3、飲酒運転が発覚した場合の4人の罰則対象者
飲酒運転について、もう1つ気を付けておきたいポイントのひとつに「罰則を受けるのは飲んで運転した本人だけではない」という点があります。
飲酒していることを知っていながら車を貸した人
お酒を飲ませた人
飲酒運転時に車に同乗していた人
これらの人々もそれぞれ罰則の対象者となり、あとから「知らなかった」では済まされないため、しっかり詳細を押さえておきましょう。
(1)飲酒運転をした者
まずお酒を飲んで車を運転した当の本人については、先ほどご紹介した酒酔い運転・酒気帯び運転それぞれに次の罰則が科せられます。
酒酔い運転:5年以下の懲役、または100万円以下の罰金
酒気帯び運転:3年以下の懲役、または50万円以下の罰金
(2)飲酒しているのをわかっていて車を貸した者
運転者が飲酒しているのを知っていたのに、車を提供した者についても次の罰則が科せられます。
(運転者が)酒酔い運転:5年以下の懲役、または100万円以下の罰金
(運転者が)酒気帯び運転:3年以下の懲役、または50万円以下の罰金
驚かれる方も多いかもしれませんが、車の提供者も運転者と同様の処罰内容です。
(3)飲酒をさせた者
車を運転する予定がある人に対して酒類を提供したり、飲むように勧めたりすることも罰則の対象で、運転者が実際に飲酒運転を行った際には次の罰則が科せられます。
(運転者が)酒酔い運転:3年以下の懲役、または50万円以下の罰金
(運転者が)酒気帯び運転:2年以下の懲役、または30万円以下の罰金
(4)飲酒運転時に同乗した者
運転者が飲酒していることを知りながら、その車の同乗者についても次の罰則の対象となるので、注意が必要です。
(運転者が)酒酔い運転:3年以下の懲役、または50万円以下の罰金
(運転者が)酒気帯び運転:2年以下の懲役、または30万円以下の罰金
4、実際にあった飲酒運転者の裁判例内容を紹介
飲酒運転は、その事実だけでも重大な刑罰の対象となりますが、飲酒運転が原因で事故を起こしてしまった場合、罪はさらに重くなります。
ここからは、実際の裁判例をもとに飲酒運転が引き起こした事件の詳細を見ていきましょう。
(1)東名高速飲酒運転事故
最初にご紹介するのは、1999年に東名高速で発生した交通事故で、飲酒運転のトラックが家族4名を乗せた乗用車に衝突し、当時まだ3歳と1歳だった幼い女児2名が死亡、姉妹の父親も全身の25%に及ぶ大火傷を負い、トラックの運転手には業務上過失致死傷などの罪で懲役4年が言い渡されました。
それとは別に死亡した女児2名の逸失利益として約2億5000万円の賠償金が、慰謝料としてそれぞれ3,400万円が認められ、マスコミでも大きく取り上げられたことから、後に新設される危険運転致死傷罪の成立に大きな影響を与えています。
このトラックの運転手は、事件当日ウイスキー750ml、チューハイ1缶を飲んで足元がふらつくほど酩酊しており、呼気中アルコール濃度も0.63mgと非常に高いものでした。
その上、実は以前からトラックの中に酒類を持ち込むのが習慣となっていた=飲酒運転の常習者であったことが悪質と判断され、上記のような処分に至ったという経緯がありますが、取り調べでは「酒なんて飲んでない、飲んだのは風邪薬だ」と言い逃れようとする態度も見られ、加害者側の意識の甘さが事件の根底にあったことを窺い知ることができます。
(2)宮城県で発生した危険運転致死事件
こちらの事件でも、飲酒運転のトラックが赤信号で停車していた軽自動車に後ろから衝突し、軽自動車の運転手を死亡させたとしてトラックの運転手に懲役7年の判決が下されました。
先ほどの事件と大きく異なる点は2001年に新設された危険運転致死傷罪が適用されたところで、最高で懲役5年の業務上過失致死傷罪に対して、危険運転致死傷罪では最高15年の懲役が科せられます。
また、この事件の加害者が事故を起こす前に摂取していたアルコールはビール959ml、焼酎254mlで、途中強い眠気を感じ、目がショボショボしたという供述も行っていたものの、そのまま運転を継続したという判断の甘さが取り返しのつかない悲劇を招いたと考えられるでしょう。
配信: LEGAL MALL