3、有責配偶者から離婚請求はできる?
不貞行為や一方的な別居をしたことには申し訳ないという気持ちがあっても、どうしても配偶者と結婚生活を続けることが難しいと感じている人もいるでしょう。では、有責配偶者からの離婚請求は認められるのでしょうか?
(1)離婚を切り出すことは自由
結婚や離婚は原則として当事者の判断に委ねられますので、有責配偶者であったとしても、離婚を切り出すこと自体は自由です。
(2)相手方の同意があれば協議離婚・調停離婚ができる
有責配偶者であったとしても、相手方の同意があれば協議離婚や調停離婚をすることができます。
相手方としても、不貞行為をした人と一緒に暮らしたくない、自分を裏切った人とこれ以上結婚生活を送ることはできない等、離婚に同意してくれる場合があります。
相手方が同意してくれる場合は、多少慰謝料等の金額を上乗せすることになったとしても協議離婚や調停離婚の形で離婚を成立させることをお勧めします。
(3)裁判上の離婚請求は原則として認められない
なぜ慰謝料等を上乗せしてでも協議離婚や調停離婚を成立させた方が良いのかというと、有責配偶者からの裁判上の離婚請求は原則として認められないからです。
協議離婚や調停離婚で話がまとまらない場合、離婚訴訟に移行することになりますが、訴訟まで進むと法定離婚事由がない限り裁判上の離婚請求は認められないのが原則です。
(4)長期間の別居で裁判上の離婚請求が認められる可能性がある
裁判上の離婚請求は認められないのが原則ですが、長期間の別居をしている場合は夫婦関係の修復が困難なものとして裁判上の離婚請求が認められる可能性があります。
なぜなら、夫婦は同居するのが原則であるところ、別居が長引いている場合には婚姻関係が破綻していると判断されることがあるからです。
このような場合は、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」と判断され、別居を理由に離婚請求が認められることがあります(民法770条第1項第5号)。
4、有責配偶者からの一方的な別居が何年続けば離婚が認められる?
それでは、有責配偶者からの一方的な別居がどれくらいの期間続けば離婚請求が認められるのでしょうか?配偶者が離婚に納得してくれず、とりあえず一方的な別居を考えている人もいるかと思いますが、安易に別居をしたところで離婚がすんなり認められるわけではないので、以下のように過去の裁判例で示された判断基準を確認してみてください。
(1)判例における基準
有責配偶者からの一方的な別居がどれくらい続けば離婚が認められるかは、一律に「別居期間○年」という基準が決まっているわけではありません。
ですが、1つの目安として判例における基準が参考になりますのでご紹介します。
「有責配偶者からされた離婚請求であつても、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもつて許されないとすることはできないものと解するのが相当である。」
この判例は、有責配偶者からの離婚請求であっても認められる場合があることを示しています。
そして、離婚が認められる別居期間の目安として「両当事者の年齢及び同居期間と対して別居が相当長期間に及んでいること」が判断基準として示されています。
この事例では、36年の別居で有責配偶者からの離婚請求を「認容すべきである」として認めました。
参照判例(最高裁昭和62年9月2日判決)
(2)具体的な年数はケースバイケース
上記の判例では、別居期間が36年のケースで離婚請求が認められました。
しかしながら、36年の別居期間というのは一般的には「長すぎる」という感覚になる人が多いですよね。
離婚が認められるための別居期間は実際にはケースバイケースであり、36年別居しないと離婚が認められないかというとそういうわけではありません。通常の離婚の場合、離婚成立に必要な別居期間は
有責配偶者は自ら婚姻関係破綻の原因を作っており、有責配偶者からの離婚請求は認められないのが原則ですから、離婚成立に必要な別居期間も長くなるのが一般的です。
配信: LEGAL MALL