7、モンスターペアレントを経験した教師たちの声
続いて、実際にモンスターペアレントに悩まされた経験のある教師たちへの調査結果に基づき、モンスターペアレントの言動を教師が受けた影響ごとにランキングしています。
日ごろの心構えとして、お役立てください。
(1)経験した教師の数が多いモンスターペアレント言動ベスト3
これらは教師であれば一度とならず何度も経験があるのではないでしょうか。
親の意識の低さが主な原因ですが、同じことでも親によっての心情は様々です。
各事案ごとに丁寧に保護者の意見を聞いていく必要があります。
1位 子供の非を認めない、小さな怪我などで大騒ぎする
2位 給食費の未払い、欠席の連絡をしない
3位 運動会での飲酒・喫煙、授業参観中のお喋り
(2)教師たちが傷ついたモンスターペアレント言動ベスト3
教師や学校にクレームを付けてくるモンスターペアレントの根本的な思考は、どのような事象においても「すべて教師・学校に全て非がある」なのです。
それに一切の理屈や論理性は無く、事実の是非にかかわらず一方的に教師や学校を責め立てたり理不尽な振る舞いを行います。
これにより、心に傷を負う教師は少なからず存在するのです。
その要因となるモンスターペアレントの言動は、以下の通りです。
1位 子供の非を認めない、小さな怪我などで大騒ぎする
2位 実際にはないのに子供がいじめを受けていると認識する
3位 給食費の未払い、欠席の連絡をしない
(3)教師たちの仕事への支障ベスト4
モンスターペアレントの言動は多忙な教師の時間を奪うとともに、時として児童・生徒の指導や保護者への対応について必要以上に委縮してしまうことがあります。
1位 保護者の対応に時間がかかる
2位 精神的に参ってしまう
3位 保護者への説明責任を過度に気にしてしまう
4位 児童・生徒への指導を遠慮してしまう
8、モンスターペアレント対処法
現在は、教職に就いている以上、モンスターペアレントに遭遇するリスクは避けて通れない世の中になったと言っても過言ではないでしょう。
以下では、実際にモンスターペアレントと対峙することになった場合にとるべき対応についてご説明します。
これは、市民からクレームを受ける役場の人やトラブル対応時の警察のマニュアルなどをベースに作成していますので、とても実践的です。
(1)言いたいことを全て聞く
モンスターペアレントに限らず、クレームをつけるということは何かに対して不満を抱えて怒っている、つまり感情が高ぶっている状態と言えます。
対処法として重要な点は、まずは相手に不満や怒りを思いのままに吐き出させ、最後まで話を聞いてあげることです。
相手によっては要求や話の内容が理不尽そのものだったり支離滅裂だったり、同じことの繰り返しだったりと、聞いていることが辛く感じることもあるかと思います。
しかし、ここで全てを吐き出させておくことで相手は不満やストレスが幾分か解消され、その後は多少冷静になることが期待できます。
このときに注意すべき点は、絶対に話の腰を折ったり反論したりしないことです。
これにより火に油を注ぐこととなり話が余計に複雑化することがあります。
話を聞くときは、相槌を打つ程度の反応に留めておきましょう。
(2)複数で対応
クレームは、複数で対応することが鉄則です。
その際は、話を聞く人・記録だけ取り何も話さない人と、事前に役割分担を決めておくと良いでしょう。
1人で対応する場合と異なり心理的に楽になることに加えて、無言で内容を記録する人がいることは相手に対して心理的な圧力をかけることにもつながります。
(3)話し合いは記録すべし
もし後で本格的な争議にならざるを得なくなった場合、それまでの記録はあなたの正統性を証明し、相手方の対応に非がある場合の立証に大きな助けとなります。
記録するツールはメモ帳などに加えて、ICレコーダーもおすすめです。
音声による記録は、肉筆のメモよりも証拠能力が高いとされる場合があります。
また、もし相手がエスカレートして暴力的な言動が目立つ場合は、会話を録音する旨を伝えることで、相手を静めさせる効果も期待できます。
さらに、仮に相手がその場でメモなどの記録を取ることを認めなかった場合は当然に自分の記憶が頼りとなります。
複数以上で相手の話を聞くことによって、事後に記録を作成する際に聞き違いや記憶違いなどによる錯誤のリスクを減らすことができます。
(4)言い分の中で、対応すべきことと対応すべきでないことを明確にする
教師や学校はすべての児童・生徒に対して公平に接することが基本ですが、モンスターペアレントは自分の子供に対する特別扱いを要求してくることが多いものです。
例えば、「通知表の数値を直せ」や「子供のクラスや席を指定させろ」などです。
たとえ早くその場を収めたくても、このような要求に対しては決して屈してはいけません。
それを認めると、教師や学校としてのルールや原則が崩れることになるからです。
これに限らず、モンスターペアレントからの要求に対しては対応できること・できないことを必ず理由とともに明確にしておいたうえで、対応できない要求については毅然とその旨を伝えましょう。
(5)謝罪すべきことがある場合は、その範囲を限定して謝罪する
モンスターペアレントからのクレームには、時として明らかに教師や学校の非に起因するものがあるかもしれません。
