「フリー素材」の“落とし穴” 「学級新聞」で損害賠償が増加 著作権の専門家が背景を解説

小中学校で「学級新聞」や「学級だより」などで使用されたインターネット上の“フリー素材”が原因で損害賠償を支払うケースが相次いでいます。知的財産権に関する業務を行う弁理士が要因を解説します。

“フリー素材”なのに損害賠償請求?

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 近年、全国各地の小中学校で「学級新聞」や「学級だより」、「ほけんだより」などで使用されたインターネット上の“フリー素材”が問題となり、いずれも数十万円の損害賠償を支払うケースが相次いでいます。教育現場であるはずの学校で、なぜ、このようなことが起こったのでしょうか。知的財産権に関する業務を行う弁理士の筆者が解説します。

フリー素材の“落とし穴”

 損害賠償を支払うこととなった学校の教師たちは、インターネットで「フリー」と検索してヒットした画像を使用していました。“フリー素材だから”自由に使えると考えたのですが、ここに大きな落とし穴がありました。実は、フリー素材にも利用規約があり、理解しないまま使用すると著作権侵害となる場合があります。

 例えば、フリー素材ではあるものの商用利用が許可されていない場合や、クレジット表記が必要な場合、実は使用範囲が厳しく決められている場合などがあります。これらを気にせずに使用すると、後で使用料を請求される、なんていうことがあります。実は今、学校教育現場に限らず、こうしたケースが多発しています。

学校機関における著作物利用への誤解

 著作権法上、学校などの教育機関において、教師や生徒は「授業の過程における利用に供することを目的とする場合」であれば、必要限度で他人の著作物を複製することができると定められています(第35条)。つまり無断で著作物を利用してよいという例外が、学校教育の現場では認められているのです。

 筆者もよくこの手の相談を受けます。多いのが「学校では著作物を自由に使用していいと聞きました。有名キャラクターを授業で使用したのですが、評判が良いのでこれをYouTubeにアップしても構いませんか?」というもの。答えは…授業内での使用はOK、YouTubeなどに広く公開することはNGとなります。

 学校で自由利用ができる範囲とできない範囲を説明したいと思います。“授業”の範囲が意外と広いことに驚かれるかもしれません。

◆OKの場合

 授業での利用:教室内だけでなく、遠隔教育、学校行事、クラブ活動までが対象です。例えば、体育館で行われる全校集会や、オンライン授業でも、教育目的であれば著作物を許可なく利用できます。ただし、ここでのポイントは「先生が生徒に対して教育を行う目的」「生徒が生徒に対して行う発表」であり、「無料」であること。

 つまり、教育の名の下で無料で行われる場合には、教室の中でも外でも著作物の自由利用が認められているのです。

◆NGの場合

 授業以外の利用:学校新聞やほけんだより、公開される展示物については許可が必要です。学校のサイトなどもそうですが、これらは広く一般に公開されるものであり、授業の目的を超えて著作権者の利益を害する可能性があるため、許可が必要です。

 いくら校内での活動といえども、先ほどのYouTubeのように公開範囲が広がると一気に事情が変わります。つまり、情報が広がることで、著作権の利益に関する問題も大きくなるので、学校という閉じられた範囲での活動を限度とされているのです。

 授業参観での家族への資料の配布や、校外の絵画コンクールなどへの出品も、授業における「先生~生徒間、生徒同士での発表」の範囲を超えているので無断利用はできません。
本来はそのようなことを気にせず、のびのびと教育現場で著作物を利用してほしいという意見も聞かれます。しかし、この原則をしっかりと認知しておかないと、実際に権利者から権利行使をされて悲しむことになるのが、生徒の場合もあります。

 ある学校の先生は、作文や絵画のコンクールについて「審査をしていると、インターネットの情報をほぼ丸写しした作品と出合うことがある」「大賞を受賞した啓もうポスターが、実は有名なアーティストの作品を丸写ししたものと発覚したため、賞は取り下げられ、作者に謝罪に行ったことがある」というエピソードを話していました。

 著作権の存在や例外規定を知らないまま学校生活を進めることは、生徒本人が傷を負う(賞のはく奪など)リスクがあります。

 また、社会人になると、教育機関の例外規定を受ける機会はほぼありません。リスクを把握した上で著作物を使用するかどうかの判断の連続です。まさに著作物の扱い方について学ぶ最適な場所が「学校」なのです。

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