ダウン症児のママに【モデル・金子エミ】がどうしても伝えたいコト

第3回 パーツモデル・金子エミにインタビュー
パーツモデルの金子エミさんが、ノンフィクション・コミックエッセイ『美容家ママとダウン症カイトの世界水泳奮闘記! 世界は君のもの』(オレンジページ、まんが・小林裕美子)を出版。離婚、子宮がんの疑い、長男・カイトくんの子育てと、波乱万丈な経験を持つ金子さんが、ダウン症児を抱えるママたちに、どうしても伝えたいメッセージとは…?

●カイトはポジティブな私を選んで生まれてきた!

「私は根っから能天気なので、何事もいい方にしか物事を考えられないんですよね。子どもたちのことも、もうちょっと心配すればいいんでしょうけど、能天気じゃないと生きていけないんです…私(笑)。カイトがダウン症だと聞かされて悲しんで泣いていたのも、本当に少しの期間だったと思います。もしもダウン症が治るならいろいろ考えるだろうし、悩むと思いますが、治らないのにそこで考えても時間がもったいないと思ってしまうんですよね。クヨクヨしてもしかたがないし、やらなきゃいけないことはたくさんある。前向きでいた方が人生楽しいので、自然と前向きになる事柄を探していたような気がします。私がポジティブだからこそ、カイトも私を選んで生まれてきたのかもしれないと…」(金子氏 以下同)

金子エミ

そもそも、あまり悩んだことがないと語る金子さん。子育てには、悩むことよりももっと大切なことがあるという。

「子育てに関して、あまり悩んでも…と思いますし、まずは子どもを信頼することが大切なのではないかと。悩みそうになったら、ジムやスパに行って、その問題から全然離れちゃいますね(笑)」

「ダウン症の子どもを抱えているママたちは、積極的にドンドン外に出た方がいい!」と笑顔で語る。

「外の刺激を受けた分、子どもの成長につながるし、小さい時にどれだけ新たな刺激を受けたかによって、その後の成長の勢いが違うんじゃないかなと感じています。ダウン症の子どもは筋力が弱いので、だからこそ、できる範囲でスポーツに触れさせてみるといいのではないでしょうか。実際、ダウン症で心臓の手術をしていても、水泳で世界大会に進んでいる子もいますから」

●ダウン症児の子育ては普通の子育てと一緒

カイトくんを育てることは、普通の子育てと一緒だと語る金子さん。

「健常者の子と比べて、いろんな面がちょっと遅いだけなんですよね。カイトは、髪も長くないと嫌で、ドレスも好き。レディ願望があるんですけど、私はそんな部分もすべて認めていて、“彼がハッピーならいいんじゃない?”と思っています。ダウン症児のお母さんたちは、みんなこう言います、“子どもがハッピーならいいよね”と。でもその価値観は、障がいがあるないに関わらず、子育てで一番大切なことなのではないでしょうか。原点を忘れずに、ありのままを受け入れる。だってカイトは、ありのままでしか生きられないのですから…。そして最近心から感じます。いつも自分の気持ちに正直に生きているカイトは、つくづくハッピーな人なのだと…」

最後に、自身の書籍についてこう語った。

「これは“障がい感動まんが”じゃなく、“普通の子育てまんが”だということを伝えたいです。親はどうしても求めすぎてしまうので、もしも迷ったら…子どものあたり前を褒めて、彼らがいつもハッピーでいることだけを心がけていれば、絶対に間違いない。そして子どもたちが、楽しいことややりがいを見つけることはとても大事です。本人が楽しいのが一番! いろんなことを経験させて、親子でハッピーでいたいですね」

金子さんのインタビューから感じたのは、“子育て=シンプル”であるということ。もしも子育てで悩んだら…期待や不安をそぎ落とし、もっともっとシンプルに考えれば、物事は意外とすぐに解決するのかもしれない。そしてそんなママたちのシンプルな考え方が、やがては子どもたちに伝承され、孫の代にまで良い影響をもたらすことは十分考えられる。嘘や見栄を忘れ、ありのままに生きる金子さんの子育て学は、とてつもなく尊い!

(写真/石野明子 取材・文/蓮池由美子)

お話をうかがった人

金子エミ
金子エミ
パーツモデル・美容家
雑誌や書籍を通して、自身の美容法を発信。’97年に、長男・カイトくんを出産、ダウン症と判明する。’16年、「ダウン症世界水泳選手権大会」の日本代表選手にカイト君が選ばれる。
雑誌や書籍を通して、自身の美容法を発信。’97年に、長男・カイトくんを出産、ダウン症と判明する。’16年、「ダウン症世界水泳選手権大会」の日本代表選手にカイト君が選ばれる。