関する警告を受けていた被告人が、警察署宛てに、出所したら被害者のところに行って被害者を殴り、勢いで殺してしまう可能性が高いといった旨の文章を記載した手紙を郵送して、被害者に対して金銭の返還や謝罪等をさせるように求めたけれども、被害者はこれらの行為をしなかったという事案において、強要未遂罪の成立が認められました。

なお、被告人は警察に対して手紙を郵送したのであって、被害者に対して直接脅迫したわけではありませんが、警察を通じて被害者に手紙の内容が伝わる可能性が高く、被告人はこれを期待して警察に手紙を出したと認定され、強要未遂罪の成立が認められました。

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