都内に住む会社員の女性Aさん(50代)が7月、散歩していたところ、ご近所さんが自宅の前に「飼育しているカブトムシが増えたので売ります」という手書きのポスターを出しているのを発見しました。
Aさんはカブトムシを飼育したことはありませんが、カブトムシがペットショップやホームセンターなどで販売されているのを見たことがあります。「カブトムシは個人が販売できるものなのでしょうか」と素朴な疑問を持ったとのことです。
飼育して増えてしまったカブトムシやクワガタ。実は個人でも販売できます。しかし、守らなければならないルールもありますので、注意が必要です。
●採集で注意したいこと
動物を販売したり、展示や貸出をしたりするには「第1種動物取り扱い業者」として、都道府県や政令都市登録を申請する必要があります。しかし、これは哺乳類、鳥類、爬虫類が対象で、昆虫は含まれていません(実験動物と産業動物を除く)。
つまり、個人がカブトムシやクワガタを売ろうとした際、登録する必要はありません。ただし、飼育や繁殖のために採集する場合、さまざまな規制やルールがあります。
まず、採集が禁止されているカブトムシやクワガタの種類があります。また、自治体の公園や特定の地域などでは、生態系を崩さないように昆虫の採集や殺生が禁止されているケースがあります。大量捕獲できるライトトラップ(夜間に照明器具を使って昆虫を採集する方法)の使用を禁じている自治体もあります。
飼育のためにカブトムシやクワガタを捕獲しようとした場合、「昆虫採集して良い場所」なのか、「適切な採集方法」なのか、「採集して良い種類」なのかなど、事前に調べておく必要があります。
●売買が禁止されている種類も
さらに、カブトムシやクワガタを販売する際にも、さまざまな注意が必要です。ネットオークションや販売会で売買されていますが、希少野生動物に指定されている種類の売買は、「日本の絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)によって禁止されています。
もし、希少野生動物に指定されているカブトムシやクワガタを販売した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金が課せられます。
また、環境省は2018年1月から、外国産のマルバネクワガタ10種類を「特定外来生物」に指定し、規制を始めました。日本固有のマルバネクワガタへの影響を避けるためです。
これは、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(特定外来生物法)にもとづくもので、輸入や販売、飼育、繁殖、譲渡、放虫は原則として禁止されます。もしも違反した場合は、個人の場合は最大で300万円の罰金、もしくは3年間の懲役、法人の場合は最大で1億円の罰金が科されます。
このほか、北海道にはもともと、カブトムシやヒラタクワガタなどが生息していません。北海道に生息している種類のクワガタムシであっても、道外のものとは遺伝的に異なる場合があります。北海道では、そうしたカブトムシやクワガタが逃げ出したり、野に放たれたりしないよう、最後まで責任を持って飼育するよう呼びかけています。
当然のことながら、種類を偽って販売することも違法行為にあたります。詐欺罪に問われることもありますので、絶対にしないようにしましょう。
(監修:濵門俊也弁護士)
【取材協力弁護士】
濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えております。依頼者の「義」にお応えします。
事務所名:東京新生法律事務所
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配信: 弁護士ドットコム