5、起訴猶予、執行猶予、無罪を目指すには弁護人は不可欠
起訴猶予や執行猶予は、主に前記「2」でご紹介した要素によって判断されます。
そして、起訴猶予・執行猶予・無罪を獲得するためには、弁護人の存在が大きな助けとなります。
なぜなら、刑事事件の手続において弁護人には以下のような重要な役割があるからです。
(1)起訴猶予を目指す際の弁護人の役割
起訴猶予を目指すなら、検察官が起訴を決める前に身元引受人を確保し、生活環境の調整を行い、被害者と示談するなどの活動をすることが必要です。
逮捕・勾留されている場合は、最大でも23日間しか時間の余裕がありませんし、そもそも身柄を拘束されているとご自身でこのような活動を進めることは困難です。
そこで、早めに弁護人に依頼して、本人に代わって活動してもらうことが不可欠となります。
また、弁護人から検察官にかけ合うことによって、「あと何をすれば起訴猶予になるか」ということを具体的に教えてもらえることもあります。
その結果、ご本人とご家族が手探りで活動するよりも起訴猶予を獲得できる可能性が高まります。
(2)執行猶予、無罪を目指す際の弁護人の役割
起訴されてしまった場合は刑事裁判にかけられます。
刑事裁判は、訴えた側(検察官)と訴えられた側(被告人)がそれぞれの主張を立証し、どちらの主張が的確に立証されているかを裁判所が公平な視点で判断して判決を言い渡すという構造がとられています。
検察官はもちろん、被告人が有罪であること等を主張・立証してきます。
被告人としては、検察官が提出した証拠によっては有罪を立証できていないことを的確に説明するか、あるいは自分に有利な事実を自ら立証しなければなりません。
このような主張・立証活動には高度な専門知識と技術が必要であり、一般の方が適切に行うことは非常に困難です。
そのため、やはり弁護人によるサポートは欠かせないでしょう。
(3)国選弁護人と私選弁護人の違い
実は、自分で弁護士を探して依頼しなくても、勾留されたあとは国選弁護人を選任することができます。
国選弁護人とは、原則として国の費用で付けてもらえる刑事事件の弁護人のことです。
資力が一定の基準以下でなければならないという条件が一応ありますが、資力が十分にある人でも、私選弁護人に依頼できない状況の場合は国選弁護人を選任できます。
一方、自分で弁護士を探して、費用を払って依頼する弁護人のことを私選弁護人といいます。
どちらの弁護人も刑事事件の手続における法律上の権限はまったく同じですが、被疑者・被告人にとって私選弁護人に依頼するメリットは次のようなものがあります。
①早い段階から動いてもらえる
国選弁護人を選任できるのは、早くても勾留段階からです。
逮捕段階には国選弁護制度はありません。
しかし、私選弁護人はいつでも選任できます。
逮捕中でも選任できますし、逮捕前から依頼しておくことも可能です。
逮捕・勾留されてから起訴・不起訴が決まるまでは日数が限られているので、不起訴を目指すなら逮捕されたらすぐに弁護人を選任することが大切です。
また、無罪を目指す場合にも逮捕中から弁護人のサポートを受けることは重要です。
なぜなら、捜査機関による取調べで、罪を犯していないにもかかわらず虚偽の自白をしてしまったがために有罪となってしまうケースもあるからです。
逮捕中でも弁護人は接見できますので、取調べに対してどのように対応すべきか等のアドバイスをするなど、逮捕されてしまった方のサポートをすることができます。
②自分で選んだ弁護士に依頼できる
国選弁護人の場合は自分で弁護士を選ぶことができないので、どのような弁護士が選任されるかはわかりません。
たまにしか刑事事件を担当しない弁護士が選任される可能性もあります。
納得のいく結果を得るためには、刑事事件に強い弁護士に依頼することが大切です。
その点、私選弁護人を選任する場合には、自分で弁護士を選ぶことができますので、刑事事件に強い弁護士を選任することができます。
③親身な弁護を受けられる可能性が高い
多くの弁護士は、国選であっても私選であっても同等の熱量で弁護活動を行っています。
国選弁護人の場合でも手を抜くことは許されませんが、場合によっては、被疑者が国選弁護人から必要最低限の弁護活動しか行ってもらえていないと感じることもあるようです。
身元引受人の確保や被害者との示談には、ときには粘り強い交渉が必要となることもあります。
不起訴を目指す場合には、時間との戦いにもなります。
無罪を目指す場合には、頻繁に接見に来てもらって、取調べの状況に応じてアドバイスを受けることが重要です。
刑事事件の経験が豊富で、あなたが納得して依頼した私選弁護人の場合、親身な弁護を受けられる可能性が高いです。
まとめ
懲役や禁錮の実刑判決を受けると、刑務所に入らなければなりません。
罰金や科料なら刑務所に入らずに済みますが前科は付きますし、支払えなければ結局一定期間は刑務所などの刑事施設に入る必要があります。
実刑となるかどうかは犯した罪の種類や犯行の悪質性、前科があるかどうかなど、事後的に左右できない要素によって決まる部分もあります。
しかし、再犯のおそれをなくしたり、被害者との示談を成立させたりするなど、事後的に左右できる要素も大きく関わってきます。
そのため、弁護人の活動によって、実刑を免れる可能性を高めることは可能です。
実刑を免れたいとお考えの方は、お早めに弁護士に相談されることをおすすめします。
監修者:萩原 達也弁護士
ベリーベスト法律事務所、代表弁護士の萩原 達也です。
国内最大級の拠点数を誇り、クオリティーの高いリーガルサービスを、日本全国津々浦々にて提供することをモットーにしています。
また、所属する中国、アメリカをはじめとする海外の弁護士資格保有者や、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも当事務所の大きな特徴です。
萩原弁護士監修 :「離婚」記事一覧
萩原弁護士監修 :「労働問題」記事一覧
萩原弁護士監修 :「B型肝炎」記事一覧
萩原弁護士監修 :「刑事弁護」記事一覧
萩原弁護士監修 :「企業法務」記事一覧
萩原弁護士監修 :「遺産相続」記事一覧
萩原弁護士監修 :「アスベスト」記事一覧
配信: LEGAL MALL