3、立件されないための対処法
現行犯として警察に事件を認知されてしまった場合を除けば、刑事事件の発生から警察による捜査の開始、すなわち立件までにはタイムラグがある場合がほとんどです。
2の(1)でみたように、警察が事件を認知するルートとしては事件の関係者からの通報、被害届の提出や告訴、告発などがあります。
事件の関係者にこれらをしないでもらえれば、事件が警察に認知されることなく、もしくは、認知されたとしても社会的なダメージを伴うような捜査活動が開始されることなく、いわば穏便に済ませることができる可能性があるといえます。
示談交渉等の適切な対処を行うことで被害者をはじめとする事件の関係者との間で刑事事件化させないことを約束できれば立件されずに済む可能性は高いのですが、どうしても被害者の方と加害者の方が直接やり取りをすることは難しかったり、そもそも被害者の方の連絡先がわからないということも多いです。
このような場合にはそのまま捜査が進展して逮捕・勾留といった身柄拘束につながりかねないため、できるだけ早く示談交渉の実務に詳しい弁護士に依頼することで、示談を成立させるよう動いてもらうべきでしょう。
ちなみに、逮捕・勾留は、何らかの罪を犯したことを客観的・合理的に肯定できるような理由と、逮捕・勾留しなければ被疑者が逃亡してしまったり、証拠を隠滅してしまうかもしれないといったおそれが認められる場合に裁判官が捜査機関に対して許可を出すものです。
つまり、逃亡できないような事情があるとか、隠滅できるような証拠が存在しないといったことを証明できれば逮捕・勾留はなされないはずなのですが、現在の刑事実務では、事件の類型にもよりますが、被疑者に対して逮捕の前に事前に連絡してそういった事情を聴き取ったりする手続はありませんし、逮捕されている間に不服申立てをすることはできません(逮捕された後、勾留決定に対する不服申立てとしては準抗告という手続が認められています。)。
だからこそ、逮捕されてしまう前にできるだけのことをしておくべきといえますが、知識と経験の両方がなければ有効な対処ができないため、刑事事件の実績が豊富な弁護士に依頼するのが最善でしょう。
4、立件されてしまった後の対応策
警察や検察といった捜査機関による捜査が始まったからといって有罪となることが確定するわけではありません。対応次第では起訴猶予や不起訴処分となることもあり得るからこそ適切な防御活動を行っていくことが非常に重要です。
被疑者にとって有利にするには、基本的には以下の3つの注意点を踏まえて、実施される捜査活動に対応するのが好ましいでしょう。
ただし、場合によってはこれらに当てはまらないこともあるため、刑事事件を専門に扱う弁護士に相談することが望ましいといえます。
(1)取調べでは事実を正確に話す
被疑者には黙秘権が認められているので取調べの間ずっと黙っていても差し支えありません。
また、答えたい質問にだけ答えて、答えたくない質問には答えないということも可能です。
ただし、自分がやったことが間違いない状況で、かつ捜査機関が犯罪事実の証拠等を掴んでいることが明らかであれば、本来許されるべきではないのですが黙秘の姿勢が不利に作用するリスクがあるので、事実を正確に話した方が有利な結果に繋がることもあるでしょう。
とはいえ、嘘や曖昧な表現は厳禁です。この判断は被疑者本人だけでは難しいため、弁護士のアドバイスを参考にしてください。
また、取調べによって作成される供述調書は検察官の判断や刑事裁判の証拠に使われるので、記載内容は十分に確認する必要があります。
供述調書の内容に間違いがあればかならず訂正を申し入れ、記載内容に納得できない場合には署名や指印をする必要はありません。
この点の対処方法についても、弁護士に相談すれば適切なアドバイスが得られるでしょう。
(2)反省の態度を示す
自分がやったことに間違いがないのであれば、取調べ段階で反省の態度を示すのが有効な手段です。
なぜなら、検察官が起訴するか・起訴猶予に留めるかを判断する際には、客観的に得られた証拠等だけではなく、被疑者の反省の様子や事件を起こすに至った経緯・動機なども総合的に考慮されるからです。
事件が軽微で被害状況が深刻でなければ、真摯に反省の態度を示すことによって起訴猶予処分を獲得することも不可能ではないので、誠実な姿勢で取調べに応じましょう。
(3)被害者と示談する
捜査機関が事件を認知した後、特に送検後は検察官が起訴するか起訴猶予に留めるかを判断する前に被害者との間で示談交渉をまとめるのが重要です。このことは立件の前後を問いません。
なぜなら、被害者との間で示談が成立していることは起訴猶予処分の後押しになるからです。
実際に被害弁償済みであること、慰謝料等の支払いを承諾していることは、真摯な反省の姿勢を示すとともに、被害者に処罰感情がないことの証明になるでしょう。
とはいえ、身柄拘束中の被疑者本人が被害者と示談交渉を進めるのは現実的に困難なので、示談交渉を行う代理人を選任する必要があります。
刑事事件の実績豊富な弁護士に相談すれば実効性のある示談書の作成や被害者感情に寄り添った示談交渉を遂行してくれるので、出来るだけ早いタイミングで刑事事件を専門に扱う弁護士にご相談ください。
配信: LEGAL MALL