矯正治療で歯を「抜く・抜かない」の判断基準は? 抜歯が必要な理由やメリット・デメリットを解説

矯正治療で歯を「抜く・抜かない」の判断基準は? 抜歯が必要な理由やメリット・デメリットを解説

矯正治療を検討中の方の中には、歯を抜くことに抵抗を感じている方も少なくありません。そこで、矯正治療で抜歯が必要な理由やその判断基準、抜歯のメリット・デメリットなどを津田沼すずき矯正歯科の鈴木先生に解説してもらいました。

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監修歯科医師:
鈴木 正能(津田沼すずき矯正歯科)

東京歯科大学卒業。同大学矯正学講座研修課程、大学院修了。舌側矯正歯科専門医院での勤務を経たのち、津田沼すずき矯正歯科副院長に就任。のちに院長に就任。父親の代から20年以上続く地域の矯正歯科専門医院として、舌側矯正やマウスピース型矯正治療など様々な方法から最良の治療を提供している 。丁寧な説明とコミュニケーションを大切にし、理解を深めながら治療を進めている。日本成人矯正歯科学会、日本舌側矯正歯科学会の各会員。日本矯正歯科学会認定医。歯学博士。

矯正治療で抜歯が必要な理由とその判断基準

編集部

そもそもなぜ、矯正治療で抜歯が必要なのでしょうか?

鈴木先生

矯正治療で抜歯を行う主な理由は、骨格の大きさに対して理想的な位置に歯を並べるためのスペースを確保するためです。あごのサイズと歯のサイズの不一致によって歯並びが悪くなっているケースについては、多くの場合で抜歯を検討していきます。

編集部

具体的に、抜歯する・しないの判断はどのような基準で行われるのでしょうか?

鈴木先生

例えば、歯を抜かずに治療する(非抜歯)の場合、スペースを作るために「歯列を広げる」「歯の両側を少し削る(IPR)」「歯を後方へ移動する」などの方法が行われます。これらの方法を駆使しても歯並びが改善できない、あるいは悪影響がでてしまう場合は、抜歯によるスペースの確保が必要です。

編集部

矯正装置や治療法(表側矯正・裏側矯正・マウスピース型矯正など)の違いによって、抜歯の判断基準が変わることはありますか?

鈴木先生

基本的に、装置や治療法で抜歯の基準が変わることはありません。抜歯するか・しないかは、患者さんの骨格や歯並びの状態によって判断されるもので、患者さんにとってベストな治療方針を立てたうえで、それに合った装置や治療法を選択していきます。したがって、装置によって抜歯・非抜歯を選ぶことはありません。

編集部

はじめは非抜歯で治療していても、途中で抜歯が必要になることもあるのでしょうか?

鈴木先生

あらかじめ詳細な治療計画を立ててから治療を開始するため、治療の途中で非抜歯から抜歯に変更になることはほとんどありません。近年は、分析ソフトで治療後の歯並びや側貌(横顔)を事前にシミュレーションすることができます。その結果をもとに、抜歯で治した場合と非抜歯で治した場合の歯並びの状態やメリット・デメリットを患者さんに説明したのち、十分に理解してもらったうえで治療方針を決定していきます。したがって、途中での方針変更はほとんど必要ありません。

矯正治療で抜歯するどんなメリット・デメリットがある? 納得のいく治療を選択するためのヒント

編集部

矯正治療で必要とはいえ、できれば「歯は抜きたくない」という方も多いと思うのですが、抜歯をすると具体的にどのようなメリットがありますか?

鈴木先生

自分の骨格に対し、無理のない位置に歯が並べられるのが一番のメリットです。例えば、抜かずに非抜歯で治療した場合、無理に歯列を広げて歯を動かすと歯ぐきが下がったり、歯が骨からはみ出てしまったりすることがあります。また、歯が外側に傾斜して上下の噛み合わせがズレてしまうことも少なくありません。矯正治療で抜歯するメリットはこのような不具合を避け、その骨格にとってバランスの良いところに歯を並べることができる点にあります。

編集部

今ある自分のあごの大きさに無理なく歯が並べられるということですね。そのほかに、メリットはありますか?

鈴木先生

非抜歯治療に比べて、移動させる歯の本数が少なくすむのもメリットの1つだと思います。例えば、出っ歯(上顎前突)を非抜歯で治す場合、14本すべての歯を後方へ移動させる必要があります。そうすると治療期間が延びてしまうほか、歯ぐきの退縮や歯根の吸収といったダメージも大きくなります。このような場合に抜歯を適応すると、後方に移動させるのは前歯部の6本だけなので、非抜歯よりも治療の負担が軽減できる可能性があります。それ以外にも審美面が改善されるということも大きなメリットです。E-ラインという横顔のバランスの指標がありますが、口元が突出している場合には、歯を抜くことで口元を後退させE-ラインを審美的に良好なバランスにすることができます。

編集部

反対に、矯正治療の抜歯にデメリットはないのでしょうか?

鈴木先生

歯を抜くことによる心理的負担は、患者さんにとってはデメリットといえるかもしれません。また、歯列が少し狭くなるので、患者さんによっては舌が窮屈に感じる方もいらっしゃいます。

編集部

抜歯の必要性について納得いくまで説明を受けるためには、どのような点に注意 したらよいでしょうか?

鈴木先生

治療に入る前に検査を受け、その結果を踏まえた、根拠のある治療計画を聞くことが大事です。歯と骨の関係、歯の安定性、期間、歯だけでは無く横顔の審美面の変化など、抜歯・非抜歯それぞれのメリット・デメリットを事前にしっかり伝えてもらうこと。それだけでは分かりづらい場合は、先述した、専用のソフトによるシミュレーション結果を見ることなど。その説明を聞いたうえで、わからないことは質問し、必ず自身で納得できる方法を選択していきましょう。

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