実写化でもちゃんと3次元として存在
高橋文哉が一人二役でいじめられっ子と1000人のヤンキーを束ねる長を演じ分ける『伝説の頭 翔』(テレビ朝日、毎週金曜日よる11時15分から放送)は、山下智久主演でドラマ化された『クロサギ』や『正直不動産』の夏原武の原作(原案)デビュー作である。高橋扮するグランドクロスの伊集院翔と敵対勢力ブラッドマフィアの頭・東城真をカルマが演じている。
初登場は第2話。入院中の翔になりかわった山田達人(高橋文哉)が地元のヤンキーにカツアゲされそうになったところへ、東城が現れて敵を撃退してくれる。「翔ちゃん」としきりに言って親しげだが、何か邪悪な了見があるように見える。
そのあとの場面でもグランドクロスの窮地をいいタイミングで助っ人する東城は、終始おどけている。かと思いきや、得意技の顎外しで相手の顎をつかんではなさない。恐るべき悪のポテンシャルを秘めたキャラクターを演じるカルマの演技はなかなか迫力があり、ちゃんと3次元として存在している。
おちゃらけキャラの空気感や台詞の発し方も白々しくない(このあたりは北総愚連隊総長・瀬山大護役の金城碧海のおおげさな熱の入り方と比較すれば歴然)。主人公と同じ職場で働く嫌味キャラを演じた『推しが上司になりまして』(テレビ東京、2023年)では、特に眉毛などを動かし過ぎて表情を誇張していたからなおさらすっきりした演技の印象を与える。
カルマの演技の核心
そもそも実写化作品との相性がいいのかもしれない。初演技作として記憶されている『波よ聞いてくれ』と続く第2作『推しが上司になりまして』はいずれも漫画原作。今のところ、出演作すべてが、実写化作品ということになる。
特に『波よ聞いてくれ』第6話にゲスト出演した演技は、表情の作り方などが評価された。総じて評するなら、地頭のよさで少ない演技経験をカバーしながらする平均点以上を手堅くアウトプットできるタイプだろうか。
ただし、表情の作り方というのは演技の一側面に過ぎず、目に見えてほめやすい要素でもある。少なからず演技レッスンを施されたら、極限、誰でもいい表情はある程度作れてしまう。
『伝説の頭 翔』でも確かにユーモアと恐怖を揺れ動くような表情のうまさは目立つが、だからといってカルマの演技を表情のよさとしてばかり語ろうとするのは本質的ではない。彼の演技の核心はもっと別のところにあると思う。
配信: 女子SPA!