日常的に行う防災対策
ここからは高齢者や高齢者と暮らす家族が、普段から取り組みたい防災対策をご紹介します。
避難経路の確認
高齢者の防災訓練では、災害時に一人で避難できるか、周囲の支援を必要とするかが、大きなポイントになります。近くの避難場所はどこかを確認し、できれば家族などと一緒に実際に歩いて、避難経路を確認してみましょう。
避難場所まで集団避難をするために、自宅近くの公園などが一時集合場所に指定されていることもあります。体力に自信のない方などは、一時集合場所まで歩いていくことを目標にするとよいでしょう。
なお、災害時には訓練よりも厳しい状況での避難が想定されます。高齢者は避難に時間がかかることなどを考慮して、危険が迫る前に避難を始めることが推奨されています。早くに避難を決断することで、親戚の家やホテルなど避難先の選択肢が増えるかもしれません。移動手段も公共交通機関や、家族の送迎、タクシーなど、心身の負担が少ない方法を選択できるでしょう。
防災グッズの準備
高齢者は、避難の際に持ち出す荷物を軽くコンパクトにまとめましょう。持病がある方は飲んでいる薬と、お薬手帳を携帯してください。
水は1日3リットル×3日分
自宅避難用として、水と食料を備えておきましょう。水は飲料用と調理用として一人1日3リットル×3日分が必要です。
高齢者によっては、2リットルのペットボトルは重くて持ち上げるのが難しいかもしれません。その際は500mlのペットボトルや、ストローがついた200ml程度の紙パックのお茶などを用意するとよいでしょう。握力が低下している方のために、キャップを開け閉めする補助具も市販されています。
非常食は喉を通りやすいものを
非常食はレトルトのごはんやおかゆ、お湯を注ぐだけの味噌汁やスープなどを用意しておくと、非常時でも喉を通りやすいでしょう。たんぱく質を補える鯖缶や、ビタミン類を補える野菜ジュースや果物缶などを添えると、栄養のバランスが良くなります。
カセットコンロがあると、災害でガスや電気が停止しているときでも、温かい食事をとることができます。
その他、懐中電灯とラジオなど
停電に備えて、電池式の懐中電灯やランタンを用意しておきましょう。必要なときに、すぐに取り出せる場所に保管しておいてください。
状況を把握するための通信手段を確保することも、災害時の重要課題です。携帯電話のバッテリーを温存できるよう、小型のラジオがあると役立つでしょう。
高齢者の見守り製品を活用する
一人暮らしの高齢者を離れて暮らす家族が見守る製品やサービスは、防災にも役立ちます。スマートスピーカーの中には、携帯アプリで家電の利用状況を確認できたり、「呼びかけ」機能を利用して相手が電話をとらなくても、音声で話しかけたりすることのできる製品があります。
また、ホームセキュリティ会社が行っている見守りサポートの中にも、緊急速報を音声で読み上げるとともに、家族にもメールで知らせてくれるサービスがあります。
地域の防災訓練に参加する
災害時には、地域の自治会やボランティアが住民の安否確認を行ったり、非常食を配布したりすることがあります。一人暮らしの高齢者や、高齢者のみの世帯の方は特に、災害時に孤立してしまうことのないよう、地域の防災訓練にはできるだけ参加するようにしましょう。
近所の人々と交流する
日頃から地域の行事などに参加して、近所の人々と交流を持つことも大切です。天気の良い日には散歩に出かけて、挨拶を交わすことから始めてもよいでしょう。災害時にも「あの家に高齢者がいたはず」「あの人は大丈夫だっただろうか」と認知されるきっかけになります。
まとめ
高齢者の防災対策は、家族や地域がともに取り組んでいくべき課題です。災害から高齢者を守るために、家具の転倒・落下・移動の危険はないか、自宅を点検しましょう。また、災害時に必要な支援を受けるためにも、地域の避難訓練に参加するなどして、近所の人々と交流を持つよう心がけてみてください。
<執筆者プロフィル>
山見美穂子
フリーライター
岩手県釜石市生まれ。幼いころ両親から聞いた「津波てんでんこ」の場所は、高台の神社でした。
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配信: 防災ニッポン