この場合は相手がモンスターペアレントだったとしても、素直に謝罪しましょう。
ただし、その際は「~の件につきましては、申し訳ございませんでした。」と謝罪する範囲を明確に限定しておくことが大切です。
なぜなら、何について謝罪するかをはっきりさせておかないと複数の要求を突きつけていた場合のモンスターペアレントは、自分の要求すべてが認められたと勘違いしてしまう可能性があるためです。
9、モンスターペアレントを生まない学校等とは
モンスターペアレントを生まないために、教師と学校はどのような自助努力が必要なのでしょうか。
ぜひとも自責の念を以ってお読みください。
(1)不信感のない学校であること
体罰、いじめの隠蔽など、保身とも思われる学校等のニュースが後を絶ちません。
隠蔽とも取れる行為は、子供に対する教育的保護、人権保護のもと行われることが多いと思いますが、学校等は治外法権ではありません。
難しい判断ですが、適切に情報を開示し、問題に関わる家庭だけでなく、学校等を支える他の保護者との風通しをよくしておかなければなりません。
また、教師同士、または私立においては現場教師と理事などの経営者の「意見(方針)の齟齬」は、保護者に不快感と不信感を与えます。
伝統のある学校などでは特に、大変難しい問題とは思いますが、注意すべき点でしょう。
(2)家庭教育を尊重すること
学校等と家庭の関係は、「子供の教育」を中心として対峙する関係です。
男と女、大人と子供、のように、立場が対立する関係において良好な関係を保つ秘訣は、「互いに尊敬し合うこと」。
学校が、学校の教育があるからこそ人間が育つ、などと学校至上主義の考えであったり、生徒の素行が悪いのは家庭環境が悪いから、などと家庭教育の不行き届きを心の中で指摘している場合は、良好な関係に至る素質を欠くと言えるでしょう。
人間の成長には、家庭における教育も大切です。
どのような家庭であっても、学校等は、家庭教育を尊重することが大切です。
(3)保護者とのコミュニケーションを積極的に取り入れている
全体的な保護者会、個人面談は基本ですが、実際、保護者が子供のトラブルを相談したい場合は、特別に学校にアプローチをしなければなりません。
「いつでもどうぞ」と口で言っているだけでは、「忙しそうで話しかけづらい」となりがちで、実際にアクションを起こしても「忙しいからまたあとでと言われた」「電話をかけてもいつも不在」などという状況になることはよくあります。
保護者とのコミュニケーションに対し、積極的に制度として導入することがが望まれます。
10 、モンスターペアレントでトラブルになった時は弁護士へ!
学校や教育委員会ではモンスターペアレントとのトラブルを解決することが難しいと判断した際は、ただちに弁護士に相談することを強くお勧めします。
弁護士はあなたや学校の代理人として、モンスターペアレントに不当な要求をやめるよう交渉します。
経験に裏付けられた交渉力と教師や学校が持ち合わせることの難しい法的な知識を駆使しながらモンスターペアレントと交渉しますので、弁護士を介在させることにより今までと違う結果が期待できます。
また、最終段階として損害賠償請求訴訟や刑事告訴を踏み切る場合も、あなたや学校に正当な結果をもたらすために弁護士は裁判や捜査機関とのやり取りを適正に行います。
モンスターペアレントといえど、子供の保護者です。
弁護士を介在させることで、保護者との関係が完全に破たんしてしまうと懸念するかもしれません。
しかし、一線を超えているモンスターペアレントとの関係よりも、それによりあなたが直面している問題を解決することを優先していただきたいと思います。
まとめ
教師という立場上、相手がモンスターペアレントと言えど子供やその保護者に起因するクレーム等は、同僚や上司を含め相談することを憚ってしまうこともあるかと思います。
しかし、殊にモンスターペアレントという教師にとって対応が難しい問題については、
「一人で悩まない・一人で対応しない・誰かに相談する・組織で対応する」
が原則です。
場合によっては警察や行政、さらには弁護士などの専門家に相談することを躊躇してはいけません。
そして、教師であるあなたには子供やその保護者に対するさまざまな義務があると同時に、モンスターペアレントからの理不尽な要求や暴力的な言動から身を守る権利があることを忘れないでください。
これまでも、モンスターペアレントの無茶な要求を呑むことで問題を拡大させてしまったり、モンスターペアレントにより教師が心の病や自殺に追い込まれた不幸な事例が多々あります。
本コンテンツをお読みのあなたにはこの悲劇を決して繰り返して欲しくありません。
本コンテンツにまとめた適正な対応により、あなたがモンスターペアレントに屈しないこ とを切に願います。
監修者:宮本健太弁護士
【経歴】
立教大学法学部卒業
東京大学法科大学院修了
司法修習(東京)修了
【専門分野】
交通事故のほか、労働災害事件、夫婦間の問題、労働問題などの一般民事事件を主に担当しています。
ご依頼者様の利益を最大化させることを念頭に、職務に取り組んでおります。
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