【弁護士が解説】銀行口座は死亡後もそのままでいい?事例別に詳しく解説!

【弁護士が解説】銀行口座は死亡後もそのままでいい?事例別に詳しく解説!

故人の葬儀費用や入院費など多額の金額を用意することができず、親族がこれらの費用の支払いのために故人の銀行口座から引き出すことがあります。

今回は、

口座凍結
故人の預金をおろした時の問題
相続の手続き

などについて解説します。

銀行預金 相続についてはは以下の関連記事をご覧ください。

1、銀行口座の凍結は銀行次第

(1)遺産相続手続きをしなくてもペナルティはない

口座凍結のタイミングについて誤解をしている方もいらっしゃいますが、死亡届を提出するのと同時に金融機関が銀行を凍結するわけではありません。役所から金融機関へ連絡がいくわけではありません。相続人が銀行へ死亡の連絡をした場合はもちろんのこと、金融機関が地域の回覧板や地域新聞の訃報欄などで死亡を確認した場合など、銀行が名義人の死亡を確認した時点で口座が凍結されます。そのため、金融機関が名義人の死亡を認識しない限り、口座は凍結されません。また、金融機関への届け出期限が法律で定められているということもありませんので、法的なペナルティが発生することはありません。

(2)ただし、休眠預金活用法の適用を受ける場合がある

金融機関へ故人の死亡届をせずに放置している方や、認識していなかった預金口座が後から判明したという方もいるのではないでしょうか。入出金などの取引がない放置した状態が10年以上続いた場合には、「休眠預金等」として取り扱われます。金融機関に預けていた預金が休眠預金等になると、預金保険機構の管理下へ移管され民間公益活動に活用されることになります。ただし、預金保険機構の管理下に移管されて公益活動に預金が活用されても、元々取引をしていた金融機関において所定の手続きを経れば、払い戻しを受けることはできます。

(3)銀行の普通預金口座の消滅時効は5年!

銀行に名義人の死亡を連絡すると口座が凍結されますが、取引がないまま5年が経過すると消滅時効にかかります(商法522条、令和2年4月1日以降に口座開設をしている場合には民法第166条)。

時効による消滅は期間の経過によって自動的に生じるのではなく、当事者が時効を援用しなければなりません(民法第145条)。銀行にお金を預ける行為においては、預金者である故人が債権者であり、銀行が債務者です。

そのため、銀行が消滅時効を援用しない限りは預金債権が消滅するわけではなく、多くの銀行はこの消滅時効を援用していませんので、実際は、時効期間経過後も引き出すことが可能となっています。

2、死亡した人の預金をおろすと罪になるの?

名義人の死亡後に、相続人が故人の預金を引き出しても罪にはなりません。

ただし、相続人の間(民事)では問題になる可能性があります。

すなわち、故人の預金は相続財産となり、相続開始とともに相続人全員の共有となります。そのため、原則として、預金の引き出しには共同相続人の同意が必要となります。共同相続人の同意を得ずに引き出した場合には、以下のような請求がなされる可能性や、不利益を被る可能性があります。

(1)不当利得返還請求

遺産相続後に相続人が故人の預金を共同相続人に無断で引き落としてしまうことは珍しくありません。故人の預金債権は相続財産であるため、相続開始により共同相続人の共有となります。他の法定相続人は、引き出した相続人に対して、不当利得返還請求をすることができます。

不当利得返還請求権は、無断引き出しが令和2年4月1日以降の場合は、無断で引き出したことを知った時から5年又は無断で引き出したときから10年の早い時点で時効により消滅します(民法166条1項)。

無断引き出しがそれ以前の場合には、無断で引き出した時から10年です。

(2)不法行為に基づく損害賠償請求

共同相続人に無断で故人の預金を引き出した場合、不法行為に基づく損害賠償請求を行うこともできます。不法行為に基づく損害賠償請求は、引き出されたこと及び引き出した者を知った時から3年か、引き出しがなされた時から20年のいずれか早い方で時効により消滅します(民法724条)。

(3)相続放棄ができなくなる可能性がある

亡くなった人の預金を引き出して、葬儀費や故人の生前の入院費を支払った場合、相続放棄ができなくなる可能性があります。相続発生後に相続財産を処分してしまうと、相続を単純承認したものとみなされ(民法第921条第1号)、相続放棄ができなくなります。

葬儀費用や仏具などの購入については、故人の銀行口座から引き出して支払っても、相続財産の処分には当たらず、単純承認とはならないと判断した(その後の相続放棄を認めた)裁判例が存在します。ただし、これらの費用が社会通念上不相応に高額の場合は、相続財産の処分に当たり、相続を単純承認したと判断される可能性があります。そしてそのように判断されると、その後の相続放棄は認められません。相続財産がプラスの財産だけの場合は相続放棄ができなくなっても問題ないですが、マイナスの資産がある場合には、これも相続してしまうことになりますので、注意が必要です。

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