子供が児童相談所に連れていかれてしまったため、一時保護の解除条件を知りたいとお悩みではありませんか?
今回は、
児童相談所の一時保護の解除条件
児童相談所の一時保護から子供を取り戻す方法
児童相談所の一時保護が解除できなかったときの対処法
などについて、弁護士がわかりやすく解説します。
児童相談所については以下の関連記事をご覧ください。
1、児童相談所の一時保護の解除条件を知る前に~「一時保護」とは?
児童相談所は児童福祉法に基づいて設置されている自治体の機関で、子供の育成や支援を行っています。
児童相談所が子供と親の分離の必要があると判断した場合、「一時保護」の措置がとられます。
一時保護とはどんな制度なのか詳しくみていきましょう。
(1)一時保護制度の概要
一時保護制度とは、子供の心身の安全を確保し、適切な保護を図るための制度です。
親と分離する必要がある、もしくは子供に親がいないなど、子供の安全を確保すべきと判断されるような状況で緊急に行われる措置であり、一時保護所への入所や第三者への委託を行うことを指します。
この制度に関しては、児童福祉法で次のように定められています。
第三十三条第一項 児童相談所所長は、必要があると認めるときは、第二十六条第一項の措置を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、又は適切な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。
引用元:児童福祉法
法律で規定されているように、一時保護には子供の心身の安全を確保するだけではなく、子供の置かれている状況を把握するという目的もあります。
そのため、一時保護で児童の安全を確保した上で、保護者に対する調査や指導が行われます。
なお、一時保護は文字どおり暫定的な措置のため、一時保護を経たのちに、当該児童について、正式な措置が採られることになります。
措置は大きく分けると、児童を帰宅させ、必要に応じて児童相談所が保護者等に対して子の養育について面会や指導をする「在宅指導」(児童福祉法27条1項2号)と、児童を児童養護施設に入所させる措置(児童福祉法27条1項3号)があります。
(2)一時保護の期間
一時保護が行われる期間は、原則として2カ月と法律で定められています。
第三十三条
三 前二項の規定による一時保護の期間は、当該一時保護を開始した日から二月を超えてはならない。
四 前項の規定にかかわらず、児童相談所長又は都道府県知事は、必要があると認めるときは、引き続き第一項又は第二項の規定による一時保護を行うことができる。
引用元:児童福祉法
児童福祉法第33条3項では一保護は2カ月を超えてはならないと規定されていますが、4項では必要に応じての延長が認められるとされています。
その場合には原則として保護者等の同意が必要であり、同意がない場合には家庭裁判所の承認が必要です(同条5項)。
(3)一時保護が行われる要件
一時保護は、保護の「必要がある」と判断されれば児童福祉法に基づいて実施されますが、どのような場合に保護の必要性があるとされるのかは、厚生労働省の「児童相談所運営指針」に基準が設けられています。
緊急保護
・棄児、迷子、家出等、適当な保護者または宿所がないために緊急に保護する必要がある場合
・虐待、放任等の理由により、その子供を家庭から一時引き離す必要がある場合
・子供の行動が自己または他人の生命、身体、財産に危害を及ぼした、もしくは及ぼす恐れがある場合
行動観察
適切かつ具体的な援助指針を定めるために、一時保護による十分な行動観察、生活指導等を行う必要がある場合
短期入所指導
短期間の心理療法、カウンセリング、生活指導等が有効であると判断される場合であり、地理的に遠隔または子供の性格、環境等の条件により、他の方法による援助が困難または不適当であると判断される場合
引用元:厚生労働省「児童相談所運営指針」
上記の要件に該当すると児童相談所が判断すれば、保護者等の意向にかかわらず一時保護が行われることがあります。
2、児童相談所の一時保護の解除条件とは
児童相談所で一時保護されてしまえば、解除まで何もせずに待たなければならないというわけではありません。
一時保護の必要性がなかった場合や、事後的に必要性がなくなった場合には解除される可能性があります。
ここでは、一時保護の解除条件をご説明します。
(1)一時保護の必要性がなければ解除が可能
児童福祉法第33条第1項では、「必要があると認めるとき」に一時保護の措置がとられることが規定されています。
言い換えれば、一時保護の必要性がないと判断されれば解除されるということです。
一時保護の解除条件に関しては法律に具体的な規定はありませんが、厚生労働省の「子ども虐待対応の手引き」にて設けられている「親子分離の要否評価チェックリスト」が判断基準として参考になります。
在宅では子どもの生命に危険が及ぶ
在宅では子どもの心身の発達を阻害する
子どもが帰ることを拒否する
家族・子どもの所在がわからなくなる可能性が強い
性的虐待である
繰り返し虐待の事実がある
子どもの状況をモニタリングするネットワークを構築できない
保護者が定期的な訪問・来所指導を拒む
家庭内の著しい不和・対立がある
絶え間なく子どもを叱る・罵る
保護者が虐待行為や生活環境を改善するつもりがない
保護者がアルコール・薬物依存症である
引用元:厚生労働省「子ども虐待対応の手引き」
このチェックリストを踏まえた上で、一時保護解除の条件のポイントを以下でご紹介します。
(2)虐待のおそれがないこと
虐待は子供の身体だけではなく精神にも影響を与え、生命の危険を脅かすようなケースもあります。
児童相談所は第一に子供の心身の安全の確保を考える機関であるため、虐待の恐れがあると判断されれば一時保護を実行します。
虐待の恐れがないことが証明できれば、一時保護を解除してもらうことも可能です。
(3)子供を放置せず適切な監護が見込まれること
育児放棄や家出など、子供を放置して適切な監護ができていなければ、児童相談所は一時保護の必要性があると判断します。
親には子供の監護や養育する義務がありますが、育児放棄や家出によって子供を放置するということは、この義務が果たされていないと考えられます。
子供を放置せずに適切な監護が見込まれる環境であることを児童相談所が認めれば、一時保護の解除に繋がる可能性が高まります。
(4)家庭不和のおそれがないこと
両親が喧嘩をすることや、子供を叱るようなことは、どこの家庭内でもあり得ることです。
しかし、毎日のように激しい喧嘩をしているようなケースや、絶え間なく子供を叱ったり罵ったりしているようなケースでは、家庭不和の恐れがあると判断されて一時保護の措置がとられてしまいます。
家庭不和のおそれがないことが分かれば、一時保護は解除される可能性があるといえるでしょう。
(5)保護者が児童相談所の調査に協力すること
一時保護が行われた後、多くの場合は児童相談所が保護者との面談・調査を行います。
この面談や調査に積極的に協力することは、家庭内の問題の改善や子供への愛情があることを児童相談所へ伝えられる手段でもあるといえます。
非協力的な態度で抵抗すると一時保護の解除は遠のいてしまうので、協力的な態度で調査を受けるようにしましょう。
配信: LEGAL MALL