妻の怒りポイント
ヒステリックに放たれる言葉を拾い集めて要約すると、療法のよし悪しではなく、「自分が否定された」というのが怒りのポイントであった。夫婦関係や育児のなかで積み重なってきた、わだかまりがあったのだろうか。
「そんなつもりはない。いつも感謝している。でもいまはとにかく娘がつらそうだから……と必死に説得し、なんとか病院に連れていくことができました」
その後、ネットで見かけたホメオパシーの情報では、“同種療法”という考えのもと「火傷は温める」「熱中症には熱い風呂」という過激なものもあった。
「幸い妻はそこまでディープな実践はしていなかったと信じたいですが、もし子どもたちが……と想像してしまい心底怖くなるんです」
妻が「自然な育児」に傾倒していったのは、もともとの方針に加えて「ママ友コミュニティ」の影響が大きかった、ダイスケさんはふり返る。
産後に夫婦で参加した、自治体の育児教室。そこで親しくなりママ友となったグループが、「オーガニックな子育て」を発信するグループであった。そのママたちは育児中でもバッチリオシャレをキメ、立派でセンスのいい家に住んでいた。
ママ友たちのキラキラSNS
中心人物の家に頻繁に集まり、オーガニックの講習会に出かけたり、アロマクラフトを楽しんだり、ヴィーガンおやつを作ったり。「免疫を高めよう! 能力開花!」と謳って、ゴマ油でベビーマッサージしている写真をSNSにアップしたり。
ダイスケさんはそれを”キラキラ発信”と表現する。
「妻も感化され、SNSに自然派育児生活みたいなノリの発信が多くなりました。体は食べたものでできている、病院に行く前にママができること、キレない子どもの育て方、子どもの脳を育む本物の~、みたいな。子どものためにやっているという前提はありますが、自己実現の要素が増えてきたんですよね」
なかでも一番違和感を覚えたのは、子どもをアクセサリーにしているように見えたことだという。
「うちの子カワイイでしょう? という気持ちはわからなくもありません。でも、こんな育児の成果が……というノリも感じられ、すごくイヤだった。妻たちのそういう活動を見ていると、平凡なお母さんにはなりたくない、クリエイティブでおしゃれなママになりたいという、ふわっとした願望を感じましたね」
ダイスケさんも積極的に子育てしていたので、そうしたママ友メンバーの一部と、いまでも交流があるという。付き合いのなかで、それぞれがまた違う沼にハマっている様子も見られた。
「オーガニック系から、スピリチュアルにハマっていったママ友もいます。そのママ友Aさんは、夫よりオーガニック仲間のほうが自分を認めてくれると、話していました。寄り添いの精神が、自分を救ってくれた。自分にもお役目があるはずだ……と、次第にスピリチュアルの世界へ流れていったようです。いまでもたまに会うと、前世がどうとか話しています」
そのママ友から「神に導かれて書いた」と、自費出版の本を渡されたこともある。しかしスピリチュアルに興味がないダイスケさんは、数ページで挫折してしまった。
配信: 女子SPA!